ヨルダンには、日本と同じような季節の移り変わりがあります。砂漠地帯にあることから朝晩は日中と比較してかなり気温が下がりますが、日本のほうがやや寒いかなぁ、という感じです。
もっとも大きな違いとしては、雨季の時期でしょうか。日本では、春と夏の間に梅雨がありますが、ヨルダンでは晩秋から冬にかけての数ヶ月に1年分の雨が降ります。
今年は、昨年と比べて気温が下がり始めるのが遅く、生活をする上では楽でしたが雨の遅れが心配されました。11月中旬には、イスラム教に関する全てのことを管轄する省(the Ministry of Awqaf and Islamic Affairs)の通知により全国のモスクの金曜礼拝で雨を請う祈りが行われたおかげか、11月後半からは雨が時々降り始めました。この特別な祈りは、預言者モハメットの時代から続く儀式です。
ザータリキャンプでは10月から、冬の悪天候による影響を軽減するための準備が始まりました。キャンプがある地域は、土壌が粘土質であるために雨が降ると雨水が地面に浸み込まず地上に水が溜まるため、低いところに位置する家庭では、最悪の場合床上浸水し、避難せざるを得ないこともありました。また、降雪や暴風も想定されます。
そのため、これまでの経験から少しでも被害を少なくするために、セクターごとに事前の予防・緊急時の対応計画などが話し合われています。その一環として、ガスを購入するためのバウチャーや子どもの冬服を購入するための現金の配布、毛布や食料品の配布が行われています。
JENは水衛生関連団体の一員として、水の供給、下水の汲み取りなどの通常の水衛生関連サービスが問題なく行われるように、去年の被害状況を考慮して一時的な給水タンクの設置・公共タンクの位置の移動を計画しています。また、雨が降った際に浸水する場所に水が溜まらないように設置した側溝の詰まりを解消する、または新しい側溝を設置するなどの工事も行われています。一方で、住民に対しても各々ができる準備をするように促したり、悪天候の際の注意事項などを伝えたりしています。
去年に比べて特に対策が必要なのは、現在キャンプ内で建設している上下水道ネットワークの工事現場の安全性の確保です。下水道のネットワーク工事では、深いところでは5-6メートルも地面を掘るため、通常時でも安全対策には細心の注意を払っています。これからの季節、地上を流れる雨水が工事現場に流れ込み、地面と水面の区別がつかなくなることで、車両や通行人が穴に落ちることなども想定され、建設業者とともに対応・事前準備の必要があります。また、掘削時の土が給水トラックや汲み取りトラック移動の妨げとならないようにする必要もあります。
これからの数ヶ月間、悪天候は避けることはできませんが、できるだけ被害が少なくなるよう、関係者と密に連携しこれまでの経験から得た教訓に基づいた準備・対策をとっていきます。
【道路が地面より高いため、道路脇にとどまってしまった水を流すために、アスファルトを一部分取り除く様子(ザータリキャンプ9区)】
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JENの支援活動は、支援者の皆さまからのご寄付に加え、国連ユニセフやジャパン・プラットフォーム(以下、JPF)とパートナーシップを組み実施しています。
10月23日、24日、25日に、JPF東京本部から2名の職員がヨルダンを訪れ、このうち2日間はJENが2016年から2017年4月までの約1年で実施した支援活動のモニタリング(視察)を行いました。この1年では、シリア難民生徒を受け入れて老朽化が加速したホストコミュニティの公立校のトイレ・洗い場など水衛生施設の整備、また生徒への衛生促進活動を実施することができました。
今回の視察団には、活動を終えた複数の学校で支援後の水衛生施設を視察していただきました。施設を清潔に保つ努力をしている学校だけでなく、衛生的に保たれていない学校も対象にしました。ヨルダンの男子校では一般的に、自助努力による学校施設の維持管理が喫緊の課題となっています。訪問先では、それが私たちの目にはどんなに非衛生的に映っていたとしても、現地の人びとは「JENの支援によって衛生状況や生徒の態度がはるかに改善・向上した」と嬉しそうに話してくれました。
ヨルダンの公立校には、水衛生施設の維持管理基準があります。こういった学校は、基準では平均を下回ります。それでも学校側は、改善・向上の兆しが見られていると前向きに受け止め、一歩一歩あきらめずに努力を続けています。今回は、JPFにこのような現状を知っていただくことが出来ました。
施設を維持管理する際の良し悪しは、学校長や教員のモチベーションにかかっていると言っても過言ではありません。たとえ今は維持管理の基準値を満たしていなくても、努力を継続していくことが大事なのです。そのため、JENは、支援事業が終了した後も学校を度々訪問してモニタリングを実施します。こうして、教員と話し合う機会を大切にしています。
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私の名前はアリ・アルジャドアです。私は現在、JENのアドミンマネージャーをしています。
2013年2月にコミュニティ動員マネージャーとしてJENで働き始めました。その頃、JENはザータリキャンプで衛生促進活動と衣類配布を行っていました。
ザータリキャンプは、シリア危機が始まった後2012年の7月に開設されました。ヨルダン国内、シリアとの国境から13kmのところにあります。ザータリ村に開設されたため、ザータリキャンプと名づけられました。キャンプの広さは6 km2に及びます。
キャンプ開設当初は、シリアの人びとは、安全な地を求め、荷物を何も持たずに自分たちの地を離れることを余儀なくされていました。彼らはヨルダンとの国境へと辿り着つくと、ヨルダン軍のサポートを受けてザータリキャンプにやって来ました。
日々、想定以上の大量の難民が次々とやってきて、NGOの支援が間に合わず、難民は不満を募らせていました。一方でNGO職員もまた、難民の受け入れから彼らが尊厳を持って生活できるようになるまで、多くの課題に直面してきました。
