シリア難民支援速報

The Road ×クーリエ・ジャポン|激論! シリア難民の「引きこもり問題」を本気で考えてみた

2017.08.15

 cj_logo_blue_100px [ 本連載は、クーリエ・ジャポンとの連動掲載です。 ]
ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

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PHOTO: ALVARO FUENTE / NURPHOTO / GETTY IMAGES

ザータリ難民キャンプでも仕事や学校に行かず半年以上自宅にいる15~39歳の「引きこもり」の人の増加という問題が起きている。問題の根本を探るため、「ザ・ロード」の記者が関係者に幅広く取材した。

動画シリーズでは、キャンプ内のサーカス・スクールに通う子どもたちを紹介。「いつか雲に届くほど高く飛びたい」──宙返りやバク転などの技に没頭するうちに、彼らの夢は広がっていく。
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シリア難民の「引きこもり問題」を本気で考えてみた
Text by Ahmed Ismail Al-Salamat and Ahmad Mohmed Al-Salamat


「何もせず家にいると、自分がゆっくりと溶けていくロウソクになったように感じます」

こう語るのは、ザータリ難民キャンプに暮らすシリア難民カラフ・ムハンマド(25)である。

ザータリの若者の多くが、家族に養われている。妻子の収入に頼っている場合もある。彼らは仕事を探す努力をしないまま、若くして結婚し、「仕事がないのは社会のせいだ」と自分を正当化しているのだ。

支援団体「IMC : International Medical Corps」で「ライフ・スキル」研修を担当するサナ・アルカセムによれば、キャンプ内の若者の93%が、仕事もなく、キャンプ内の支援団体が提供する職業訓練コースへも参加せず、ただ家で時間をつぶす毎日を過ごしているという。助けてもらうことばかり考え、家族を当てにする者も多い。これが怠惰や依存でなくてなんだろう。

「戦争によって引き起こされた困難な状況が、多くの若者たちから働く意欲を奪っています。自営で事業を始める可能性も限られていますし、こういう状況が続けば、精神を病むことさえあります」と、アルカセムは言う。

冒頭のカラフ・ムハンマドは、シリア内戦が始まった当時、大学生だった。ところが、内戦のせいで学業を中断せざるをえず、ザータリ難民キャンプで避難生活を送るようになった。3年前からぜんそくを患い、働くこともできない。

「自分がただ時間を無駄にしていることはわかっています。毎日、午前1時半に寝て、11時に起きています。朝食をとり、午後2時頃からは昼寝をします。兄弟は働いているので、私に小遣いをくれます。私もときには、食料配給の粉末ミルクを売って小銭を稼ぎます。自分がこんなに弱く、無力な存在だとは思いませんでした……」

同じく中学3年生で学業を中断したムハンマド(19)は、自分に合った仕事がないのだから、仕方ないのだと話す。

「ザータリに来てから、仕事がないまま結婚をしました。費用は父が出してくれました。ザータリに来て以来、私は何もしていません。父がキャンプ内の支援団体で働いているので、生活には困りません。毎日することと言えば、電話で友達と話すだけ。仕事や職業トレーニングには、いまのところ興味はありません」

引きこもりの人が増える背景には、ザータリキャンプの深刻な失業問題がある。シリアでは農業をしていたマフムード・アルハリーリ(40)は、2012年にザータリに来て以来、ずっと仕事を探している。だが、どこに行っても、待つように言われるばかりだ。

「毎日、友人や隣人との会話で暇をつぶしていますが、心は陰鬱で退屈です。生活は、食料配給と、湾岸諸国で出稼ぎをしている親戚の仕送りに頼っています。こんな生活が正しいはずありません。シリアに戻り、再び農業ができる日を待ち望んでいます」

子を持つ親世代はこの状況をどう見ているのだろうか?

