シリア難民支援速報

The Road ×クーリエ・ジャポン|「愛する母のために…」1日わずか2ドルの労働に耐える11歳

2017.01.23

 cj_logo_blue_100px [ 本連載は、クーリエ・ジャポンとの連動掲載です。 ]
ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

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若者たちが未来を前向きに見据える一方で、難民キャンプでは児童労働が深刻な問題となっている。家族のために自分を犠牲にして、厳しい労働やいじめに耐える11歳の少年を描いた動画「生きるために」は、胸を刺すような映像美がいっそう悲しみを誘う。(ザ・ロードの詳細はこちらから

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2017年のシリア難民の願いは? 帰還を夢見る老人たち、復興を目指す若者たち
Interview by Yasser Al Hariri

ザータリ難民キャンプに暮らすシリア難民の2017年の願いは、世代によって違う。それはきっと紛争が始まってからの5年の間に、考え方や未来に対する希望が変化したからだ。
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PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

老人たちは、シリアに平和が戻ること、そして一刻も早く帰還できることを願っている。若者たちは、もっと現実的だ。彼らは、紛争によって壊滅的に破壊されたシリアをどう立て直すかを考えはじめている。

「ザ・ロード」のスタッフが新年を迎えるにあたり、何人かのシリア難民を取材し、2017年の願いを聞いた。

エルハム・アフマッド・アル・シュワムラ(45)──新年には、すべてのアラブ諸国に平和をもたらしてほしい。そして、故郷に戻りたい。もう離れて数年たつが、私がシリアを忘れることは、一生ないだろう。

オム・ジハッド(45)──私たちはまだ、シリアに戻るという希望を捨ててはいない。2017年はシリアが平和になることを願う。そして昔のように、住んでいた村の林道を歩き、木の下でゆったり座るような美しい日々を過ごしたい。

オム・ウィサム(36)──ザータリキャンプには数ヵ月しか、滞在するつもりはなかった。まさか2017年をこの地で迎えるとは、夢にも思わなかった。素晴らしい故郷シリアと、そこで過ごした日々を忘れることはできない。だからこそ私は辛抱強く、帰る日がくるのを待っている。早く愛する家族や親戚のもとに帰りたい。

モナマッド・サイフディン(9)──2017年は、シリアに帰って、僕たちが暮らしていた大好きな村に戻りたい。そこに住んでいる友だちに会って、一緒に遊んで、昔のように楽しい日々を過ごせたらどんなにいいかと思う。

オマール・アデル・ガズラン(18)──2017年は勉強を頑張る。そして、シリアに戻ったら仲間たちと一緒に国の復興に尽くしたい。

スンドゥス・ユーセフ・アル・ハリリ(19)──今年は中学校を卒業して、将来は、(ヨルダンの)アル・ヤルムーク大学でアラビア語か、通訳・翻訳を学びたい。そして、そのまま勉強を続けて、専門家になるのが夢。

ブシュラ・アフメッド・アル・ハリーリ(19)──今年は、タウジーヒ(全国一斉検定試験)でよい成績をとって、将来は大学で英文学を学びたい。それと、ザータリキャンプの支援団体のサービスがもっとよくなるよう、祈ってる。

アメラ・モハメッド・アル・ハリリ(58)──2017年は、みんなに幸せが、そしてイスラム教徒とアラブ諸国に平和が訪れ、すべての難民が母国に戻れますように。


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「シリアの代わりになる国など存在しない。だから戻るという希望を決して、捨てはしない」
Text by Hajer Al Kafri

シリアに帰りたいという希望を抱きながら、また1年が過ぎ、そして新しい1年が始まる。紛争が子どもたちを奪う前に、私たちが暮らしていた母国の大地を再び踏みたいと、常に願っている。この希望を失わないまま、生きていきたい。

ようこそ2017年。新年に期待することは多いが、どうか愛と喜びに満ちた平和な日々が続き、みんながシリアに戻れますように。

ここザータリキャンプでも、太陽が昇れば子どもたちは学校へ行き、私たちは仕事に行く。礼拝をし、伝統を次世代の子どもたちの心に刻んでいく。

難民キャンプに暮らしながらも勉学を続け、大学に通うシリア人も多い。明るい未来を描けるほどに、とても優秀な学生もいる。その優れた能力は、母国シリアのために役立ててほしい。私たちの心には、シリアの代わりとなる国は存在しない。

だから私たちは「シリアに戻る」という希望を決して捨てない。

ようこそ2017年。私たちはこの先に訪れる素晴らしい日々を夢見ている。いったい、何が起こるのだろうか? それは誰も知らない。強さと忍耐を示したシリア難民には、神の意志により美しい日々が待っていると信じよう。

そう信じながら、父親たちは勇気を持ち、母親たちは辛抱強く、子どもたちは勤勉に、人生を歩んでいこう。


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「生きるために」──1日わずか2ドルで働く11歳のムハンマド
Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

(以下は字幕の日本語訳)
0:01 JENは、国連機関や他のNGOとともに、ザータリ難民キャンプ設立当初から、子どもたちが労働の場を離れ、学校に通えるよう、支援活動を継続している。
0:07 手押し車が重すぎて、まっすぐ歩けないよ。
0:30 僕の名前は、ムハンマド・アドナン・アルジュルム。いま、11歳。
0:32 好きなことはサッカーとビー玉で遊ぶこと。
0:45 お祈りが終わったら、手押し車を持って仕事に出かけるんだ。

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PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

1:00 毎日仕事が終わったら、お母さんに稼いだお金を渡すよ。
1:20 もらえるお金は大体1.25JD(約200円)とか0.75JD(約160円)とか、0.50JD(約80円)とか、それぐらい。
1:31 仕事をするのは、お母さんを助けたいから。
1:35 お母さんを喜ばせたいんだ。
1:53 僕の仕事では手押し車を使う。手押し車で荷物を運ぶんだ。
1:56 たとえば、マーケットで買い物した人の荷物とか、キャンプの入口まで荷物を運びたい人の手伝い。
3:10 お客が見つかると、他の男の子たちがきて「金をよこせ」って言うんだ。
3:20 お金を渡さないと、ぶたれる。
3:23 彼らは僕のお金で、タバコを買う。
3:27 男の子たちは、鉄の棒とかロープとかムチを持っている。
3:32 手押し車を壊したり、僕のことをぶったりする。
4:12 僕はお母さんと一緒にシリアから来た。
4:15 ここで生きるためにザータリに来た。
4:19 お父さんはシリアに残った。ここにいるのは、お母さんと兄弟と、僕。
4:26 もしお父さんが一緒にいたら、僕は働かずに、幸せだっただろうな。
4:56 ときどき、お母さんはキャンプの外でトマト農園の仕事をしたらって言う。
5:02 それなら、他の子たちにぶたれない。
5:15 僕は、先生になりたいんだ。
5:17 学校を1日だって休みたくない。
5:21 そして、ちゃんといまの学年を修了したい。
5:24 大きくなるまで学校に通って、先生になって、子どもたちを教えるんだ。
5:31 愛してる。
5:37 ザータリ難民キャンプでは5~17歳の子どもたちのうち、1,119人が労働に従事している(2016年国家児童労働局調べ)

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