シリア難民支援速報

The Road ×クーリエ・ジャポン|Vol. 15「嫁き遅れ」にはなりたくないシリア難民が急増中!

2018.03.01
 cj_logo_blue_100px[ 本連載は、クーリエ・ジャポンとの連動掲載です。 ]
ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

「嫁き遅れ」にはなりたくないシリア難民が急増中!

不安定な暮らしが続くザータリ難民キャンプでは、「20年前の慣習」と見なされていた若年婚が急増している。その背景には何があるのか。自身も若年婚の経験者である男性記者が、難民たちに取材した。

なぜいま「若年婚」が急増しているのか

Text by Louay Saeed

ザータリ難民キャンプの住人の離婚率は高い。その一方で、若年婚も増え続けている。

キャンプ内では若年婚に対し、賛否両論の声があがっているが、「いつまでも独身のままでいたくない」という理由から若年婚に肯定的な女性も多い。だが、早すぎる結婚によって生じるさまざまな問題が認識されていないのも事実だ。

我々はキャンプに暮らす人々に若年婚についてどう思うか取材した。3人の娘の父親であるアブ・イムラン(50)は、若年婚反対派である。

「娘たちが精神的に成熟して世のなかを理解するまで、絶対、結婚を許しません。年齢で言えば18歳以上でしょうか。若年婚を許せば、結局娘たちを苦しめることになる。娘たちにはまずは勉強してもらいたい。結婚はその後です」

アブ・ハリードもイムランの意見に同調する。

「シリア内戦が起きる以前、若年婚はそこまで多くありませんでした。いまではザータリ難民キャンプで住民が集まると、必ず結婚、特に若年婚の話になります。(若年婚が増加する理由は)いろいろとあると思います。難民キャンプで暮らすうえで、若い女性は保護されなければならず、夫の家で守られるべきだと考える人が増えているのでしょう」

キャンプの第6地区で会ったウム・ハディは、14歳の娘を嫁がせた親戚の話をしてくれた。

「親同士が友人だったんです。新郎は17歳でしたが、2人は結婚して3ヵ月後に離婚しました。妻が家事をこなせなかったというのがその理由です。結婚の話を断ると両家の関係が悪くなると私の親戚は心配したようですが、14歳という年齢は、やはり結婚には早すぎます」

関連記事:
ナンパ男のせいで人生を壊されるのはゴメンだ! 少女たちが「Enough」と声をあげた|ヨルダン難民キャンプ発「THE ROAD」

アブ・オバダ(40)によれば、若年婚は男性よりも女性に強い影響を与えるという。

「若年婚によって、少女たちは自分の夢をあきらめなければなりません。我々の社会では、女性と男性に対する見方が違うのです」

20年前は、若年婚は珍しいことではなかった。だが、やはり若年婚は長期的にはうまくいかない場合が多い。若年婚反対派のアブ・バシャールも若年婚の多くは失敗に終わると話す。若い女性がちゃんと教育を受けて生きる術を学ぶほうが、夫婦にとっても良い結果となると彼は考えている。

キャンプで支援活動をするNGO団体などが、若年婚の減少に一役買っていると考えている人は多い。ウム・スレイマン(55)は、若年婚に関するあるセッションに参加したことで、そのリスクをよく理解できたと語る。

では、若年婚の賛成派はどのように考えているのだろうか。

ウム・ラーエド(57)は、「女性のいる場所は台所」だと考えている。若年婚によって女性は守られるし、若いうちに結婚しておかないと「行かず後家」になってしまうと彼女は心配する。ラーエドは、娘たちの教育にはあまり重きをおかず、全員若いうちに結婚させた。

アブ・マルワン(62)も、「我々の時代、若年婚は男性にも女性にも何の問題もなかった」と話す。

かくいう筆者の私も、16歳のとき14歳の妻と結婚し、娘たちを早く嫁がせた。いまは孫が結婚する年齢になっている。それゆえ、個人的には若年婚が問題だとは思っていない。夫のそばにいることほど、若い女性の安全が保証されることはないと思うから。