ウム・ワエル(37)は、母親の立場からこんなメッセージを送る。

「確かに、仕事がないせいで若者たちは無力感に苛まれています。でも、何度失敗してもあきらめずに、挑戦し続けてほしい。若者は、シリアを再建する未来への希望なのだから」

アブ・カリッド(55)は、父親としてこう話す。

「キャンプ内で、何もせずに家に閉じこもっている若者は多い。彼らは若者らしい『魂』を失ってしまったようです。『人は自分の蒔いたものしか刈り取れない』という諺を彼らに思い出してほしい」

前出のアルカセムは、多くの若者が父親と別れて暮らしていることも、この問題の一因だと考えている。彼らにはロールモデルとなる男親が身近にいないのだ。アルカセムはすべての若者たちに対し、仕事を探し続けたり、支援団体の職業訓練コースに参加するようにと働きかけている。


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高く飛び上がると、雲に届いたような気持になる
Directed by Yaser Al-Hariri / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

00:30-00:54 ザータリキャンプには5年住んでいるよ。ここでは、勉強したり遊んだり。体を動かしたいからときどきサーカスにもいく。シリアにいた頃、兄弟姉妹やいとこたちと良く遊んだよ。その頃、僕は7歳だった。いまは10歳になった。
00:55-1:06 お父さんが「ザータリキャンプに行こう、そのほうがいい」と言ったんだ。シリアではたくさんの子どもたちが亡くなった。銃声が聞こえると、みんな泣き出した。
01:15-01:22 僕が喜んでいると、兄弟たちも喜ぶし、悲しんでいたら、みんなも悲しくなる。
01:28-01:38 サーカスに通って2年になる。最初は、いとこや友達のように宙返りがしたくて、サーカスに入った。
01:49-01:59 ザータリキャンプで、たくさん友達ができた。ほとんど、サーカスで出会った。はじめは、いとこしか知らなかったけど。
02:18-02:25 サーカスに行きはじめて、たくさん友達ができた。
02:39-02:50 難しくてできない技があると、友達が励ましてくれる。最初は簡単な技を練習して、成功したらどんどん難しい技に挑戦していく。一番難しい技ができるようになるまで。
02:54-03:00 僕にとって一番難しいのは連続技。でも成功すると、わくわく、嬉しくなる。
03:16-03:22 友達もいとこもみんなが好きな技だ。
03:35-03:45 サーカスに通う前は、いとこたちに後ろ宙返りや前宙返りを教わった。
03:56-04:01 最初は砂や土の上で練習した。
04:18-04:21 高く飛び上がると、まるで雲に届いたような気持ちになる。
04:33-04:50 将来は、お医者さんになりたい。どこにでも病気はたくさんあって、お医者さんは足りないから、僕は無料で患者さんを助けたい。お金を持っていない人もいるから。
04:52-04:59 僕の未来は真っ白だ。好きな色は緑だけれど、いまは白が好き。雲の色だから。

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The Road ×クーリエ・ジャポン|シリア人女性コーチが奮闘!「世界に羽ばたく女子サッカーチームを作る」

2017.04.19

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「いつか世界で戦えるチームにしたい」──2016年9月、欧州サッカー連盟(UEFA)などの支援により、ザータリ難民キャンプにスポーツ施設が完成。そこで女子サッカーチームのコーチを務めるアマール・モハマッド・ホウシャン(40)は、冒頭のような意気込みを語る。

美しい映像と音楽でザータリの日常を伝える動画では、長年、コーランの修復を生業としてきた老人にフォーカス。凄惨な避難の経験を振り返りつつ、難民キャンプでの希望を静穏に語る。
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難民キャンプから世界最強の女子サッカーチームを!
Text by Qasem Al-Shahmeh

アマール・モハマッド・ホウシャン(40)は、幼い頃からサッカーが大好きで、いつか女子サッカーチームを作りたいと考えていた。

慣習や伝統に自分の夢が妨げられるなんて、許せなかった。通りで石を投げつけられようと、彼女が決意を変えることはなかったし、むしろ、これを挑戦と受けとめてさらなる努力をした。ホウシャンは強い女性だ。

20170810_JD_the maneger2【ザータリ難民キャンプの女子サッカーチームのコーチを務めるアマール・モハマッド・ホウシャン(40)】PHOTO: SUNDUS AL-HARIRI / THE ROAD

2016年9月、UEFAなどの支援により、ザータリ難民キャンプに「ハウス・オブ・スポーツ」という運動施設ができ、ホウシャンはそこでコーディネーターとして働きはじめた。彼女や他の女性たちの啓発活動によって、スポーツをする女性が増加したという。

