シリア難民支援速報

ザータリ難民キャンプで女性向けの衛生教育を実施しました(後編)

2015.04.09

衛生プロモーターは1回のセッションにつき、8名~10名の女性住民を対象に、JENの地域センターのスペースや衛生プロモーターの居住空間などで実施されました。セッションにはJENのスタッフも1~2名が同席し、サポートをしました。

セッションを通じて、女性たちは多くの新しい知識を得ることができました。最初のセッションで、女性たちが自分たちをケアする衛生知識の中に多くの迷信や誤解が含まれていることが明らかになり、多くの女性が1か月のサイクルの中で自分たちの身体に起きていることを理解することができました。

彼女たちは、セッションが進む中で多くの質問をするようになりました。私たちは生理などで何か問題が起きたときには難民キャンプの医者に尋ねるよう伝えました。女性たちはこうした生理などの衛生に関するトピックに対し学ぶことに強い関心を寄せるようになりました。

衛生セッションの最後には、女性は、UN Womenの資金協力を得て購入した衛生キットを受け取りました。この衛生キットには、女性たち自身をケアするためのグッズや居住空間を清潔に保つための様々なアイテムが含まれています。

この衛生セッションを通じて私たちが学んだ最も驚くべきことは、何であったと思いますか?
当初私たちは、これほどまでに女性たちが関心を持つとは考えておらず、すべてこちらから情報提供しなければならないと考えていました。しかし、セッションを始めてすぐ、私たちは女性たちから多くの質問を受けることになりました。

女性たちは様々な迷信を信じていましたが、中でも食べ物に関係する迷信が多く見受けられました。たとえばレモン、たまねぎ、コーヒーといった特定の食物は体によくないものであり、特に生理中の女性がこうした食物を調理したものを家族が食べるとその家族が健康を害するおそれがある、というものです。衛生プロモーターはこうした生理に関係する迷信の誤解を解き、正しい知識を女性に伝える専門家となりつつあります。

今後、私たちが取り組むこと….

今回の衛生セッションを通じて、多くの女性がJENの衛生プロモーターに対して様々な質問を投げかけることができたので、生理に関するトピックは一般化しました。

2週間前、私たちは16名の新しいボランティアに対してオリエンテーションを行いました。新しいボランティアの人々は、今、感染症の拡大、正しい手洗いの方法や正しい手洗いの回数、また住民とのコミュニケーションの取り方など、衛生に関する知識を身につけるために学んでいます。

今回、生理に関する衛生セッションを実施した女性の衛生プロモーターの一人は、他の衛生分野のトピックも扱っていこうと議論を始めています。すでに、次に向けて歯に関する衛生セッションの準備に取りかかっており、さらにその先には、節水に関するセッションの準備に取り掛かろうと計画しています。

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jordan


ザータリ難民キャンプで女性向けの衛生教育を実施しました(前編

2015.03.26

ザータリ難民キャンプには、現在約83500人のシリア難民が生活しています。この難民キャンプにおいてJENが担当している地区には、12歳~39歳までの女性がおよそ3600名います。

通常若い女性は、女性特有の衛生的な知識、例えば生理などについて、母親や叔母、同世代の女性たちから得ます。しかし、難民キャンプで暮らす多くの女性は、保健衛生に関する公的な教育を受ける機会がなく、正確な情報を得ることができていません。また、多くの人が家族や親せきと離散しており、若い女性や少女が、通常そうした知識を教えてくれるはずの女性が家族にいない中で、難民キャンプでの生活を送っているケースが多く見られます。

そこでJENは、女性や若い女性を対象に、自分たち自身の身体をケアするための知識を得られる衛生セッションを実施することにしました。

2月に、JENのスタッフは、セッションで提供する生理に関する衛生教育の準備に取り掛かりました。スタッフは4回に渡って、女性たちが得るべき重要な衛生知識は何か議論しました。また生理のメカニズムを説明するために図解化した資料を作成したり、参加者から受けるであろう質問への回答の準備などを行いました。

JENは準備した女性を対象にした衛生セッションを、同じシリア難民でキャンプに暮らす人々で、ボランティアで活動している衛生プロモーターを通じて、女性住民に対し実施していくことにしました。

JENはまず、今回のセッションについて、13名の女性の衛生プロモーターに研修を行いました。生理に関する衛生セッションは、女性同士でもなかなか共有しづらいトピックであることから、住民に対して行う前に、衛生プロモーターを対象に、小さなグループで研修を行う形で進めていきました。

研修後、JENは衛生プロモーターに自分たちが住む地区のコミュニティを対象に、2か月間で3回の衛生セッションを女性住民に対して実施してもらうように依頼しました。

衛生プロモーターによる衛生セッションはどのようなものになったでしょうか?

