シリア難民支援速報

The Road ×クーリエ・ジャポン|拳を磨き壁を破っていく「難民テコンドー一家」

2017.02.17

 cj_logo_blue_100px [ 本連載は、クーリエ・ジャポンとの連動掲載です。 ]
ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

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荒野に建てられた仮設住宅に暮らす難民キャンプの生活では、さまざまな不自由を強いられる。だが、支援団体などからのサポートを通してこれまでの古い慣習を打ち破り、自分たちの将来を切り拓こうとする女性たちの姿も見られるようになった。
大好評の動画シリーズでは、ザータリで有名な「テコンドー一家」を紹介。首都アンマンで開催された2つの大会を制覇するなど、彼らの快進撃はザータリの住人に明るいニュースをもたらしている。
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夢の前に立ちはだかる「壁」を壊そうとする女性たち
Text by Sundus Al-Hariri

ザータリ・キャンプで暮らすシリア人女性は、男たちが造り出した「禁止」という名の壁に常に取り囲まれている。そして、往々にしてその壁が、彼女たちの夢の障害になっている。

中東地域には伝統的に、男性主導で決定すべきことが確かにある。だが、自分の将来に関わることは女性たち自身が選択し、決断するべきだ。

それにもかかわらず、ザータリでは多くの女性たちが、父親、夫、兄弟などの男性家族に教育や職業訓練を受けることを禁止されてしまう。彼女たちの豊かな未来の可能性が、男たちによって狭められてしまうのだ。

20170217_JD_the 2nd photo2PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

「THE ROAD」編集部はこの問題について、さまざまな年代の男女に取材をした。1人目は、匿名希望の20代女性。彼女は男女混合だからという理由でUN WOMANなどがおこなう教育・職業訓練コースへの参加を家族に禁止された。

「男性と一緒というだけで、コースへの参加を禁止する父親もいます。我々の慣習では、男女が同じ部屋にいることが許されていないため、娘が心配なのです」

14歳のヌールも、父親にコースへの参加を禁止された。

「私は将来のために英語やコンピュータのコースに参加したいんです。けれども、たいてい父から反対されます。父は、コースに通う道中で私が何かトラブルに巻き込まれるのを心配しているのです。でも残念ながら父の心配のせいで、私の未来は閉ざされています」

もちろんなかには、家族の許可を得てコースに参加している女性もいる。もう1人の匿名の20代女性は、それに疑問を感じているようだ。

「ザータリの女性全員が、家族にコースへの参加を禁じられているわけではありませんが、よく聞く話ではあります。親が娘を信頼して、私たち自身が進むべき道を決められたらいいのですが」

実際に教育・職業訓練コースに参加した、もう1人のヌール(40)は、コースの意義を次のように称える。

「私は参加者のなかで最年長だったので、当初は気後れすることもありました。でも、このコースでたくさんのことを学んだおかげで、仕事に就くことができました。誰かにコースへの参加を邪魔されなかったことを神に感謝していますし、他の女性にもぜひ私のように学んでほしいと思います。

私は、自分のことはすべて自分で決めます。それに、ザータリにも男女共学の大学に進学した女性は大勢います。大学と教育・職業訓練コースの間に、どんな違いがあるというのでしょうか?」

20170217_JD_the 3rd photo3PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

.では、男性側はこれについてどう思っているのだろうか?

2人の娘を持つアブ・ハサン(40)は、反対派だ。

「娘を教育・職業訓練コースには参加させたくない。どうせ役に立たないだろうし、男女混合のコースで娘たちに問題が起きたら困る。だから許可しないんだ」

だが、すべての男性が女性に教育の機会を与えることに否定的なわけではない。アブ・シャヘル(50)は言う。

「父親は子供の幸せを祈っているものだ。しかし、ときに恐怖に囚われ、子供たちが進むべき道が見えなくなってしまう。

女性が教育・職業訓練コースに参加するのを男たちが禁止するのは、これまでの慣習のせいだ。だがこれからは若い世代の行く末を、皆がより広い視野で見るべきだ。シリアの女性たちは善悪の判断がつくから、何も心配はいらない。教育を受けることによって、彼女たちの未来は大きく拓けるだろう。