本を読む喜び

今日は待ちに待った本の日。支援団体から子どもたちのために児童書が配られる。内容は愛や平和について書かれたものばかりで、子どもたちのために厳選されたものだ。

娯楽の少ない難民キャンプでは、本はとても貴重だ。子どもたちは我先にと本を受け取り、夢中になって読みふける。

この動画のために特別に作曲されたヨルダンの人気バンド「Zaman Al Zaatar」の楽曲も素晴らしい。


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The Road ×クーリエ・ジャポン|Vol.14 2018年、シリア難民たちが見る夢は?

2018.01.31
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2018年、シリア難民たちが見る夢は

シリア危機が勃発してまもなく7年。ザータリ難民キャンプに暮らすシリア難民たちは、2018年の年明けにどんな夢を描いたのだろうか?

2018年、シリア難民たちの夢と願い

Text by Qasem Al-Shahmeh and Hajar Al-Kafri

ザータリ難民キャンプで避難生活を送るシリア難民たちは、「今年こそ離散生活を終えて祖国に戻り、家族や大切な人々と普通の暮らしができますように」と、新年を迎えるたびに祈る。ときに痛切に、そしてときに希望を胸に抱きながら。

病気がよくなりますように、仕事が見つかりますように

ザータリ難民キャンプの第12区にある、ラダ・バジボジの家族を訪ねた。石や砂だらけの小さな庭が、トタン板に囲まれているプレハブの一室、それが彼らの家だ。

ラダは、そこで妻と3人の子供たちと一緒に暮らしている。快適な家に改築するような余裕はない。また、子供のひとりはダウン症だが、充分な診療を受けさせることもできない。

ラダの2018年の願いは、子供の病気がよくなること、そして、仕事が見つかり家族に必要なものを手に入れることができるようになることだ。

大学で得た学びを祖国に持ち帰りたい

カセムは熱意に溢れる若者で、優秀な成績で高校を卒業した。いまは、私費でザルカ私立大学に通っている。学費はとても高いが、奨学金を得ることはできなかった。希望していたジャーナリズムやメディア専攻は特に高額だったので、あきらめざるを得なかった。

だが、カセムにも運が向いてきた。英語学科に通いはじめた彼の勤勉な学習態度が大学から認められ、学費の減免を得られたのだ。

カセムの新年の願いは、大学で優秀な成績を修め、ジャーナリストとしての仕事を見つけること。そして、勉学と仕事の両方から得た多くの知識や経験を、母国に持ち帰ることだ。

歌手になる「17年越しの夢」を叶えたい

32歳のアブ・バハルは、15歳のころから歌うことが好きだった。兄弟たちも彼の歌が大好きで、よく歌をねだられたという。シリアに住んでいたころの先生も彼の声は美しいと、応援してくれていた。

現在、アブ・バハルは床屋で働いているが、祝い事の席で歌を頼まれることもある。彼は偉大な歌手になるという夢を、まだ捨てていない。

僕はいま幸せ、家族と友人がいないこと以外は

ザータリ難民キャンプからオランダに移住したアブドルラフマン・アルハリーリから、メッセージが届いた。

「夢を叶えるため、オランダで英語翻訳の勉強をしている。移住前は不安だったけれど、いまは幸せだ。夢や大きな目標を叶えたいなら、移住を勧める。僕はいまは幸せだ。願いは友人や家族に会うことだけ。ここでできる限りのことを成し遂げて、誇りを持ってシリアに帰国したい」

男子だって水は欲しい

ザータリ難民キャンプ内の学校では、男子生徒が授業を受ける時間帯に水不足が起きるという(午前は女子生徒、午後は男子生徒が授業を受けるシステム)。イードにはそれが不満だ。給水トラックが来るのは、午前の女子生徒の時間帯だけ。イードは、両方の時間帯に給水トラックが来ることを願っている。