(続きは次回掲載します。ぜひご覧ください)

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【緊急企画】イラク国内避難民緊急支援活動報告会を開催します。

イラク北部にて緊急支援に従事しているスタッフが帰国します。
今、イラク北部でなにが起こっているか、JENは国内避難民に対しどのような支援活動を行っているか、今後の活動の展開は、など、緊急支援活動報告会でご紹介いたします。
ふるってご参加ください。

くわしくはこちら

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jordan


世界手洗いの日 ザータリ難民キャンプ

2014.10.30

世界手洗いの日は、石鹸で手洗いをするということを啓発するため、2008年に初めて行われました。その後毎年10月15日に行われ、下痢、風邪やインフルエンザなどの予防に一役買っています。

【世界手洗いの日のキャラクター】
141030 ①キャラクター
清潔にすることはヨルダンやシリアなどのイスラム教の国々でも生活に重要なものとして位置づけられています。しかし、ザータリ難民キャンプで暮らしている子どもたちに石鹸を使った正しい手洗いの仕方が定着しているとはいえず、手洗いが身に付くことで子どもたちの健康を保つことができます。これはジェンが日々行っている活動です。

ジェンは今年、ヨルダン北部にあるザータリ難民キャンプで世界手洗いの日のイベントを子どもたちと一緒に行い、食事前、トイレの後、汚いものをさわった後に、石鹸で手洗いをするということを啓発しました。

この日は大変盛り上がり、子どもたちはただ座って聞いているのではなく、活発に動いてイベントに参加していました。2地区に住んでいる子どもがこのイベントに参加するため招かれ、衛生や手洗いに関するゲームを行いました。病原菌を例えるために彼らの手がインクで塗られたときは、とても楽しそうでした。次に、3人の子どもが同時に目隠しをし、石鹸で手洗いをして病原菌を落とします。その中で最もきれいにインクを落とした子、あるいは一番上手く手洗いができた子が勝者となりました。
その後も手洗いを意識づけようと少年たちがおもちゃに色を塗ったり、楽しそうに取り組んでいました。

【女の子が手洗いをし、小さい男の子がそれを見ている様子】
141030 ②手を洗う女の子たち
【石鹸で手洗いをすることを教えられている少年たち】
141030 ③風車づくり
また、キャンプ内にあるジェンが活動している地区で、世界手洗いのキャラクターの着ぐるみを着たスタッフがウォーキングツアーを行いました。このライブショーは子どもと一緒に遊びながら、目に見えるように衛生のメッセージをわかりやすく発信することができる有効なアプローチです。また、スタッフが着ぐるみを着て変装して行うことで、伝統的な考えや文化的な背景にある慣習というものに捉われることなく、自由な形で衛生に関するメッセージを発信することができました。

【世界手洗いの日のキャラクターとともにきれいになった手を掲げている子どもたち】
141030 ④子どもたちとキャラクター
ジェンが行っているもう1つのイベントで、おそらくキャンプ内でもっとも多くの人に知られているのが、サッカーゲームです。このゲームでは、子どもたちが“せっけん”チームと“ばい菌”チームに分かれてサッカーします。“せっけん”チームは青色のリボンをつけ、“ばい菌”チームは茶色のリボンをつけて、識別します。そしてジェンスタッフがゲームの審判役になります。
今回の試合では、残念なことに3試合中2試合“ばい菌”チームが勝ちました。しかしジェンスタッフはすかさず、この状況について子どもたちに「きちんとせっけんで手を洗えば、次回の試合ではばい菌チームに勝てるよ!」と伝えました。

【“ばい菌”チームがボールをうばったところ】
141030 ⑤Germsチーム
【女の子が最初にボールを奪い取った瞬間】
141030 ⑥女の子たちの競争
サッカーの試合は他の観客や大人たちにとっても楽しいものです。試合中は、多くの応援、エールが試合をするそれぞれのチームの子どもたちに送られます。他の地区の住民も、試合を観戦するために足をとめ、拍手やエールを送るほどでした!

そして夕方、試合終盤のペナルティキックの場面では、すべてのコミュニティでの活動が終了したジェンスタッフも、地区の大人たちと一緒に声援を送りました。

【“せっけん”チームを応援する女の子たち】
141030 ⑦ Soapチーム

 

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PTAに対する衛生授業

2014.10.16

夏休みが終わり、新学期が始まった学校で、JENの衛生プロモーターと、衛生教育の訓練を受けた教師が、生徒の親御さんを対象とした衛生授業を行いました。
家庭における衛生環境は子どもの健康に直接関わってくるので、親に対する衛生教育が重要になるのです。

【PTAに対する衛生授業.】
141016 ①PTAに対する衛生授業
校長先生やほかの先生たちが、親御さんに対して、電話による呼びかけや、招待メールを送るなどして、衛生授業を受けてもらうよう促しました。またJENの衛生プロモーターたちが子どもたちにビラを配り、毎回多くの親御さんや近隣の方が参加しました。
学校に関わるプロジェクトに親御さんが理解し関わることの重要性を強調した結果、期待した以上にたくさんの方が参加してくれました。

