JENの対談企画 Mimosa Talk // #2 品川女子学院校長 漆紫穂子さん×木山啓子| 001

ミモザトーク|2016.11.29

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(写真:左から/木山啓子、品川女子学院校長 漆紫穂子さん)

JEN代表理事の木山啓子が、様々な分野で活躍される方を訪ねて、対談をさせていただく新企画、「Mimosa Talk -Talk for Peace, Action with Smile-」。

「ミモザトーク」の由来…春になると、色鮮やかで、かわいらしい黄色の花を咲かせる、ミモザ。花言葉は「友情」です。JENのロゴマークにも少し似た、この花をこのコーナーの由来としました。これからの人道支援は、色々な分野のみなさんと垣根を超えて、「友情」をはぐくみながら、新しい時代をつくっていく時。そんな思いをこめて、スタートしたミモザトーク、第2回目。

今回のミモザ・トークは、品川女子学院校長の漆紫穂子さん。「28プロジェクト~28歳になったときに社会で活躍する女性の育成」など、ユニークで革新的な教育を推進し続けていらっしゃいます。『教育』のもつ力とその重要性をお聞きしました。

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「みんなの為にやってみようかな」という気持ちさえあれば、リーダーになれる。

木山:本日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、貴校は、起業体験の授業を行うなど、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を目指した教育を行う女子中高一貫校としても有名です。人道支援が必要とされる地域でも、読み書きそろばんといった基礎教育だけでなく、リーダーの育成がとても重要だと常々考えているので、今日はヒントを頂ければ、と思っております。

漆 :「リーダー」と聞くと、どうしても「特別な人がリーダーになるんだ」って、みんな考えがちだと思うんです。でも、本当はそうじゃない。一人ひとり違う能力を持っていますし、弱いからこそ手伝ってもらえたり、力が無くても「何かみんなの為にやってみようかな」という気持ちさえあれば、リーダーになれる。生徒たちにも、そこをまず、身に付けてもらいたいと思っています。

また、本校では行事などを子どもたち自身にチームで運営させています。「失敗する」、「諦めないでもう一度やる」という体験も大切ですし、もう一つの学びが、必ずチーム内で起きる「揉め事」なんです。皆で協力してみると意見が合わない子がいる、じゃあどうするか…、そうやって自分で体得していく。

木山:なるほど。具体的にお聞かせくださいますか。

漆 :本校では、起業体験プログラムというカリキュラムを採用しています。これは、高等部1・2年生が取り組む学習プログラムで、5カ月の間、クラスごとに商品開発を通した「起業」を実際に行います。出来上がった商品は、秋の文化祭で販売する事が最終目標です。苦節十数年になりますが、今ではNPOモデルのものや、BtoBtoCの様なモデルまで、様々なパターンがでてきています。中には、このプログラムが終わって、在学中に自分で起業する子もいます。

木山:そのプログラム、きっと色々なストーリーが生まれるんでしょうね。

漆 :色々毎回ありますね。例えば、学校名が入った文房具を販売する事にしたクラスの話なんですけどね。ネットで文具を注文して入金もしたその直後、その会社が倒産しちゃって!連絡もとれなくなって。大騒ぎですよ。私自身も知らない分野でしたし、文具店を経営している友人にアドバイスをもらったりして…。最終的には、何とか解決する事ができて販売できて、紆余曲折ありながらも2日間の文化祭の中で、1日で完売したんですよ。

P1130192木山:すばらしい!

漆 :文化祭の1日目の終りに「色々あったけど完売して、よかったね」と、見に行ったらまた揉めていて、泣いているんですよ。どうしたのかと聞いたら、社長役の子が、「2日目が機会損失になるから、名入れでない同じ商品を新たに仕入れて売ったほうが良い」と言う一方で、他の子が「ここまで苦労して、せっかく黒字になったのに、また赤になるのは嫌だ」って対立していたんです。

木山:そんなとき、漆さんはどんなアドバイスをするのですか?

漆 :「やってみないと、どちらが正しいかは分からない。だけど、私が一だけつアドバイスするとしたら思った事は今、言った方がいいよ」と、それだけ言いました。そうしたら、いつもはおとなしい子の「そもそも、これ何のためにやっているんだっけ?」という一言で、当初の目的を再確認する事ができたようです。結果的には業態を変ることになり、子どもたちに任せてその場を去りました。こんな感じに、揉め事は常に起きているんです。

木山:そうやって、揉め事を解決する経験をすると、大きく成長するでしょうね。そして、多様性の教育として、ものすごくいいですね。

漆 :同感です。同じ学校を選んで通っていても、やっぱり考え方は人それぞれ違うじゃないですか。普段何もない所だと、別に対立は生まれませんよね。でも、同じ目的、限られた時間の中で、プロジェクトを行うことになったら、譲れない事がでてきて、必ずぶつかるんです。そういう「場」を設定するのが、私たちのやり方です。

漆 紫穂子 | うるし しほこ
品川女子学院6代目校長。早稲田大学国語国文学専攻科修了。2006年より現職。教育再生実行会議委員(内閣官房)。同校は平成​26年度よりスーパーグローバルハイスクール指定校。「28歳になったときに社会で活躍する女性の育成」を教育の柱に社会と子どもを繋ぐ学校作りを実践している。著書『伸びる子の育て方』(ダイヤモンド社)など。

対談はまだまだ続きます。次回をお楽しみに。

(敬称略)

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