長すぎる別離

45歳のウム・イブラヒムは、我々にこう語った。

「2018年は、すべてのアラブの国々に平和が訪れますように。そして、何年も前に見捨ててきてしまった我が家に帰れますように。別れはつらいものだし、その痛みを忘れることは決してない。いまでも、いつかまた、故郷シリアに住める日が来ることを願っている」

「いつか」はいつなのか

ムハンマド・ナセルの新年の願いは、シリア内戦が終結し、故郷の村にある自宅に戻って友だちや親戚と再会することだ。内戦はいまだに混沌としているが、苦しみを終わらせる平和的な解決方法がきっとあるはずだ。

年が明けるたび、私たちはもう何日、避難生活を過ごしたかを数える。いつかきっと、故郷に帰る。しかし、その「いつか」は、いつなのだろう。

砂塵が吹き荒れる難民キャンプ、ザータリ

Directed by Faredah Nserat /executive director Bent Marble and Steve Clack / Supervised by Cyril Cappai and Hada Sarhan

砂漠のど真ん中にあるザータリ難民キャンプでは、砂嵐が頻繁に吹き荒れる。風で舞い上がった砂塵は視界を遮断し、鼻や喉を傷つけて、そこら中にあるものすべてを汚してしまう。キャンプで悪化する大気汚染問題を、THE ROADの動画チームが切り取った。


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The Road ×クーリエ・ジャポン|Vol.13 ナンパ男のせいで人生を壊されるのはゴメンだ! 少女たちが「Enough」と声をあげた

2017.12.19
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セクハラ問題に対して「Enough」と声をあげた少女たち
米国ではこれまで明るみに出なかったセクハラ問題が一気に噴出して議論を呼んでいるが、ザータリ難民キャンプでも心無い若者の「ナンパ問題」が物議を醸している。しかも不利益をこうむるのは、被害者である少女たちのほうだ。

この問題に目をそむけるべきではない、もう充分だ(Enough)と、「THE ROAD」のジャーナリストが声を挙げた。

「もう、充分(Enough)」

Text by Rand Al-Hariri
Photograph by Mohammed Al-Refaee

「もう、うんざり。

学校にも仕事にも行かずに通りにたむろし、女の子に声をかける若者たちのせいで、教育をあきらめなければならないなんて。

もう、うんざり。心配性の親に外に出るなと言われることに。
もう、うんざり。愚かな若者たちのせいで、私たちの将来を無駄にしたくはない。
そうだ、こんなことはおかしいとはっきり言おう。こんな犠牲はもう終わりにしなくてはならない」

これは、ザータリ難民キャンプに暮らすある少女が発したメッセージだ。彼女は、キャンプ内にある学校やNGOなどが運営する施設に通うことを家族から止められてしまった。通りで少女たちを待ち伏せし、ナンパをしてくる若い男性たちがいるからだ。

学校に通うでもなく、かといって仕事をするわけでもなく、日々を無為に過ごす若者がザータリには少なからずいる。特にすることもない彼らは、女の子たちを待ち伏せして声をかける。

若者たちにとっては単なる暇つぶしかもしれないが、少女たちにとっては大迷惑だ。シリアでは結婚前の男女交際が容認されていない地域が多い。そのため、娘がおかしな男に引っかかるのではないかと心配した家族が、娘の外出を禁じるようになるのだ。

多くの少女たちは将来のために、学ぶことに意欲的だ。だが、若者たちの軽率な行動のせいで、せっかく与えられた教育の機会をあきらめ、ただ家に閉じこもらなければならなくなる。

なぜ少女たちだけが、抑圧されなければならないのか。若者たちの失礼な言動を止める人もいないので、問題はなかなか解決しない。

私は、このナンパ男たちに問いかけたい。もし自分の妹や母親が同じことをされたらどう感じるのかと。シリアにいたころは守ってきた伝統や習慣を軽視する若者たちのせいで、何人の少女が教育を受ける権利をあきらめ、未来を犠牲にしたのかと。