さらにホウシャンは、念願だった20歳以上の女子サッカーチームを結成し、コーチに就任した。

「仲間と協力してメンバーを集め、女子サッカーへの理解を広めてきました。この取り組みは非常にうまくいっています」とホウシャン。

彼女のチームはすでにいくつかの大会で優勝しており、さらに上を目指すべく練習に励んでいる。最近、15歳以下の女子チームも結成した。

ホウシャンはこれまでの半生を次のように振り返る。
「子どもの頃からサッカーが大好きでした。サッカーの試合観戦が何よりも楽しくて、いつかコーチになることが私の夢でした。正直、家族や周りの人々から私の夢はよく思われず、さまざまな批判を受けました。でも、気にはなりませんでした。私の夢は女子サッカーチームを作ること、ただそれだけでしたから」

だが、その道は決して平坦ではなかった。ホウシャンはこう続けた。

「道を歩けば、人に石を投げられました。シリア人社会は保守的で、女性がサッカーをすることは受け入れがたいからです。しかし、いったい何が悪いというのでしょうか? 女子チームは、女子同士で試合をするというのに。

私には夫と5人の子どもがいますが、夫は理解してくれていますし、子どもたちにはシリアにいた頃からサッカーを教えてきました」

今後の目標は? という問いにホウシャンはこうこう答えてくれた。

「プロレベルの女子サッカーチームを作りたいです。世界的強豪と言われるほどの。難しいことではありません。固い決意は、不可能を可能にします」


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私に残されたもの – コーランを修復する男
Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

00:04-00:20 傷んだコーランを修復すれば、読んだ誰かがこう言うだろう。「これはいい。読みやすい」
00:28-00:47 私の名前はアブドゥラ・イッサ。(シリア南西部の)ダルアーから来た。1938年生まれだ。2013年2月2日の午後2時、家族とともにヨルダンのザータリ難民キャンプに到着した。
00:49-00:55 あれから4年と20日の月日が過ぎた。これらのコーランには抜け落ちたページがたくさんある。
00:56-01:12 シリアにいた頃は、コーランの修復が私の仕事だった。ここでも同じだ。モスクに行き、コーランを修復し、自宅に戻る。
01:22-01:40 誰かに修復方法を教えたいと、イマーム(イスラム教の聖職者)に言った。古くなったコーランを受け取ると、まずは損傷具合を調べる。そして、修復をする。
01:42-01:56 テープやのりを使って。このようにテープを貼り、直す。こちらも同じように。
02:25-02:32 (私は難民)キャンプに暮らしている。神のご加護により、皆と同じように。ここでは、皆、同じような暮らしだ。
03:07-03:16 お金はないが、キャンプにあるすべてのモスクを訪れる。シリアにいた頃は、神のご加護により、自分の資金でコーランを直していた。私のお金は神のものだ。
03:51-04:02 いまは賃金をもらっている。神の本を救うことで、神が喜んでくださったと感じる。
04:15-04:27 妻と息子とここで暮らしている。18人の子どもを授かった。6人の息子と12人の娘だ。(シリアにいる子どもたちは)どうしているか、数日おきに電話している。
04:30-04:36 10人はダマスカスに、1人は(ザータリ難民)キャンプにいる。全部で11人。 7人は亡くなった。
04:37-04:44 5人は病気などで小さい頃に亡くなった。残りの2人は戦争で死んだ。
04:47-05:03 妹の家に車に向かう途中、正面から銃撃された。車には運転していた息子、その母親と妹が乗っていた。息子は胸に2発、妹は首に銃弾を受け、亡くなった。
05:05-05:14 母親は指を撃たれたが、回復した。しかし、そのけがのせいでキャンプに来られなかった。
05:16-05:28 私たちは神の子。神のご加護で、御許に戻る。私は神に生命を捧げたい。
05:43-05:51 神のご意志で、よき最期を迎えたい。私にとっては、コーランの修復が最良のことだ。
06:02-06:15 シリアに戻ること、子どもたちが安全に暮らすことを望んでいる。私の人生に残されたのは、コーランを修復することだ。
06:16-06:18 シリアに戻り、モスクをめぐり、生命が尽きるまでコーランを修復したい。

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The Road ×クーリエ・ジャポン|拳を磨き壁を破っていく「難民テコンドー一家」

2017.02.17

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ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

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荒野に建てられた仮設住宅に暮らす難民キャンプの生活では、さまざまな不自由を強いられる。だが、支援団体などからのサポートを通してこれまでの古い慣習を打ち破り、自分たちの将来を切り拓こうとする女性たちの姿も見られるようになった。
大好評の動画シリーズでは、ザータリで有名な「テコンドー一家」を紹介。首都アンマンで開催された2つの大会を制覇するなど、彼らの快進撃はザータリの住人に明るいニュースをもたらしている。
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夢の前に立ちはだかる「壁」を壊そうとする女性たち
Text by Sundus Al-Hariri

