JENの対談企画 Mimosa Talk // #3 千田善さん×木山啓子| 004

ミモザトーク|2017.04.14

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(写真:左から/木山啓子、千田善さん)

#4 自分たちの力で、未来は選べる。

木山:教育を変えていきたいと思う一方で、道のりが長すぎて…、無力感を感じてしまう人も結構いるのかなって思います。それでも、希望をもって何か行動しないと、何も変わらないと思っています。

千田:そうですね。行動するって事で例えば、平和を構築していくには、謝って、態度を変えるってことを出来さえすれば、ガラッと状況が変わると思うんです。例えば、慰安婦の少女像。あそこに安倍首相が花を捧げて、「ごめんなさい」って言いさえすれば、少女像の問題は全部解決すると思う。どこに、どれだけ沢山の少女像が作られたとしても、そこに行って、「私も痛ましい気持ちです」っていう風に言えばいいんです。

木山:反発し合うだけではなく、被害者の苦しみに寄り添うという事ですね。

千田:撤去しろー、撤去しろーとかってやると、それの1万倍くらいのエネルギーがかかる。少女像の呪い解くのは、白馬の王子様のチュー…じゃなくて、日本政府の公式の花を捧げて「ごめんなさい」という手紙かなんかを送って解けるもんだと思うんです。そうすると、少女像は、日韓両国民の『平和の象徴像』になれる。

木山:公式の手紙による謝罪も日本政府は何度も行っている訳ですが、「何度も謝ったからもういいだろう」とか「ほかの人たちもみんなやっているからもういいだろう」ではなく、常に向き合い続ける、ということですね。世界各地で戦争が終結した後は、いわれなき被害を受けた人たちの物理的な復興だけではなく、正義や名誉の回復が必須ですよね。その為には双方が事実を丁寧に理解し、和解に向けて能動的に関わる必要があると思います。

木山:ところで、どうしてこれほど戦争をやりたがる人がたくさんいるのでしょうか。

千田:戦争やって儲かる人がいるからですよ。例えば、戦争で油田が2~3個火事になって使えない、というぐらいが一番原油高になって儲かりますよね。アメリカでは、戦闘機とかも何十兆円もの超巨大産業になっていますから。しかも、使わないと新しいのを買えないわけですよね。そうすると何年かに一度、廃棄するということが必要になる。

木山:「儲かること=いいこと」と思っている人がいかに多いかということですよね。そういう人たちの論理からも物事を考えないと、解決策を見つけられないと最近は感じています。

最後に、私たちが一歩を前に踏み出そうと思える、ヒントを頂けますか。

千田:そうですね。1つ言えるとすれば、長いこと生きてくると、あの時は絶対変わるはずがないと思っていたことっていうのが、どんどん変わってきたっていうことかな。

例えばね、米ソの冷戦っていうのがあった時代、誰も冷戦が終わるなんて発想が全然無かったんですよ。でも、それが終わった。今はまた違う時代が始まっているんだろうけれども、今の様々なことが、このままずっと続くっていうことは無いっていうことは断言できる。それがいい方向に行くのか、悪い方向に行くのか、っていうのは我々次第です。いろいろ悲観的なこともあるけれども、諦めないで、いろいろ好奇心を持ってやっていきたいな、という風に僕自身は思います。

木山:本当にそうですね。ものごとは単純ではないけれど、理解のために単純化しようとし過ぎると、見失う物がたくさんありますね。複雑な出来事を複雑なまま理解して、多様な人たちが協力し合いながらでないと、平和は取り戻せないと思います。その時にも、諦めず、楽観的に好奇心を持って歩んでいきたいと思います。いい話をどうもありがとうございました。

(敬称略)

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千田善|ちだ ぜん

1958年、岩手県生まれ。国際ジャーナリスト、通訳・翻訳者。立教大学講師。旧ユーゴスラビア・ベオグラード大学政治学部大学院中退。専門は国際政治、民族紛争、異文化コミュニケーションなど。紛争取材など、のべ10年近い旧ユーゴスラビア生活を経て帰国。外務省研修所、一橋大学、中央大学、放送大学などの講師を歴任。2006年からイビツァ・オシム元サッカー日本代表監督の専属通訳に。みずからもボールを蹴るサッカー歴40年、現在もシニアリーグの現役プレーヤー。『ワールドカップの世界史』(みすず書房)、『なぜ戦争は終わらないか』(同)、『ユーゴ紛争』(講談社現代新書)ほかの著作、翻訳がある。

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