もう、充分。毎日繰り返されているこの問題は、もう、終わりにしなければならない。年長者が組織を作り警察と協力して取り締まれば、問題は解決するはずだ。

そして親たちは、どうか自分の娘を信じてほしい。あなたの娘は、こんな軟弱な男たちに簡単について行ったりはしないと。

希望の絵

Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervised by Cyril Cappai and Hada Sarhan

「THE ROAD」の動画プロジェクト始動1周年を記念して、制作された作品。ザータリ在住の画家が、故郷シリアの思い出を仮設住居の白い壁に描いていく……。


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The Road ×クーリエ・ジャポン|極寒の難民キャンプに訪れる“暖かい冬”の知恵|

2017.11.18
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寒い冬に温かな幸せをもたらすシリア難民の知恵

今年もザータリ難民キャンプに冬がやってくる。灼熱の砂漠のイメージがあるヨルダンだが、キャンプ周辺は冬になると気温が氷点下になることもある。だが、ここに暮らすシリア難民たちは厳しい冬がやってきても、知恵と工夫を凝らして生活を楽しみ、シリアを偲ぶことを忘れない。

Text by Abeer Al-Eid and Suhaima Al-Ammari
Photographs by Mohammed Al-Refaee

 

ザータリ難民キャンプに暮らす、シリア難民の冬支度が始まった。砂漠地帯の極寒の冬を凌ぐため、人々はどんな工夫をしているのだろうか。「THE ROAD」が取材した。

オム・ラフィエ(44)は、空気が澄んだ冬が好きだと言う。とはいっても、ザータリ難民キャンプの冬は厳しい。ラフィエは、冬の間も家族が温かく快適に過ごせるようにと、準備の真っ最中だ。

食糧を貯蔵しておくことは、特に重要だと彼女は言う。マクドゥース(小なすのオリーブオイル漬け)、ヨーグルト、モロヘイヤ、オクラ、ぶどうの葉といった保存食は、シリア人が冬を越すために欠かせない。

さらに冬が訪れる前にはマットレスを洗い、仮設住居の修理をして、隙間から水や寒気が入ってこないようにする。

オム・マフムード(39)も他の女性たちと同じように冬支度で大忙しだ。

「私も家族も全員冬が大好きなの。冬の空気も好きだし、暖房のそばに家族みんなで集まって座るのも好きよ。冬に食べたら美味しい保存食もちゃんと貯蔵したわ」

もう少ししたら、シリア人の冬には欠かせないオリーブの塩漬けも作るつもりだ。さらに彼女は、子供たちを寒さから守るようにと、窓やドアなど仮設住居のあちこちを修理して回っている。

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ヨルダンの冬は雨季でもあるため冷たい雨が降る

 こう聞くと、冬を迎える前のシリア難民の女性たちは大忙しだと思うだろう。だが、オム・カシムは、冬支度は大変じゃないし、お金もかからずに簡単にできるものだと話す。

貯蔵食はシリアにいたころも作っていたし、それによって家族が喜んでくれることが彼女にとっては何よりの喜びなのだ。

冬の初めは夜に急速に冷え込むことがあるので、仮設住居もしっかりと修理した。子供たちがいつでも着られるよう、温かい服も洗濯済みだ。

男たちも、冬支度には余念がない。

アブ・オデイ(48)は、雨水が仮設住居周辺にたまらないように排水用の細い溝を作る工夫をしているという。作業はとても簡単なので勾配のある土地に住む家族はやったほうがいいと彼はアドバイスしてくれた。

アブ・アリ(56)は、冷気が部屋に入らないよう、窓とドアをしっかり閉めるようにしている。冷たい雨風から仮設住居を守るためには、オレンジ色のビニールシートで覆う方法がおすすめだそうだ。さらに、雨が降っても地面がぬかるまないよう、仮設住居の周りにある土や石を取り除いているという。