ザータリ・キャンプで暮らすシリア人女性は、男たちが造り出した「禁止」という名の壁に常に取り囲まれている。そして、往々にしてその壁が、彼女たちの夢の障害になっている。

中東地域には伝統的に、男性主導で決定すべきことが確かにある。だが、自分の将来に関わることは女性たち自身が選択し、決断するべきだ。

それにもかかわらず、ザータリでは多くの女性たちが、父親、夫、兄弟などの男性家族に教育や職業訓練を受けることを禁止されてしまう。彼女たちの豊かな未来の可能性が、男たちによって狭められてしまうのだ。

20170217_JD_the 2nd photo2PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

「THE ROAD」編集部はこの問題について、さまざまな年代の男女に取材をした。1人目は、匿名希望の20代女性。彼女は男女混合だからという理由でUN WOMANなどがおこなう教育・職業訓練コースへの参加を家族に禁止された。

「男性と一緒というだけで、コースへの参加を禁止する父親もいます。我々の慣習では、男女が同じ部屋にいることが許されていないため、娘が心配なのです」

14歳のヌールも、父親にコースへの参加を禁止された。

「私は将来のために英語やコンピュータのコースに参加したいんです。けれども、たいてい父から反対されます。父は、コースに通う道中で私が何かトラブルに巻き込まれるのを心配しているのです。でも残念ながら父の心配のせいで、私の未来は閉ざされています」

もちろんなかには、家族の許可を得てコースに参加している女性もいる。もう1人の匿名の20代女性は、それに疑問を感じているようだ。

「ザータリの女性全員が、家族にコースへの参加を禁じられているわけではありませんが、よく聞く話ではあります。親が娘を信頼して、私たち自身が進むべき道を決められたらいいのですが」

実際に教育・職業訓練コースに参加した、もう1人のヌール(40)は、コースの意義を次のように称える。

「私は参加者のなかで最年長だったので、当初は気後れすることもありました。でも、このコースでたくさんのことを学んだおかげで、仕事に就くことができました。誰かにコースへの参加を邪魔されなかったことを神に感謝していますし、他の女性にもぜひ私のように学んでほしいと思います。

私は、自分のことはすべて自分で決めます。それに、ザータリにも男女共学の大学に進学した女性は大勢います。大学と教育・職業訓練コースの間に、どんな違いがあるというのでしょうか?」

20170217_JD_the 3rd photo3PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

.では、男性側はこれについてどう思っているのだろうか?

2人の娘を持つアブ・ハサン(40)は、反対派だ。

「娘を教育・職業訓練コースには参加させたくない。どうせ役に立たないだろうし、男女混合のコースで娘たちに問題が起きたら困る。だから許可しないんだ」

だが、すべての男性が女性に教育の機会を与えることに否定的なわけではない。アブ・シャヘル(50)は言う。

「父親は子供の幸せを祈っているものだ。しかし、ときに恐怖に囚われ、子供たちが進むべき道が見えなくなってしまう。

女性が教育・職業訓練コースに参加するのを男たちが禁止するのは、これまでの慣習のせいだ。だがこれからは若い世代の行く末を、皆がより広い視野で見るべきだ。シリアの女性たちは善悪の判断がつくから、何も心配はいらない。教育を受けることによって、彼女たちの未来は大きく拓けるだろう。

男女が同席することを恐れるあまり、彼らの教育のチャンスを奪うべきではない」

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「テコンドー」は子供たちの希望
Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