男女が同席することを恐れるあまり、彼らの教育のチャンスを奪うべきではない」

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「テコンドー」は子供たちの希望
Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

0:31 私たちは、8人家族だ。私には妻と6人の子供がいる。娘が3人、息子が3人。そのうち4人がテコンドーを習っているが、他の2人は小さいので、まだ始めていない。
0:51 子供たちは、すぐにテコンドーが大好きになった。私が道場に行かなくても、「練習をしに行きたい」とおねだりされるほどだ。
1:17 私たちは週に4日練習する。テコンドーの技が上達するためには忍耐が必要だから、それを幼い頃から子供たちに教えている。
子供がテコンドーの教えを守れるようになったら、その子供はいつどんなときでも、リーダーシップをとれる。人生の見方も変わり、生き方も変わる。
2:15 女の子が足を蹴り上げる武道を習うなんて、許されないと考える人たちもいる。だが、スポーツにおいて許されないことなんてあるのだろうか。女の子であっても、テコンドーを続けていいはずだ。将来は、オリンピックの金メダリストになり、自分とシリアに誇りをもたらせばよい。
テコンドーは彼女たちの未来であり、希望なのだ。彼女たちは、他の女の子にも良い影響を与え、そして人々の固定観念を覆すだろう。
そんな希望に溢れた子供たちを、なぜ止める必要があるのか。好きなだけテコンドーをさせればいい。
3:20 ザータリ・キャンプで開催されたテコンドー選手権には家族で出場した。ヨルダンの首都アンマンで技を披露したこともある。子供たちは、たくさんのメダルを持ち帰ってきた。
3:50 ここ(ザータリ)には、美しい風景も住む場所もない。老人たちは、かつてのシリアの美しい景色を知っている。だが、いまは(紛争で)破壊された姿しか見ることができない。
それは子供たちにとって大問題であり、悲しいことでもある。しかしそんな状況でも、棘だらけの大地にも花は咲くのだ。
4:34 最初は、イブラヒム、ヤマーマ、アスマ、3人の子供と始めたテコンドー。
4:40 テコンドーを教えても、私自身にはあまりメリットはない。だが、キャンプの子供たちにとって、これは大きな希望だ。
4:54 希望は子供たちのためにある。私たち大人がしっかりと子供たちの希望に耳を傾け、叶える努力をしないと、子供たちは希望を失う。
それは、私たちが希望を失うことと一緒なのだ。
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The Road ×クーリエ・ジャポンの記事はこちらからもご覧いただけます。
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ガザ難民キャンプからザータリ難民キャンプへ

2017.02.16

若いエンジニア、ワエル・アブ・レヒエにとって、今ザータリ難民キャンプで経験していることは、ガザ難民キャンプで自身が経験してきたこととそれほど変わりません。

ワエルは、ガザ難民キャンプでの自身の経験を活かし、ザータリ難民キャンプでは、下水道網プロジェクト第一フェーズの、施設間の下水道管接続に係る建設工事を監督しています。

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【ベースキャンプのJENキャラバンで、一日の進捗を書き留めるワエル】

下水道網プロジェクトは、学校、病院、モスク等の水道網をつなげるため、JENおよびキャンプ内でシリア難民を支援している他団体によって2016年12月に始められました。これらの水道網工事は、コンクリート製分離タンクの提供、下水管の敷設、マンホールの設置等に関連する仕事も含みます。

WASHサービスの提供はJENの責任下にあり、ほとんどのNGOの事務所があるベースキャンプおよびザータリ難民キャンプ3・4・5区にある計58の機関・施設が水道網で結ばれることになります。

日々の通常業務は、まず3・4・5区を歩き回り、キャンプの敷地内を見渡し、前日の活動箇所をチェックするところから始まります。そして掘削と水道管敷設の工事計画を立て、同時に関連するオフィスワークも忘れないように行います。

