アメリカ大統領の難民受け入れに関する大統領令で、安心・安全な暮らしは訪れるのか? | 共同代表理事 木山啓子からのメッセージ

お知らせ|2017.02.02

『難民受け入れを一時的(シリア難民は無期限)に停止』し『イスラム圏7か国からの一時的米国入国禁止』するトランプ大統領令に対して、英国やドイツの首相も反対意見を表明した。米国はもちろん世界各地で抗議運動が起きている。同時に、米国内での調査によると、過半数がこの大統領令を支持しているという。

JENは、一人ひとりは等しく尊いという信念の下、難民や被災された方々の力を信じ、その自立を支援してきた。その活動に携わる一人として、私はこの大統領令には反対だ。人間の尊厳を尊重しておらず、難民の方一人ひとりの多様性やその命の大切さを無視したものだからだ。誰しもが安心・安全な暮らしを求めている。難民となる人々も、安心・安全な暮らしがあれば、難民になる必要はなかった。出自や信仰を含むいかなる理由でも、そんな彼らを差別することは受け入れられない。

そして、『安全なアメリカ』を実現したいというならば、この大統領令は逆効果だ。差別や排除や攻撃は、怒りや恐怖や憎しみや不安定を生み、問題を大きくするだけだということを、戦争を体験した多くの人が知っている。これは、紛争の被害を蒙った方々との触れ合いを通して、私たちも学んできたことだ。

ただ、発令したトランプ大統領やそれを支持する人たちの論理は理解できる。自らの周りに壁を築き、誰も入って来られない様にすれば自分を守れる、という考え方はシンプルで判り易い。人は知らないものを恐れるという。知らない人たちを受け入れることが不安をあおるのも理解できる。問題は、善だけや悪だけの人は存在しないということだ。私たち一人ひとりの中に、否定、排除、怒り、恐怖、憎しみなどがあり、こうした感情のままに行動していれば、どれ程壁を作っても問題は起こりうる。そして、悟りを開いた人でない限り、こうした感情を誰もが持っている。

世界では様々な問題が起きている。こうした問題を本当の意味で解決することが求められている。我々が直面する問題の原因は複雑で、解決は難しそうに見えるかもしれない。けれど、なぜそれが起きているのかをきちんと見極め、一つ一つ原因を無くしていけば、目指す結果が得られるはずだ。例えば、テロが生まれる構造を理解すれば、その構造を継続している自分自身の関与が見えてくる。自分の行動を少しでも変えることで、大きな問題の解決にも貢献できる。

そう考えた時、翻って日本はどうなのか?日本に住む人々が、自らの安心・安全を求めて難民や移民に対して国境を閉ざしていて、それを実施する政府に対して何も言わず、行動を起こさないのであれば、受動的とは言え私たち一人ひとりがトランプ大統領令を出しているようなものなのかもしれない。それによると、120日間の難民受け入れ停止の後には、オバマ時代の11万人を半減させた5万人を受け入れるという。日本では何人を受け入れるのか。数だけを単純に取りざたするつもりはないが、数に表れる姿勢から読み取れるものもある。日本に住む私たち一人ひとりも、自身の安心・安全な暮らしを守りながら、難民の人々の安心・安全を積極的に守る方法を考え、行動してゆく時なのではないか。

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シリア難民を受け入れるヨルダンのザータリ難民キャンプにて

2017年2月2日

特定非営利活動法人ジェン
共同代表理事 木山啓子