シリア難民支援速報

The Road ×クーリエ・ジャポン|先の見えない「貧困」に立ち向かうシリア難民の少女たち

2017.09.15

 cj_logo_blue_100px [ 本連載は、クーリエ・ジャポンとの連動掲載です。 ]
ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

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PHOTO: RAND AL-HAIRI

約8万人のシリア難民が避難生活を送るザータリ難民キャンプでは、生活のため、家族のために多くの幼い少女が働きに出ている。「ザ・ロード」の記者が少女たちに取材し、過酷な労働の実情や心境を語ってもらった。

貧困に立ち向かう少女たち
Text by Mohamed Al-Ruba’ee

照りつける太陽の下、16歳のファティマはトマトの収穫作業をしている。7ヨルダン・ディナール(約1000円、以下JD)ほどの報酬を苦しい家計の足しにするためだ。シリア難民のファティマは家族と共に、ヨルダンのザータリ難民キャンプに暮らしている。

ファティマは「ザ・ロード」の取材に対し次のように語った。

「この農作業はかなりの重労働ですが、男性だけでなく、女性や子どもも働いています。私は学校が夏休みの間、家族をできるだけ助けたくてこの仕事を始めました。父はずいぶん前に亡くなり、私たちを助けてくれる人は誰もいません」

仕事の日、ファティマはいつも4時半に起きて、作業着に着替える。日差しは痛いほどに強いので、顔や手はすべて布で覆い、目だけを出すようにしている。キャンプ内にある自宅を出ると長時間歩いて、作業場に向かう車に乗る。

午後2時頃に作業は終了。賃金をもらって、帰路につく。金額は働いた時間によって変わるが、自分が働いて稼いだ金を家に持ち帰るときが、一番幸せだとファティマは言う。

「お金があれば、必要なものを兄弟に買ってあげられますから。仕事から戻って少し休んだら、家族や友だちと過ごすいつもの生活に戻ります。いつか看護を学ぶことが、私の夢です」

ファティマと同様に、農作業で家族を支える10年生(中学の最終学年)のサラは言う。

「農作業が終わった後にお金を受け取ると、疲れが一瞬で吹き飛びます。仕事はもちろん大変ですが、努力の結果お金がもらえるのは嬉しいことでもあります。頑張ることは好きですし、それによって得るものを想像すれば、過酷な労働も楽しめるんです」

サラは朝5時に起きて作業場に向かい、着いたらすぐに収穫作業を始める。9時半を過ぎると耐えられないような暑さになるが、それでも黙々と働き続ける。家族に7JDを持ち帰るために。

「私が働くのは、家族にお金が必要だから。生活は貧しく最低限必要なものも手に入らない状態です」

夏休みが終わればサラは学校に戻り、卒業目指して再び勉学に励む。彼女の夢は、いつかジャーナリストになることだ。


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華やかな婚礼の日
Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

The Road ×クーリエ・ジャポンの記事はこちらからもご覧いただけます。
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キャンプの動物たち

2017.09.07

ザータリ難民キャンプを運営管理しているのは、人間だけとは限りません。

例えば、こちらの猫さんは、毎朝、JENスタッフを迎え、仕事の始まりを知らせてくれます。

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例えば、こちらの犬さんは、時には休暇も必要だよ、と思い出させてくれます。

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例えば、こちらのロバさんは、人間だけでは生活できないと、教えてくれます。

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彼らは、時にはシリア難民の方々や支援スタッフの癒しに、時にはキャンプにいる誰よりも仕事する働き者に。
このようにして、私たちはキャンプにいる動物たちから元気づけられます。

 

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住環境の改善に向けて

2017.08.24

8月も半ばにさしかかりましたが、ザータリキャンプでは相変わらず40℃近い暑さが続いています。

JENは、今年からザータリキャンプ内の最脆弱世帯に焦点をあてた、生活向上支援に着手しています。

ザータリキャンプでは、家族6人に対して3メートル×5メートルのコンテナ(キャンプ内では「キャラバン」と呼ばれています)が一つ提供されています。

それだけでは、生活をするには狭すぎるため、多くの家庭では、キャラバンの外にトタン板で屋根や壁を作り、そこにキッチンやトイレ等のスペースを作ることで、居住空間を広げて生活しています。

