シリア難民支援速報

The Road ×クーリエ・ジャポン|シリア人女性コーチが奮闘!「世界に羽ばたく女子サッカーチームを作る」

2017.04.19

 cj_logo_blue_100px [ 本連載は、クーリエ・ジャポンとの連動掲載です。 ]
ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

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「いつか世界で戦えるチームにしたい」──2016年9月、欧州サッカー連盟(UEFA)などの支援により、ザータリ難民キャンプにスポーツ施設が完成。そこで女子サッカーチームのコーチを務めるアマール・モハマッド・ホウシャン(40)は、冒頭のような意気込みを語る。

美しい映像と音楽でザータリの日常を伝える動画では、長年、コーランの修復を生業としてきた老人にフォーカス。凄惨な避難の経験を振り返りつつ、難民キャンプでの希望を静穏に語る。
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難民キャンプから世界最強の女子サッカーチームを!
Text by Qasem Al-Shahmeh

アマール・モハマッド・ホウシャン(40)は、幼い頃からサッカーが大好きで、いつか女子サッカーチームを作りたいと考えていた。

慣習や伝統に自分の夢が妨げられるなんて、許せなかった。通りで石を投げつけられようと、彼女が決意を変えることはなかったし、むしろ、これを挑戦と受けとめてさらなる努力をした。ホウシャンは強い女性だ。

20170810_JD_the maneger2【ザータリ難民キャンプの女子サッカーチームのコーチを務めるアマール・モハマッド・ホウシャン(40)】PHOTO: SUNDUS AL-HARIRI / THE ROAD

2016年9月、UEFAなどの支援により、ザータリ難民キャンプに「ハウス・オブ・スポーツ」という運動施設ができ、ホウシャンはそこでコーディネーターとして働きはじめた。彼女や他の女性たちの啓発活動によって、スポーツをする女性が増加したという。

さらにホウシャンは、念願だった20歳以上の女子サッカーチームを結成し、コーチに就任した。

「仲間と協力してメンバーを集め、女子サッカーへの理解を広めてきました。この取り組みは非常にうまくいっています」とホウシャン。

彼女のチームはすでにいくつかの大会で優勝しており、さらに上を目指すべく練習に励んでいる。最近、15歳以下の女子チームも結成した。

ホウシャンはこれまでの半生を次のように振り返る。
「子どもの頃からサッカーが大好きでした。サッカーの試合観戦が何よりも楽しくて、いつかコーチになることが私の夢でした。正直、家族や周りの人々から私の夢はよく思われず、さまざまな批判を受けました。でも、気にはなりませんでした。私の夢は女子サッカーチームを作ること、ただそれだけでしたから」

だが、その道は決して平坦ではなかった。ホウシャンはこう続けた。

「道を歩けば、人に石を投げられました。シリア人社会は保守的で、女性がサッカーをすることは受け入れがたいからです。しかし、いったい何が悪いというのでしょうか? 女子チームは、女子同士で試合をするというのに。

私には夫と5人の子どもがいますが、夫は理解してくれていますし、子どもたちにはシリアにいた頃からサッカーを教えてきました」

今後の目標は? という問いにホウシャンはこうこう答えてくれた。

「プロレベルの女子サッカーチームを作りたいです。世界的強豪と言われるほどの。難しいことではありません。固い決意は、不可能を可能にします」


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私に残されたもの – コーランを修復する男
Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

00:04-00:20 傷んだコーランを修復すれば、読んだ誰かがこう言うだろう。「これはいい。読みやすい」
00:28-00:47 私の名前はアブドゥラ・イッサ。(シリア南西部の)ダルアーから来た。1938年生まれだ。2013年2月2日の午後2時、家族とともにヨルダンのザータリ難民キャンプに到着した。
00:49-00:55 あれから4年と20日の月日が過ぎた。これらのコーランには抜け落ちたページがたくさんある。
00:56-01:12 シリアにいた頃は、コーランの修復が私の仕事だった。ここでも同じだ。モスクに行き、コーランを修復し、自宅に戻る。
01:22-01:40 誰かに修復方法を教えたいと、イマーム(イスラム教の聖職者)に言った。古くなったコーランを受け取ると、まずは損傷具合を調べる。そして、修復をする。
01:42-01:56 テープやのりを使って。このようにテープを貼り、直す。こちらも同じように。
02:25-02:32 (私は難民)キャンプに暮らしている。神のご加護により、皆と同じように。ここでは、皆、同じような暮らしだ。
03:07-03:16 お金はないが、キャンプにあるすべてのモスクを訪れる。シリアにいた頃は、神のご加護により、自分の資金でコーランを直していた。私のお金は神のものだ。
03:51-04:02 いまは賃金をもらっている。神の本を救うことで、神が喜んでくださったと感じる。
04:15-04:27 妻と息子とここで暮らしている。18人の子どもを授かった。6人の息子と12人の娘だ。(シリアにいる子どもたちは)どうしているか、数日おきに電話している。
04:30-04:36 10人はダマスカスに、1人は(ザータリ難民)キャンプにいる。全部で11人。 7人は亡くなった。
04:37-04:44 5人は病気などで小さい頃に亡くなった。残りの2人は戦争で死んだ。
04:47-05:03 妹の家に車に向かう途中、正面から銃撃された。車には運転していた息子、その母親と妹が乗っていた。息子は胸に2発、妹は首に銃弾を受け、亡くなった。
05:05-05:14 母親は指を撃たれたが、回復した。しかし、そのけがのせいでキャンプに来られなかった。
05:16-05:28 私たちは神の子。神のご加護で、御許に戻る。私は神に生命を捧げたい。
05:43-05:51 神のご意志で、よき最期を迎えたい。私にとっては、コーランの修復が最良のことだ。
06:02-06:15 シリアに戻ること、子どもたちが安全に暮らすことを望んでいる。私の人生に残されたのは、コーランを修復することだ。
06:16-06:18 シリアに戻り、モスクをめぐり、生命が尽きるまでコーランを修復したい。

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