「仮設住居をこうやって補強しておけば、冬も幸福と温かさをもたらしてくれる」と、アブ・アリは言う。

リサイクル水で植物を育てる私の庭は、美しい

 Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervised by Cyril Cappai and Hada Sarhan

世界的に水不足が問題になっているが、難民キャンプでも水は最も重要な物資のひとつだ。日本の国際NGO・JENはキャンプ内で水と衛生に関わる支援を担い、ひとりひとりに充分な水がいきわたるように尽力しているが、難民たちはシリアで暮らしていたときのように潤沢には水を使えない。

人々は限られた水を、どのように節約しているのだろうか? そのユニークな知恵の数々を、動画で紹介する。

 

00:00-00:05 ヨルダンにあるザータリ難民キャンプは、世界でも有数の規模だ。

00:06-00:07 そして、世界でも最も水が不足している国にある。

00:08-00:11 ザータリ難民キャンプに住む難民の数は約8万人。

00:12-00:17 キャンプの生活用水は地下水でまかなわれている。

00:18-00:23 ひとり当たり1日35リットルの水が確保されており、約3500立方mの水が毎日消費されている。

00:24-00:28 しかし、深い井戸からくみ上げる水がひどく濁っていることもある。

00:29-00:33  なぜなら枯渇するかもしれないほど、井戸の水が少なくなっているからだ。

00:34-00:39 最近、キャンプの水の消費量が急激に変動している。

00:40-00:43 その理由を探るため、数人の難民に節水の工夫をしているか聞いてみた。

00:56-01:02 私たちは第10区に住んでいます。ホースを使って、節水をしています。

01:04-01:15 (給水所から)水を運ぶときにバケツを使うと、水がこぼれやすいからです。こぼれる心配のないホースを使って水を運搬するほうが、節水になります。

01:19-01:40 私は、洗濯に使用した水を庭の植物の水やりに再利用しています。私の小さな庭はとても美しいですよ。

01:42-01:58 私たちはザータリ難民キャンプに5年住んでいます。ここで多くの水が使われていると知っています。だからこそ、節水のためにプラスチックボトルを再利用したシャワーを作りました。ボトルに小さな穴をたくさんあけてホースをつなぎます。フタをあけると、節水シャワーになる仕組みです。

02:05-02:12 私たちは、髭剃りをするときには水を蛇口から流し続けるのではなくて、小さなボウルに少しの水を入れ、無駄なく使うようにしています。

02:19-02:21 自転車をきれいにするために水を使うのは意味がありません。

02:27-02:32 かわりに水で濡らした布で自転車をふいています。こうすれば水をあまり使わなくて済みます。

02:42-02:48 衛生の知識を学ぶワークショップでキャンプにある水に限りがあることと、どのように節水すれば良いかを学びました。

02:53-03:10 神のご加護により、節水できています。私たちは果物や野菜を洗った水を植物にあげています。ここでは水が不足しているので、無駄にできません。

03:11-03:34 私たちは、水を大量に消費するか、節水するか、選ぶことができます。私は、節水することを選び、食器洗いに使用した水を再利用しています。

洗剤を入れて、床をきれいにするために使っているのです。節水は私のためでもあり、周りの人々のためでもあります。

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The Road ×クーリエ・ジャポン|「まるで都市!」8万人が暮らす超巨大難民キャンプの暮らしとは?|

2017.10.17
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A busy street at the Zaatari refugee camp in Jordan.
開設から5年が経ったザータリ難民キャンプ
PHOTO: SAMUEL ARANDA / THE NEW YORK TIMES

約8万人のシリア難民が生活するザータリ難民キャンプは、2017年7月で開設から5年を迎えた。シリア危機が勃発し、急ごしらえで造られたキャンプには、いまや数多くの商店や病院、学校が立ち並び、都市のような様相を呈している。

長引く避難生活のなかで、シリア難民たちの暮らしはどのように変化していったのか? インフラ整備やIT化が進み快適さが増した部分がある一方で、まだまだ満たされない思いもあるようだ。「ザ・ロード」の記者が住民たちに取材した。