今日は、キャンプの受付エリアにおけるコンクリート製タンクの設置とその接続工事を行いました。工事では重機を扱い、大きな分離タンクの上げ下ろしも伴うため、工事中は安全が第一です。

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【分離タンクが持ち上げられるのを見るJENスタッフ】

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【分離タンクと学校のトイレを繋げるパイプ接続工事】

ワエルは話します。
「ザータリ難民キャンプに来る前、私はガザ難民キャンプで難民として、契約者の元、下水道網の工事を行っていました。キャンプ住人に、自分のコミュニティにもっとも質の高い仕事を提供するというさらなる責任が加わり、そして私はそれをやり遂げました。」

ザータリ難民キャンプでは、キャッシュ・フォー・ワーク*を通してシリア難民にこのプロジェクトで働いてもらうという、ガザ難民キャンプで彼が経験したものと同じアプローチが取られています。難民を経済的に支援すると同時に、キャンプのインフラに関して難民自身の主体性と責任感を醸成します。

工事の過程ではいくつかのチェックが行われます。掘削孔の深さ、パイプの傾き、マンホールの場所・段切り・絶縁、水密試験。そして、工事の進捗に伴いその質と量を担保するため、すべての試験の記録と結果が毎日更新され、報告されます。

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【パイプの適切な傾きを保証するため、高さを測定】

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【写真上:マンホール下の受けを乾燥させる/写真下:マンホール内部の段切り】

ザータリ難民キャンプが街へと変遷していっている今、ワエルは今の仕事で成果を出しつつ、将来の新しいプロジェクトを探しています。

現在のプロジェクトは2017年2月末で終了予定であり、計103基のタンクが導入され、計2kmのパイプが敷設されます。下水道網第二フェーズの工事が3月から始まるため、第一フェーズを2月末までにすべて終了する必要がありますが、スケジューツはかなり厳しいです。

第二フェーズでは第一フェーズで導入されたすべてのタンクを下水処理場に繋げていきます。
ワエル・アブ・レヒエ
JENヨルダン エンジニア

 

*キャッシュ・フォー・ワーク、「労働対価による支援」は、被災者みずからが復旧・復興のために働き、対価が支払われることで復興を促す支援プログラムのことをいう。

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The Road ×クーリエ・ジャポン|「愛する母のために…」1日わずか2ドルの労働に耐える11歳

2017.01.23

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ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

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若者たちが未来を前向きに見据える一方で、難民キャンプでは児童労働が深刻な問題となっている。家族のために自分を犠牲にして、厳しい労働やいじめに耐える11歳の少年を描いた動画「生きるために」は、胸を刺すような映像美がいっそう悲しみを誘う。(ザ・ロードの詳細はこちらから

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2017年のシリア難民の願いは? 帰還を夢見る老人たち、復興を目指す若者たち
Interview by Yasser Al Hariri

ザータリ難民キャンプに暮らすシリア難民の2017年の願いは、世代によって違う。それはきっと紛争が始まってからの5年の間に、考え方や未来に対する希望が変化したからだ。
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PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

老人たちは、シリアに平和が戻ること、そして一刻も早く帰還できることを願っている。若者たちは、もっと現実的だ。彼らは、紛争によって壊滅的に破壊されたシリアをどう立て直すかを考えはじめている。

「ザ・ロード」のスタッフが新年を迎えるにあたり、何人かのシリア難民を取材し、2017年の願いを聞いた。

エルハム・アフマッド・アル・シュワムラ(45)──新年には、すべてのアラブ諸国に平和をもたらしてほしい。そして、故郷に戻りたい。もう離れて数年たつが、私がシリアを忘れることは、一生ないだろう。

オム・ジハッド(45)──私たちはまだ、シリアに戻るという希望を捨ててはいない。2017年はシリアが平和になることを願う。そして昔のように、住んでいた村の林道を歩き、木の下でゆったり座るような美しい日々を過ごしたい。

