東日本大震災から5年。 (文:JEN事務局長 木山啓子)

お知らせ|2016.03.10

東日本大震災とその影響によって亡くなられた方にお悔やみを、そして被災された方にお見舞いを申し上げます。一歩一歩、皆様の歩んでこられたご努力に敬意を表します。

 災害の影響は、被害自体だけではない。災害は、元々あった課題をより鮮烈にする。自然災害であれ紛争などの人的災害であれ、人口減少が課題だった地域では、人口減少が加速し、経済がはかばかしくない地域では経済活動が更に停滞する。災害の被害に加えて元々の課題がより大きくなってのしかかってくるのだから、たまったものではない。厳しい現実だが、その中でも、人びとは生きていくしかない。

 その厳しい現実に晒された時、問題の大きさに打ちひしがれてしまうのではなく、立ち上がる人びとがいる。失ったものは多々あるが、残ったものもある。または災害の後に、もたらされたものもある。それらを駆使して新たな価値を生み出すことによって、元々あった課題まで解決してゆこうという取り組みがそこここに生まれて、効果を上げつつある。

 たとえば、居心地の良い場所を作ることで人びとが集まり、集まった人びとが新しい発想を生み出し、その発想に従って行動することで、更に新たな発想が生まれる、こうした場作りから始めた人がいる。彼らは既に、地元の課題を解決する取り組みを幾つも生み出している。老老介護で困難を抱える方もいる。そういう方々を支える方法を考え出して実行している人もいる。介護の辛い部分が楽しい部分に変わるような方法だ。日々待ったなしの介護の中でわずかでも楽しい部分が入ってくることで生活の質は劇的に向上する。

復興はまだ続いている。だがこれらは既に、復興という名前だけでは表現できない取り組みだ。目を凝らさなければ課題ばかりに見える状況で、たくましく、明るく、そしておしゃれに、課題に取り組み根本から状況を変えてゆく。その取り組みに触れる一人ひとりに希望の灯を点し、悲しみに沈みがちな人々の背中さえ押してゆく。

 こうした取り組みを支えたり、その営みの様子を伝えたり、さらに支えてくれる人を募ったり、そして何より、こうした取り組みが他の地域にも展開できるようにサポートしたり、それが私たちに今、できることではないか。与える支援ではなく支える支援を。論理が飛躍するように聞こえるかもしれないが、私にとって大切にしたいことは、日本でもイラクでも変わらない。

2016年3月11日
特定非営利活動法人JEN
理事・事務局長 木山啓子

2月29日 東北視察

これまでのメッセージを下記でご覧いただけます。
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