キャンプへの入居に際しては、到着後に各世帯単位で(1世帯平均5人)、キャンプの入り口に設けられたUNHCRの登録所にて登録を行います。その後、テントとマットレスを受け取り、コミュニティ動員スタッフによって、割り当てられた場所へと案内されます。毎日水と食料が配布されなければいけませんし、食料以外の生活必需品も必要です。また、医療サービス、高齢者・障がい者・新生児に対する公共サービスも確保されなければいけません。
キャンプへやってくる難民の数は、平均すると毎日100~200人でしたが、日によってはその数が3000人に昇ることもありました。その状況では、NGOが理想とする支援を実施することの難しさが容易に想像できると思います。
私は、シリア難民がザータリキャンプにやってきて定住するまでに、私たちのような人道支援団体が直面した困難や、何もなかったこの地が街のように変化を遂げたこの5年の間に起こった、キャンプ内の様々な進歩を多くの人に知ってほしいと思っています。
私は、難民が尊厳をもって生きられるよう尽力し、直面する課題に対応してきた全ての人道支援スタッフに感謝したいと思います。
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2017年9月現在、約8万人のシリア難民がザータリ難民キャンプで生活しています。現在、キャンプでは上下水道インフラの整備が進められています。この水道網の整備は、現在の給水車による給水に代わって、難民の方々にとって長期的に生活環境の改善につながるものです。
しかし、このインフラ工事は、砂埃や掘られた溝、土などにより、キャンプ内に不衛生な環境をも生み出しています。
私の名前はアマル、ザータリキャンプで衛生促進活動の担当として働いています。今回は、衛生促進活動について紹介したいと思います。
衛生促進活動の目的は、人口密度が高く、工事によって日々の水衛生活動に影響がでているザータリキャンプで、難民の方々に衛生知識を普及し、感染性の病気を予防または減少させることにあります。
この活動は、給水や衛生設備整備などと並行して行うことで、改善された安全な水や衛生設備へのアクセスとの相乗効果が期待されます。他の団体とともにキャンプの全ての区画で実施され、JENは3、4、5区画を担当しています。
シリア人コミュニティの衛生プロモーター(以下CHP)は衛生メッセージを広めるのに重要な役割を果たしています。彼らはお金を受け取ることなく、ボランティアとしてコミュニティに貢献しています。
CHPはメッセージに関するトレーニングを受けたのち近隣の人びとに対してグループセッションで衛生メッセージを伝えてます。自分たちの担当する地域で衛生メッセージを伝えることが彼らの役目です。
現在、私はJENの担当区域でCHPだけで衛生メッセージを伝えることができるよう、CHPの人数を増やそうとしています。しかし、募集、研修、メンバーの維持など、様々な課題があります。
募集の段階では、多くの難民が活動することに意欲を示しますが、ボランティアとして活動を継続できる人はわずかです。
また、宗教上、ボランティアは良い行いとみなされていますが、一部の女性は家族から他の難民と交流することを許されず、活動に参加することが出来ないなど参加への障害もあります。
長くこの活動に参加している人の中でも、経済的に困窮している人は、給料が払われる仕事が見つかると活動をやめてしまいます。
サルマさんは活発に活動をしているCHPの一人で、夫と二人の息子と暮らしています。彼女は2年間CHPとして活動しています。JENの活動に参加する以前、彼女は近所の人たちが間違った衛生行動を行っているのを見て、衛生促進活動が必要であると感じていました。
衛生促進活動の研修や活動に参加することで、たくさんの新しい友人ができ、自信を持つこともでき、知識も向上したと言っています。
【女性のCHPが自身の住居で衛生促進セッションを行っている様子】
【コミュニティセンターでの男性CHPとのミーティング】
新しいボランティアに衛生研修を行うことは時間と労力を必要とするため、やめていくボランティアの問題は深刻です。CHPと参加者のモチベーションを保つために、CHPの無料の奉仕への見返りと、参加者の動機の位置づけのためには衛生用品を配布することがあります。
一方でしかし、CHPメンバーと参加者が毎回渡せるわけではない衛生用品の配布物に期待してしまうと、渡す物がない時に活動の継続が難しくなります。
最近、私たちはCHPのモチベーションを高めるために、通常のグループセッションに代わってメッセージを発信する他の方法を模索しています。
例えば、あるCHPは、大人に比べて時間もあり、行動変容が早い子どもたちに教えることが、コミュニティにプラスの変化を与えるということに気が付きました。活動を辞めようとしたCHPのうちの何人かは子どもたちへの促進活動に参加し活動を継続することを決心しました。
この新しい試みが課題の解決策となり、また、多くのCHPが私たちとともに長い間活動してくれることを願っています。
私は難民の方の緊急支援や、NGOの仕事に深く携わる機会を得ることができるJENでの仕事を誇りに思っています。また、これまでのJENでの仕事の経験は私自身の知識や技術の向上にもつながっています。
チームのみんなと協力しながら、人びとの衛生に対する意識の向上や衛生行動の改善を試み、私たちが担当する3つの区域が一番清潔な区域としてキャンプのなかでよい見本になればと願っています。
アマル・アブオウン
衛生プロモーター
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8万人のシリア難民が避難生活を続ける「ザータリ難民キャンプ」を、この360度の映像で、訪れてみませんか?スマートフォンを見たい方向へ動かしたり、パソコンでマウスを操作することで全方向をご覧いただけます。場面が変わりますので、ぜひ最後までご覧ください。