開設から5年──ザータリ難民キャンプのいま
Text by Louay Saeed

「5年もここに暮らすことになるなんて、誰も想像しませんでした。ところが、時間はまばたきのような速さで過ぎ去っていったのです」

ザータリ難民キャンプに暮らす難民はみんなこう口をそろえる。

キャンプに初めて足を踏み入れたときには、誰もが数日でシリアに戻れるだろうと考えていた。どんなに悲観的な者でも、3~4ヵ月以上ここに留まることはないと──。

だが、シリア内戦の終わりはいまだに見えず、難民たちはザータリでの暮らしを続けざるを得なかった。先行きはまだ不透明だ。それでも彼らは依然として、故郷へ帰る日を夢見続けている。

ザータリ難民キャンプは、2012年7月にヨルダン北部のマフラック県に開設された。5年たったいまもなお拡大し続けており、キャンプというよりはまるで都市のようだ。ある統計によれば、ザータリ難民キャンプの規模は中東最大で、世界的に見ても最大級のクラスに入るという。

ザータリは、故郷シリアの国境からわずか15kmしか離れていない砂漠地帯にある。「ザ・ロード」ではキャンプ開設5周年を迎えるにあたり、数人の難民たちに取材し、長期にわたるキャンプ生活について語ってもらった。

アブ=ラエドは、ザータリに来た当初、ここに2ヵ月以上滞在することはないだろうと考えていたという。しかし、避難生活はすでに6年目に突入。彼の願いは、1日も早く故郷の村に帰ることだ。

「当初、難民たちはみんな布製のテントで暮らしていたうえに、何でも共有しなければなりませんでした。飲料水の入った水タンクだけでなく、トイレやシャワー、キッチンですらね。それが、コンテナハウスでの生活に変わると、共有していたものが各家庭に1つずつ設置されるようになりました」

ザータリでは、世界各国の人道支援団体が昼夜を惜しんで働き、インフラ整備を進めている。道路は舗装され、電気も通った。

現在は全家庭に上下水道をつなぐ工事がおこなわれている。完成すれば公共の水タンクから水汲みをする必要がなくなるので、これまで苦労して水を運んでいた女性たちが、重労働から解放される。

アブ=ユセフは「近いうちに家に帰れるから」と、毎晩のように家族を励ましてきた。ところが、気がつけばいつの間にか5年もの月日が流れていたという。

ザータリでの暮らしは最初のうちさまざまな問題があったが、いまはすっかり慣れた。アブ=ユセフは、家族とともに安全に暮らせるキャンプの生活に満足している。また、ザータリの教育プログラムはヨルダン教育省が管轄している。子供たちがちゃんとした教育を受けられることも、彼にとっては大きな安心材料のようだ。

アブ=イッサも、ザータリに着いたばかりのころは数週間ほどしか住まないだろうと考えていたが、いまのザータリでの生活は安定していると認める。

「開設したばかりのザータリには、小さなお店がいくつかあっただけでしたが、現在は、洋服屋やレストラン、床屋、仕立屋、大工、鍛冶屋など、ありとあらゆる店がそろっています」

「5年もここに暮らすことになるなんて、誰も想像しませんでした。ところが、時間はまばたきのような速さで過ぎ去っていったのです」

ザータリ難民キャンプに暮らす難民はみんなこう口をそろえる。

キャンプに初めて足を踏み入れたときには、誰もが数日でシリアに戻れるだろうと考えていた。どんなに悲観的な者でも、3~4ヵ月以上ここに留まることはないと──。

だが、シリア内戦の終わりはいまだに見えず、難民たちはザータリでの暮らしを続けざるを得なかった。先行きはまだ不透明だ。それでも彼らは依然として、故郷へ帰る日を夢見続けている。

ザータリ難民キャンプは、2012年7月にヨルダン北部のマフラック県に開設された。5年たったいまもなお拡大し続けており、キャンプというよりはまるで都市のようだ。ある統計によれば、ザータリ難民キャンプの規模は中東最大で、世界的に見ても最大級のクラスに入るという。

