2017年9月現在、約8万人のシリア難民がザータリ難民キャンプで生活しています。現在、キャンプでは上下水道インフラの整備が進められています。この水道網の整備は、現在の給水車による給水に代わって、難民の方々にとって長期的に生活環境の改善につながるものです。
しかし、このインフラ工事は、砂埃や掘られた溝、土などにより、キャンプ内に不衛生な環境をも生み出しています。
私の名前はアマル、ザータリキャンプで衛生促進活動の担当として働いています。今回は、衛生促進活動について紹介したいと思います。
衛生促進活動の目的は、人口密度が高く、工事によって日々の水衛生活動に影響がでているザータリキャンプで、難民の方々に衛生知識を普及し、感染性の病気を予防または減少させることにあります。
この活動は、給水や衛生設備整備などと並行して行うことで、改善された安全な水や衛生設備へのアクセスとの相乗効果が期待されます。他の団体とともにキャンプの全ての区画で実施され、JENは3、4、5区画を担当しています。
シリア人コミュニティの衛生プロモーター(以下CHP)は衛生メッセージを広めるのに重要な役割を果たしています。彼らはお金を受け取ることなく、ボランティアとしてコミュニティに貢献しています。
CHPはメッセージに関するトレーニングを受けたのち近隣の人びとに対してグループセッションで衛生メッセージを伝えてます。自分たちの担当する地域で衛生メッセージを伝えることが彼らの役目です。
現在、私はJENの担当区域でCHPだけで衛生メッセージを伝えることができるよう、CHPの人数を増やそうとしています。しかし、募集、研修、メンバーの維持など、様々な課題があります。
募集の段階では、多くの難民が活動することに意欲を示しますが、ボランティアとして活動を継続できる人はわずかです。
また、宗教上、ボランティアは良い行いとみなされていますが、一部の女性は家族から他の難民と交流することを許されず、活動に参加することが出来ないなど参加への障害もあります。
長くこの活動に参加している人の中でも、経済的に困窮している人は、給料が払われる仕事が見つかると活動をやめてしまいます。
サルマさんは活発に活動をしているCHPの一人で、夫と二人の息子と暮らしています。彼女は2年間CHPとして活動しています。JENの活動に参加する以前、彼女は近所の人たちが間違った衛生行動を行っているのを見て、衛生促進活動が必要であると感じていました。
衛生促進活動の研修や活動に参加することで、たくさんの新しい友人ができ、自信を持つこともでき、知識も向上したと言っています。
【女性のCHPが自身の住居で衛生促進セッションを行っている様子】
【コミュニティセンターでの男性CHPとのミーティング】
新しいボランティアに衛生研修を行うことは時間と労力を必要とするため、やめていくボランティアの問題は深刻です。CHPと参加者のモチベーションを保つために、CHPの無料の奉仕への見返りと、参加者の動機の位置づけのためには衛生用品を配布することがあります。
一方でしかし、CHPメンバーと参加者が毎回渡せるわけではない衛生用品の配布物に期待してしまうと、渡す物がない時に活動の継続が難しくなります。
最近、私たちはCHPのモチベーションを高めるために、通常のグループセッションに代わってメッセージを発信する他の方法を模索しています。
例えば、あるCHPは、大人に比べて時間もあり、行動変容が早い子どもたちに教えることが、コミュニティにプラスの変化を与えるということに気が付きました。活動を辞めようとしたCHPのうちの何人かは子どもたちへの促進活動に参加し活動を継続することを決心しました。
この新しい試みが課題の解決策となり、また、多くのCHPが私たちとともに長い間活動してくれることを願っています。
私は難民の方の緊急支援や、NGOの仕事に深く携わる機会を得ることができるJENでの仕事を誇りに思っています。また、これまでのJENでの仕事の経験は私自身の知識や技術の向上にもつながっています。
チームのみんなと協力しながら、人びとの衛生に対する意識の向上や衛生行動の改善を試み、私たちが担当する3つの区域が一番清潔な区域としてキャンプのなかでよい見本になればと願っています。
アマル・アブオウン
衛生プロモーター
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8万人のシリア難民が避難生活を続ける「ザータリ難民キャンプ」を、この360度の映像で、訪れてみませんか?スマートフォンを見たい方向へ動かしたり、パソコンでマウスを操作することで全方向をご覧いただけます。場面が変わりますので、ぜひ最後までご覧ください。
8月も半ばにさしかかりましたが、ザータリキャンプでは相変わらず40℃近い暑さが続いています。
JENは、今年からザータリキャンプ内の最脆弱世帯に焦点をあてた、生活向上支援に着手しています。
ザータリキャンプでは、家族6人に対して3メートル×5メートルのコンテナ(キャンプ内では「キャラバン」と呼ばれています)が一つ提供されています。
それだけでは、生活をするには狭すぎるため、多くの家庭では、キャラバンの外にトタン板で屋根や壁を作り、そこにキッチンやトイレ等のスペースを作ることで、居住空間を広げて生活しています。