ザータリキャンプは荒野の上に作られたキャンプで、石などが多く平らではないため、多くの家庭では、その延長した空間に、コンクリートを敷いています。

しかし、車いす生活の方がいる世帯、介護が必要なお年よりが複数いる世帯、子どもがたくさんいる母子世帯等の中には、働いて現金収入を得ることが難しい家族も多く、平らではない土の床のままで、不便な生活を続けている家族が見受けられました。

そこでJENでは、8世帯にコンクリートの床を作り、生活が少しでも良くなるようにお手伝いをしました。

ここからは作業の様子を写真にてご覧ください。

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【意気揚々と材料を運ぶJENスタッフ】

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【トタン板に囲まれた家の中、毛布の下はこのように土の床があるだけです】

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【セメントを混ぜています】

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【土の床の上にコンクリートを均等に素早く広げていき】

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【1日がかりで完成しました!】

JENでは今後も、キャンプ内の最脆弱世帯に寄り添い、彼らのニーズに合わせた支援を続けていきます。

 

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The Road ×クーリエ・ジャポン|激論! シリア難民の「引きこもり問題」を本気で考えてみた

2017.08.15

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ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

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PHOTO: ALVARO FUENTE / NURPHOTO / GETTY IMAGES

ザータリ難民キャンプでも仕事や学校に行かず半年以上自宅にいる15~39歳の「引きこもり」の人の増加という問題が起きている。問題の根本を探るため、「ザ・ロード」の記者が関係者に幅広く取材した。

動画シリーズでは、キャンプ内のサーカス・スクールに通う子どもたちを紹介。「いつか雲に届くほど高く飛びたい」──宙返りやバク転などの技に没頭するうちに、彼らの夢は広がっていく。
ザ・ロードの詳細はこちらから

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シリア難民の「引きこもり問題」を本気で考えてみた
Text by Ahmed Ismail Al-Salamat and Ahmad Mohmed Al-Salamat


「何もせず家にいると、自分がゆっくりと溶けていくロウソクになったように感じます」

こう語るのは、ザータリ難民キャンプに暮らすシリア難民カラフ・ムハンマド(25)である。

ザータリの若者の多くが、家族に養われている。妻子の収入に頼っている場合もある。彼らは仕事を探す努力をしないまま、若くして結婚し、「仕事がないのは社会のせいだ」と自分を正当化しているのだ。

支援団体「IMC : International Medical Corps」で「ライフ・スキル」研修を担当するサナ・アルカセムによれば、キャンプ内の若者の93%が、仕事もなく、キャンプ内の支援団体が提供する職業訓練コースへも参加せず、ただ家で時間をつぶす毎日を過ごしているという。助けてもらうことばかり考え、家族を当てにする者も多い。これが怠惰や依存でなくてなんだろう。

「戦争によって引き起こされた困難な状況が、多くの若者たちから働く意欲を奪っています。自営で事業を始める可能性も限られていますし、こういう状況が続けば、精神を病むことさえあります」と、アルカセムは言う。

冒頭のカラフ・ムハンマドは、シリア内戦が始まった当時、大学生だった。ところが、内戦のせいで学業を中断せざるをえず、ザータリ難民キャンプで避難生活を送るようになった。3年前からぜんそくを患い、働くこともできない。

「自分がただ時間を無駄にしていることはわかっています。毎日、午前1時半に寝て、11時に起きています。朝食をとり、午後2時頃からは昼寝をします。兄弟は働いているので、私に小遣いをくれます。私もときには、食料配給の粉末ミルクを売って小銭を稼ぎます。自分がこんなに弱く、無力な存在だとは思いませんでした……」

同じく中学3年生で学業を中断したムハンマド(19)は、自分に合った仕事がないのだから、仕方ないのだと話す。

「ザータリに来てから、仕事がないまま結婚をしました。費用は父が出してくれました。ザータリに来て以来、私は何もしていません。父がキャンプ内の支援団体で働いているので、生活には困りません。毎日することと言えば、電話で友達と話すだけ。仕事や職業トレーニングには、いまのところ興味はありません」

引きこもりの人が増える背景には、ザータリキャンプの深刻な失業問題がある。シリアでは農業をしていたマフムード・アルハリーリ(40)は、2012年にザータリに来て以来、ずっと仕事を探している。だが、どこに行っても、待つように言われるばかりだ。

「毎日、友人や隣人との会話で暇をつぶしていますが、心は陰鬱で退屈です。生活は、食料配給と、湾岸諸国で出稼ぎをしている親戚の仕送りに頼っています。こんな生活が正しいはずありません。シリアに戻り、再び農業ができる日を待ち望んでいます」

子を持つ親世代はこの状況をどう見ているのだろうか?