ザータリは、故郷シリアの国境からわずか15kmしか離れていない砂漠地帯にある。「ザ・ロード」ではキャンプ開設5周年を迎えるにあたり、数人の難民たちに取材し、長期にわたるキャンプ生活について語ってもらった。

アブ=ラエドは、ザータリに来た当初、ここに2ヵ月以上滞在することはないだろうと考えていたという。しかし、避難生活はすでに6年目に突入。彼の願いは、1日も早く故郷の村に帰ることだ。

「当初、難民たちはみんな布製のテントで暮らしていたうえに、何でも共有しなければなりませんでした。飲料水の入った水タンクだけでなく、トイレやシャワー、キッチンですらね。それが、コンテナハウスでの生活に変わると、共有していたものが各家庭に1つずつ設置されるようになりました」

ザータリでは、世界各国の人道支援団体が昼夜を惜しんで働き、インフラ整備を進めている。道路は舗装され、電気も通った。

現在は全家庭に上下水道をつなぐ工事がおこなわれている。完成すれば公共の水タンクから水汲みをする必要がなくなるので、これまで苦労して水を運んでいた女性たちが、重労働から解放される。

アブ=ユセフは「近いうちに家に帰れるから」と、毎晩のように家族を励ましてきた。ところが、気がつけばいつの間にか5年もの月日が流れていたという。

ザータリでの暮らしは最初のうちさまざまな問題があったが、いまはすっかり慣れた。アブ=ユセフは、家族とともに安全に暮らせるキャンプの生活に満足している。また、ザータリの教育プログラムはヨルダン教育省が管轄している。子供たちがちゃんとした教育を受けられることも、彼にとっては大きな安心材料のようだ。

アブ=イッサも、ザータリに着いたばかりのころは数週間ほどしか住まないだろうと考えていたが、いまのザータリでの生活は安定していると認める。

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ザータリの目抜き通りは「シャンゼリゼ」と呼ばれている
PHOTO: SAMUEL ARANDA / THE NEW YORK TIMES

支援物資の受け取り方も変わった。かつてシリア難民たちは、支援団体のもとに物資を受け取りにいかなければならなかったが、現在はスマート・カードが導入されている。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に登録している難民なら誰でも、1人あたり月20ヨルダン・ディナール(約3200円)がカードにチャージされる。それが食料配給の代わりなのだ。

「お金がチャージされると、携帯にテキストメッセージが届きます。いまはそのお金で、キャンプ内にあるスーパーマーケットで食糧を買っています」

だが、もちろん問題がないわけではない。ザータリには、病院や保健センターなどさまざまな医療施設があるが、そこで働く専門的なスタッフが不足している。電気の供給も安定しているとは言えない。

4年前にザータリに来たオム=エハブも、「内戦中の故郷のことを考えれば、安全なだけでもありがたい」と話す。だが、彼女も我々にある切実な問題を語った。

「ザータリはインターネット環境がよくないので、ヨルダン国外にいる家族と話したくても、満足に話すことができません。早くこの問題が解決することを心から祈っています」


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ザータリの夜は長い
Directed by Qasim Al- Shahma, Ahmed Al-Natour, Mohammed Al-Attawi, Alaa Al-Balkhi, Ahmed Al-Salamat, Ahmed Ismail / Project Director Omar Braika / Supervised by Cyril Cappai and Hada Sarhan

夏のザータリ難民キャンプの午後は静かだ。灼熱の太陽が照り付ける昼間、人々はあまり表に出ない。その代わり日が暮れると、どんどん人が増えはじめる。

子供たちはカラフルな凧をあげ、サッカーに興じる。この時間が稼ぎどきとばかりに、商店もにわかに活気づく。レストランには食欲をそそる匂いが漂い、人々はショッピングを楽しむ。クラブは夜更けまで若者たちの熱気でいっぱいだ。

ザータリ難民キャンプの夜は長い。

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