オム・ウィサム(36)──ザータリキャンプには数ヵ月しか、滞在するつもりはなかった。まさか2017年をこの地で迎えるとは、夢にも思わなかった。素晴らしい故郷シリアと、そこで過ごした日々を忘れることはできない。だからこそ私は辛抱強く、帰る日がくるのを待っている。早く愛する家族や親戚のもとに帰りたい。

モナマッド・サイフディン(9)──2017年は、シリアに帰って、僕たちが暮らしていた大好きな村に戻りたい。そこに住んでいる友だちに会って、一緒に遊んで、昔のように楽しい日々を過ごせたらどんなにいいかと思う。

オマール・アデル・ガズラン(18)──2017年は勉強を頑張る。そして、シリアに戻ったら仲間たちと一緒に国の復興に尽くしたい。

スンドゥス・ユーセフ・アル・ハリリ(19)──今年は中学校を卒業して、将来は、(ヨルダンの)アル・ヤルムーク大学でアラビア語か、通訳・翻訳を学びたい。そして、そのまま勉強を続けて、専門家になるのが夢。

ブシュラ・アフメッド・アル・ハリーリ(19)──今年は、タウジーヒ(全国一斉検定試験)でよい成績をとって、将来は大学で英文学を学びたい。それと、ザータリキャンプの支援団体のサービスがもっとよくなるよう、祈ってる。

アメラ・モハメッド・アル・ハリリ(58)──2017年は、みんなに幸せが、そしてイスラム教徒とアラブ諸国に平和が訪れ、すべての難民が母国に戻れますように。


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「シリアの代わりになる国など存在しない。だから戻るという希望を決して、捨てはしない」
Text by Hajer Al Kafri

シリアに帰りたいという希望を抱きながら、また1年が過ぎ、そして新しい1年が始まる。紛争が子どもたちを奪う前に、私たちが暮らしていた母国の大地を再び踏みたいと、常に願っている。この希望を失わないまま、生きていきたい。

ようこそ2017年。新年に期待することは多いが、どうか愛と喜びに満ちた平和な日々が続き、みんながシリアに戻れますように。

ここザータリキャンプでも、太陽が昇れば子どもたちは学校へ行き、私たちは仕事に行く。礼拝をし、伝統を次世代の子どもたちの心に刻んでいく。

難民キャンプに暮らしながらも勉学を続け、大学に通うシリア人も多い。明るい未来を描けるほどに、とても優秀な学生もいる。その優れた能力は、母国シリアのために役立ててほしい。私たちの心には、シリアの代わりとなる国は存在しない。

だから私たちは「シリアに戻る」という希望を決して捨てない。

ようこそ2017年。私たちはこの先に訪れる素晴らしい日々を夢見ている。いったい、何が起こるのだろうか? それは誰も知らない。強さと忍耐を示したシリア難民には、神の意志により美しい日々が待っていると信じよう。

そう信じながら、父親たちは勇気を持ち、母親たちは辛抱強く、子どもたちは勤勉に、人生を歩んでいこう。


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「生きるために」──1日わずか2ドルで働く11歳のムハンマド
Directed by IN TRANSIT TEAM / Project Director Omar Braika / Supervisor Cyril Cappai, Hada Sarhan

(以下は字幕の日本語訳)
0:01 JENは、国連機関や他のNGOとともに、ザータリ難民キャンプ設立当初から、子どもたちが労働の場を離れ、学校に通えるよう、支援活動を継続している。
0:07 手押し車が重すぎて、まっすぐ歩けないよ。
0:30 僕の名前は、ムハンマド・アドナン・アルジュルム。いま、11歳。
0:32 好きなことはサッカーとビー玉で遊ぶこと。
0:45 お祈りが終わったら、手押し車を持って仕事に出かけるんだ。