子どもの健康や衛生に気を配る母親だけでなく、父親やモスクを掃除する近隣の住民や先生方が授業の合間を縫って参加し、毎回活発な議論が行われました。

【PTAに説明するJEN衛生プロモーター】
141016 ②PTAに説明するJEN衛生プロモーター
親御さんとの話し合いでは特に、朝食の問題に焦点があてられました。JENの衛生プロモーターは、朝に健康的な食事を子どもに摂らせるように強く勧めました。というのも、ヨルダンの生徒は朝食を摂らずに学校へ来てしまい、外の屋台から不健康なものを買って食べていることが、しばしば見受けられるからです。

JENの衛生プロモーターチームは訓練を受けた先生とともに、今後も生徒の親御さんをはじめ親類の方々に衛生授業を行い、子どもたちの健康を守るために話し合いを続けていきます。

【掃除をしたのち校庭にいた笑顔の子どもたち】
141016 ③笑顔の子どもたち

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ザータリ難民キャンプの位置づけが移行されています

2014.09.18

JENのスタッフとなって働きはじめて2週間足らずですが、ザータリ難民キャンプでの活動を始めて10か月が経っています。ここで活動するのは非常に興味深いです。

このキャンプは、当初の「シリア難民の人々を一時的に受け入れるための緊急シェルター」としての役割から、「シリア難民の人々が再起を図るための住む場所」という位置づけに急激に移行しはじめています。難民の人々は、日に日に、キャンプ中にある自分たちの住処をより快適に住みやすくなるよう工夫を重ねています。多くの改善がなされてはいますが、まだまだ多くの困難や不都合な点、課題が残されています。

難民の人々が自ら問題を解決していけるように、彼らの能力強化を図ったり、仕組みを変えていこうとするJENの支援方法を学ぶことはとても楽しいです。JENは活動を進めていく中で、様々なレベルで様々な人々とのコラボレーションを図っています。こうした協働による活動は、みんなで一丸となって問題に取り組んでいることを実感させるものであり、大変有意義です。

コミュニティに情報を普及させるために、JENがどのようにコミュニティのメンバーを巻き込み、能力強化を図っていくのか、1つの例を取り上げたいと思います。

衛生促進のセッションをJENスタッフ自らがコミュニティの住民に対して行うのではなく、コミュニティのメンバーに知識を伝達して、そのメンバーから住民に対してセッションを行うという形に、方法を変えました。

ザータリ難民キャンプにあるJENチームのリーダーの一人であり、保健分野でのアカデミックなバックグラウンドがあるアマールは、39名のシリア難民を対象に、彼女たちがボランティアとして他の人々に対して衛生促進セッションを提供できるよう、衛生促進員のトレーニングを行いました。JENが衛生促進員の人々に最初にお願いしたのは、彼らのコミュニティにおける食品の安全性に関する知識・情報の普及でした。

私は、アマールが食品の安全性に関する衛生セッションを衛生促進員に対して行っているところを何度か目にしました。そのセッションはとても楽しいものでした。アマールは普段静かでおとなしいのですが、セッションでの彼女はとても生き生きとして、活動的で、目を輝かせながらトレーニングセッションを行っていました。衛生促進員にとってよく知られていない情報や、特によく理解を深めてほしい内容であるときには、その都度、活発な議論を交わせるように努めていました。

セッションが終わる頃、私は、なぜ無償であるにも関わらず、衛生促進員として彼女たちが、衛生に関する知識を普及させる活動をしたいと思っているのか、その理由を知りたいと思いました。そこで、私は彼女たちに、活動に協力してもらえることに感謝を述べつつ、その理由を尋ねました。ある女性は、他の人と何かするのが楽しく、誰かの役に立てることがうれしいと話してくれました。別の女性は、かつて看護師として働いていた経験があり、衛生知識を伝えることはとても大切なことで、他の人々のために彼女の知識や経験を活かしたいと話してくれました。

またこの2週間で、JENがどのようにキャンプ内でインフラを整備しようとしているのか目の当たりにしました。

例えば、詰まりかけている下水のパイプの処理を行う場面に遭遇したときのことです。そのパイプは、下水を公共トイレから汚水タンクに流すために設置されていましたが、適切な傾斜がなかったことが、詰まりの原因であることがわかりました。このような場合、穴を掘ってパイプを取り出し、正しい位置に埋めなおす作業が必要となります。その現場近くに住んでいる地域の人々は、その作業を見て、環境改善のために作業が必要であることを理解し、納得することができていました。

【 詰まりかけた下水パイプの設置作業】
140918 ①fixing sewage line in D5140918 ②inspecting work
他にも、興味深く感じたJENの活動があります。キャンプで活動するJENスタッフとブレーンストーミングしたときのことです。この時の議題は、普段はなかなか私たちの活動に参加してくれない難民の人々をいかに活動に巻き込むかということでした。

セッションの中で、まず私たちはなぜ人々がいつもキャンプで行うプログラムに参加してくれないのかその理由を話し合いました。それから、参加しない人々がどのような人か分類し、そうした人たちがより活動に参加しやすい内容となるプログラムを分類ごとに考えていくことにしました。こうしたセッションはとても楽しくわくわくします!

【 ザータリ難民キャンプでのブレーンストーミングのセッションの様子】
140918 ③Brainstorming
アン・ラパン(プログラムオフィサー)

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