ザータリキャンプは荒野の上に作られたキャンプで、石などが多く平らではないため、多くの家庭では、その延長した空間に、コンクリートを敷いています。
しかし、車いす生活の方がいる世帯、介護が必要なお年よりが複数いる世帯、子どもがたくさんいる母子世帯等の中には、働いて現金収入を得ることが難しい家族も多く、平らではない土の床のままで、不便な生活を続けている家族が見受けられました。
そこでJENでは、8世帯にコンクリートの床を作り、生活が少しでも良くなるようにお手伝いをしました。
ここからは作業の様子を写真にてご覧ください。
【トタン板に囲まれた家の中、毛布の下はこのように土の床があるだけです】
JENでは今後も、キャンプ内の最脆弱世帯に寄り添い、彼らのニーズに合わせた支援を続けていきます。
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ザータリキャンプでは、40℃を超す日々が続いています。ただでさえ少ない水の量がさらに限定される季節です。
そんな中、JENでは、節水型ガーデンプロジェクトを進めています。このプロジェクトの一番の特徴は、1日に2リットルしか要さない貯水機能付き苗床を利用するところです。この苗床を住民に配布し、花やハーブを育ててもらい、生活のよりどころにしてもらえれば、と考えています。
小さいスペースでも植物を育てられる、ウィッキング・ベッドの作り方を簡単にご紹介したいと思います。
【2. このコンテナの底に水を流し入れるパイプを装置します。このパイプから水がしみ出るように小さい穴をあけておきます】
7. 出来上がったら、水が十分に苗床に染み渡るように、約200リットルの水を少しずつ流し入れていきます。その後は、水がパイプを通り、土を介して下から上がっていく仕組みを利用し、毎日2リットルの水を流し入れ、植物を育てていきます。
このウィッキング・ベッドは住民が水の使用量を気にせず、好きな植物を育てられる環境が提供できます。
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この支援速報を執筆中、ヨルダンの公立学校は年に2回実施される「タウジヒ」という全国統一大学入試の試験期間でした。タウジヒは2週間程続き、期間中に試験会場の学校で建物の建設や修復工事をすることは出来ないため、直近で支援事業を行った学校からの工事に関する意見に目を通しています。
現場からの意見は、事業実施後にJENエンジニアチームとは別のチームが学校を聞き取り調査訪問する際に校長先生にアンケート用紙を渡して記入をお願いしています。これによって、学校とJENエンジニアや工事を施工する建設会社とのコミュニケーション、建設現場での事故発生の有無、工事の質や事業全体の懸念等について情報を得ることが出来ます。
【JENエンジニアチーム:左からレイスさん, モハンマドさん, オサマさん, マイさん】
この意見書では、エンジニアが認識していなかった学校側の懸念や苦情、また事実とは異なるような内容も書いてあります。まずは全てのコメントに目を通し、内容を精査します。必要に応じて後日学校を再訪問し、現場で確認をします。過失・行き違いがあれば対策を講じ、発生防止に努めます。
JENでは建設・修復工事開始前に、学校側に対して担当エンジニアが工事内容を説明していますが、学校の意見から更なる工夫の必要性が見えてきます。
工事で技術的な問題が発生した場合、JENが設けている工事後6か月の保証期間中に修復をします。実際は、それ以外の問題の割合が多く、解決が非常に厄介です。
特に、支援を受けたヨルダンの公立学校が整備された施設を支援後に自力で維持管理し、故意による破壊行為を防止することが重要です。生徒による施設の破壊行為はヨルダンの公立学校では顕著で、ほぼ全ての援助関係者が共通して抱えている問題です。
問題解決を図って教員の士気を高める維持管理研修を考案したり、清掃員に対して清掃マニュアルを作ったりします。ヨルダンの子どもたちは各家庭ではトイレや洗面所をきちんと使っていますが、一部の生徒の公共施設の使用マナーは家庭とはかなり異なります。支援側の単独解決は、ほぼ限界に来ています。
学校は、子どもが故意に学校施設の一部を破損すると、学校が対応をするよりも「子どもが施設を壊す」という理由を掲げ、支援機関に定期的メンテナンスを要請してくる傾向があります。
学校施設を新たに整備した直後でさえ、生徒の意図的な破壊行為の防止がむずかしく、清掃員がいても施設の維持・管理がされずに使用不可能な状態になってしまった学校施設がたくさんあります。
ヨルダンの公立学校では、シリア難民危機の影響で学校施設が不足しているため、JENを含めた援助機関は学校施設の増築や新築に焦点を当てて支援をしています。ただその一方で、自助努力で施設維持・管理がされないために増築や新築された施設を含む既存の施設の劣化が加速しています。
JENを含め援助機関側は、支援の効果とその後の持続性を高めるため、一刻も早く連携して教育省に協力を求め、学校側の自助努力で施設維持・管理を実践させていく方法を考えて実行に移す必要に迫られています。
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