0:31 私たちは、8人家族だ。私には妻と6人の子供がいる。娘が3人、息子が3人。そのうち4人がテコンドーを習っているが、他の2人は小さいので、まだ始めていない。
0:51 子供たちは、すぐにテコンドーが大好きになった。私が道場に行かなくても、「練習をしに行きたい」とおねだりされるほどだ。
1:17 私たちは週に4日練習する。テコンドーの技が上達するためには忍耐が必要だから、それを幼い頃から子供たちに教えている。
子供がテコンドーの教えを守れるようになったら、その子供はいつどんなときでも、リーダーシップをとれる。人生の見方も変わり、生き方も変わる。
2:15 女の子が足を蹴り上げる武道を習うなんて、許されないと考える人たちもいる。だが、スポーツにおいて許されないことなんてあるのだろうか。女の子であっても、テコンドーを続けていいはずだ。将来は、オリンピックの金メダリストになり、自分とシリアに誇りをもたらせばよい。
テコンドーは彼女たちの未来であり、希望なのだ。彼女たちは、他の女の子にも良い影響を与え、そして人々の固定観念を覆すだろう。
そんな希望に溢れた子供たちを、なぜ止める必要があるのか。好きなだけテコンドーをさせればいい。
3:20 ザータリ・キャンプで開催されたテコンドー選手権には家族で出場した。ヨルダンの首都アンマンで技を披露したこともある。子供たちは、たくさんのメダルを持ち帰ってきた。
3:50 ここ(ザータリ)には、美しい風景も住む場所もない。老人たちは、かつてのシリアの美しい景色を知っている。だが、いまは(紛争で)破壊された姿しか見ることができない。
それは子供たちにとって大問題であり、悲しいことでもある。しかしそんな状況でも、棘だらけの大地にも花は咲くのだ。
4:34 最初は、イブラヒム、ヤマーマ、アスマ、3人の子供と始めたテコンドー。
4:40 テコンドーを教えても、私自身にはあまりメリットはない。だが、キャンプの子供たちにとって、これは大きな希望だ。
4:54 希望は子供たちのためにある。私たち大人がしっかりと子供たちの希望に耳を傾け、叶える努力をしないと、子供たちは希望を失う。
それは、私たちが希望を失うことと一緒なのだ。
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The Road ×クーリエ・ジャポン|「愛する母のために…」1日わずか2ドルの労働に耐える11歳

2017.01.23

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若者たちが未来を前向きに見据える一方で、難民キャンプでは児童労働が深刻な問題となっている。家族のために自分を犠牲にして、厳しい労働やいじめに耐える11歳の少年を描いた動画「生きるために」は、胸を刺すような映像美がいっそう悲しみを誘う。(ザ・ロードの詳細はこちらから

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2017年のシリア難民の願いは? 帰還を夢見る老人たち、復興を目指す若者たち
Interview by Yasser Al Hariri

ザータリ難民キャンプに暮らすシリア難民の2017年の願いは、世代によって違う。それはきっと紛争が始まってからの5年の間に、考え方や未来に対する希望が変化したからだ。
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PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

老人たちは、シリアに平和が戻ること、そして一刻も早く帰還できることを願っている。若者たちは、もっと現実的だ。彼らは、紛争によって壊滅的に破壊されたシリアをどう立て直すかを考えはじめている。

「ザ・ロード」のスタッフが新年を迎えるにあたり、何人かのシリア難民を取材し、2017年の願いを聞いた。

エルハム・アフマッド・アル・シュワムラ(45)──新年には、すべてのアラブ諸国に平和をもたらしてほしい。そして、故郷に戻りたい。もう離れて数年たつが、私がシリアを忘れることは、一生ないだろう。

オム・ジハッド(45)──私たちはまだ、シリアに戻るという希望を捨ててはいない。2017年はシリアが平和になることを願う。そして昔のように、住んでいた村の林道を歩き、木の下でゆったり座るような美しい日々を過ごしたい。

オム・ウィサム(36)──ザータリキャンプには数ヵ月しか、滞在するつもりはなかった。まさか2017年をこの地で迎えるとは、夢にも思わなかった。素晴らしい故郷シリアと、そこで過ごした日々を忘れることはできない。だからこそ私は辛抱強く、帰る日がくるのを待っている。早く愛する家族や親戚のもとに帰りたい。

モナマッド・サイフディン(9)──2017年は、シリアに帰って、僕たちが暮らしていた大好きな村に戻りたい。そこに住んでいる友だちに会って、一緒に遊んで、昔のように楽しい日々を過ごせたらどんなにいいかと思う。

オマール・アデル・ガズラン(18)──2017年は勉強を頑張る。そして、シリアに戻ったら仲間たちと一緒に国の復興に尽くしたい。

スンドゥス・ユーセフ・アル・ハリリ(19)──今年は中学校を卒業して、将来は、(ヨルダンの)アル・ヤルムーク大学でアラビア語か、通訳・翻訳を学びたい。そして、そのまま勉強を続けて、専門家になるのが夢。