ウム・ワエル(37)は、母親の立場からこんなメッセージを送る。

「確かに、仕事がないせいで若者たちは無力感に苛まれています。でも、何度失敗してもあきらめずに、挑戦し続けてほしい。若者は、シリアを再建する未来への希望なのだから」

アブ・カリッド(55)は、父親としてこう話す。

「キャンプ内で、何もせずに家に閉じこもっている若者は多い。彼らは若者らしい『魂』を失ってしまったようです。『人は自分の蒔いたものしか刈り取れない』という諺を彼らに思い出してほしい」

前出のアルカセムは、多くの若者が父親と別れて暮らしていることも、この問題の一因だと考えている。彼らにはロールモデルとなる男親が身近にいないのだ。アルカセムはすべての若者たちに対し、仕事を探し続けたり、支援団体の職業訓練コースに参加するようにと働きかけている。


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高く飛び上がると、雲に届いたような気持になる
Directed by Yaser Al-Hariri / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

00:30-00:54 ザータリキャンプには5年住んでいるよ。ここでは、勉強したり遊んだり。体を動かしたいからときどきサーカスにもいく。シリアにいた頃、兄弟姉妹やいとこたちと良く遊んだよ。その頃、僕は7歳だった。いまは10歳になった。
00:55-1:06 お父さんが「ザータリキャンプに行こう、そのほうがいい」と言ったんだ。シリアではたくさんの子どもたちが亡くなった。銃声が聞こえると、みんな泣き出した。
01:15-01:22 僕が喜んでいると、兄弟たちも喜ぶし、悲しんでいたら、みんなも悲しくなる。
01:28-01:38 サーカスに通って2年になる。最初は、いとこや友達のように宙返りがしたくて、サーカスに入った。
01:49-01:59 ザータリキャンプで、たくさん友達ができた。ほとんど、サーカスで出会った。はじめは、いとこしか知らなかったけど。
02:18-02:25 サーカスに行きはじめて、たくさん友達ができた。
02:39-02:50 難しくてできない技があると、友達が励ましてくれる。最初は簡単な技を練習して、成功したらどんどん難しい技に挑戦していく。一番難しい技ができるようになるまで。
02:54-03:00 僕にとって一番難しいのは連続技。でも成功すると、わくわく、嬉しくなる。
03:16-03:22 友達もいとこもみんなが好きな技だ。
03:35-03:45 サーカスに通う前は、いとこたちに後ろ宙返りや前宙返りを教わった。
03:56-04:01 最初は砂や土の上で練習した。
04:18-04:21 高く飛び上がると、まるで雲に届いたような気持ちになる。
04:33-04:50 将来は、お医者さんになりたい。どこにでも病気はたくさんあって、お医者さんは足りないから、僕は無料で患者さんを助けたい。お金を持っていない人もいるから。
04:52-04:59 僕の未来は真っ白だ。好きな色は緑だけれど、いまは白が好き。雲の色だから。

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ウィッキング・ベッド(貯水型苗床)の作り方

2017.08.03

ザータリキャンプでは、40℃を超す日々が続いています。ただでさえ少ない水の量がさらに限定される季節です。

そんな中、JENでは、節水型ガーデンプロジェクトを進めています。このプロジェクトの一番の特徴は、1日に2リットルしか要さない貯水機能付き苗床を利用するところです。この苗床を住民に配布し、花やハーブを育ててもらい、生活のよりどころにしてもらえれば、と考えています。

小さいスペースでも植物を育てられる、ウィッキング・ベッドの作り方を簡単にご紹介したいと思います。

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【写真上は、完成版です】

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【1. 1メートル×1メートルのコンテナを用意します】

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【2. このコンテナの底に水を流し入れるパイプを装置します。このパイプから水がしみ出るように小さい穴をあけておきます】

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【3. 砂利を敷きつめます】

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【4. 砂利の上に、赤土やコンポストを載せます】

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【5. 植物の苗を植えます】

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【6. 強い日差しを遮るためのネットを張ります】

7. 出来上がったら、水が十分に苗床に染み渡るように、約200リットルの水を少しずつ流し入れていきます。その後は、水がパイプを通り、土を介して下から上がっていく仕組みを利用し、毎日2リットルの水を流し入れ、植物を育てていきます。

このウィッキング・ベッドは住民が水の使用量を気にせず、好きな植物を育てられる環境が提供できます。

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