ブシュラ・アフメッド・アル・ハリーリ(19)──今年は、タウジーヒ(全国一斉検定試験)でよい成績をとって、将来は大学で英文学を学びたい。それと、ザータリキャンプの支援団体のサービスがもっとよくなるよう、祈ってる。

アメラ・モハメッド・アル・ハリリ(58)──2017年は、みんなに幸せが、そしてイスラム教徒とアラブ諸国に平和が訪れ、すべての難民が母国に戻れますように。


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「シリアの代わりになる国など存在しない。だから戻るという希望を決して、捨てはしない」
Text by Hajer Al Kafri

シリアに帰りたいという希望を抱きながら、また1年が過ぎ、そして新しい1年が始まる。紛争が子どもたちを奪う前に、私たちが暮らしていた母国の大地を再び踏みたいと、常に願っている。この希望を失わないまま、生きていきたい。

ようこそ2017年。新年に期待することは多いが、どうか愛と喜びに満ちた平和な日々が続き、みんながシリアに戻れますように。

ここザータリキャンプでも、太陽が昇れば子どもたちは学校へ行き、私たちは仕事に行く。礼拝をし、伝統を次世代の子どもたちの心に刻んでいく。

難民キャンプに暮らしながらも勉学を続け、大学に通うシリア人も多い。明るい未来を描けるほどに、とても優秀な学生もいる。その優れた能力は、母国シリアのために役立ててほしい。私たちの心には、シリアの代わりとなる国は存在しない。

だから私たちは「シリアに戻る」という希望を決して捨てない。

ようこそ2017年。私たちはこの先に訪れる素晴らしい日々を夢見ている。いったい、何が起こるのだろうか? それは誰も知らない。強さと忍耐を示したシリア難民には、神の意志により美しい日々が待っていると信じよう。

そう信じながら、父親たちは勇気を持ち、母親たちは辛抱強く、子どもたちは勤勉に、人生を歩んでいこう。


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「生きるために」──1日わずか2ドルで働く11歳のムハンマド
Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

(以下は字幕の日本語訳)
0:01 JENは、国連機関や他のNGOとともに、ザータリ難民キャンプ設立当初から、子どもたちが労働の場を離れ、学校に通えるよう、支援活動を継続している。
0:07 手押し車が重すぎて、まっすぐ歩けないよ。
0:30 僕の名前は、ムハンマド・アドナン・アルジュルム。いま、11歳。
0:32 好きなことはサッカーとビー玉で遊ぶこと。
0:45 お祈りが終わったら、手押し車を持って仕事に出かけるんだ。

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PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

1:00 毎日仕事が終わったら、お母さんに稼いだお金を渡すよ。
1:20 もらえるお金は大体1.25JD(約200円)とか0.75JD(約160円)とか、0.50JD(約80円)とか、それぐらい。
1:31 仕事をするのは、お母さんを助けたいから。
1:35 お母さんを喜ばせたいんだ。
1:53 僕の仕事では手押し車を使う。手押し車で荷物を運ぶんだ。
1:56 たとえば、マーケットで買い物した人の荷物とか、キャンプの入口まで荷物を運びたい人の手伝い。
3:10 お客が見つかると、他の男の子たちがきて「金をよこせ」って言うんだ。
3:20 お金を渡さないと、ぶたれる。
3:23 彼らは僕のお金で、タバコを買う。
3:27 男の子たちは、鉄の棒とかロープとかムチを持っている。
3:32 手押し車を壊したり、僕のことをぶったりする。
4:12 僕はお母さんと一緒にシリアから来た。
4:15 ここで生きるためにザータリに来た。
4:19 お父さんはシリアに残った。ここにいるのは、お母さんと兄弟と、僕。
4:26 もしお父さんが一緒にいたら、僕は働かずに、幸せだっただろうな。
4:56 ときどき、お母さんはキャンプの外でトマト農園の仕事をしたらって言う。
5:02 それなら、他の子たちにぶたれない。
5:15 僕は、先生になりたいんだ。
5:17 学校を1日だって休みたくない。
5:21 そして、ちゃんといまの学年を修了したい。
5:24 大きくなるまで学校に通って、先生になって、子どもたちを教えるんだ。
5:31 愛してる。
5:37 ザータリ難民キャンプでは5~17歳の子どもたちのうち、1,119人が労働に従事している(2016年国家児童労働局調べ)

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【映像プロジェクト】No.16 Za’atari Car

2016.11.14

 

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