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PHOTO: COURTESY OF THE ROAD

1:00 毎日仕事が終わったら、お母さんに稼いだお金を渡すよ。
1:20 もらえるお金は大体1.25JD(約200円)とか0.75JD(約160円)とか、0.50JD(約80円)とか、それぐらい。
1:31 仕事をするのは、お母さんを助けたいから。
1:35 お母さんを喜ばせたいんだ。
1:53 僕の仕事では手押し車を使う。手押し車で荷物を運ぶんだ。
1:56 たとえば、マーケットで買い物した人の荷物とか、キャンプの入口まで荷物を運びたい人の手伝い。
3:10 お客が見つかると、他の男の子たちがきて「金をよこせ」って言うんだ。
3:20 お金を渡さないと、ぶたれる。
3:23 彼らは僕のお金で、タバコを買う。
3:27 男の子たちは、鉄の棒とかロープとかムチを持っている。
3:32 手押し車を壊したり、僕のことをぶったりする。
4:12 僕はお母さんと一緒にシリアから来た。
4:15 ここで生きるためにザータリに来た。
4:19 お父さんはシリアに残った。ここにいるのは、お母さんと兄弟と、僕。
4:26 もしお父さんが一緒にいたら、僕は働かずに、幸せだっただろうな。
4:56 ときどき、お母さんはキャンプの外でトマト農園の仕事をしたらって言う。
5:02 それなら、他の子たちにぶたれない。
5:15 僕は、先生になりたいんだ。
5:17 学校を1日だって休みたくない。
5:21 そして、ちゃんといまの学年を修了したい。
5:24 大きくなるまで学校に通って、先生になって、子どもたちを教えるんだ。
5:31 愛してる。
5:37 ザータリ難民キャンプでは5~17歳の子どもたちのうち、1,119人が労働に従事している(2016年国家児童労働局調べ)

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ザータリ難民キャンプでのリサイクリング・プロジェクト

2017.01.19

私の名前はモーメン・オマリです。ザータリ難民キャンプでリサイクリング・プロジェクトを担当しています。
リサイクルには様々な利点があり、私たちの活動では次のような効果を想定しています。限られた資源の有効活用、キャンプ内の清潔な住環境を維持するためのゴミの削減、そして男女共により広い年齢層の難民に対する新しい収入機会の創出です。

この活動は2015年夏に欧米系の国際協力NGOが、キャンプ内12区域のうちの1区域で試験的に開始し、2016年11月までに全ての区域で実施されるようになりました。JENはこの国際協力NGOと協力しながら3,4,5区でのリサイクル・プロジェクトを担当しています。

目的はガラス・金属・布・段ボールや紙などのゴミを減らすため、日常生活で発生するリサイクル可能なゴミを回収することです。これらの資源ゴミは各世帯から集められ、キャンプ内の居住区域から離れた場所にあるリサイクルセンターに送られ、そこで種類別に分けられます。

JENの担当区域では、24人のシリア人女性が動員係として、また18人のシリア人男性が資源ゴミを回収する係として働いています。彼らグループは、このリサイクリング・プロジェクトについて、またどのように人びとコミュニケーションを取り、メッセージを伝えるか等について研修を受けました。資源ゴミの分別はシリアの人びとにとって馴染みのないことなので、私たちはこのプロジェクトの重要性や、どんなゴミを集めればいいのかについてまず説明しました。
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【スタッフが人びとにプロジェクトについて説明します】

 

研修のあと、動員係たちはそれぞれの家庭への訪問を始めました。一方、資源回収グループは資源ゴミを集めるために各世帯を訪ねました。彼女たちの説明でこのプロジェクトの意味をよく理解した家庭は、資源ゴミを分けて取っておくことに協力してくれます。資源ゴミの分別をやりやすくするため、私たちは各家庭にゴミ箱を配りました。そしてこのプロジェクトがうまくいくよう、私はチームのプロジェクト進行状況をモニターし、チームメンバー間の調整を図りました。
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【各家庭にゴミ箱を配布】

 

動員係の女性たちは、このプロジェクトに対する理解が得られず、資源ゴミの回収に協力してもらえない家庭があったり、資源回収グループとの調整がうまくいかないなどの問題に直面しましたが、私はそのような場合にもアドバイスをし、一緒に解決にあたるようにしました。
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【女性住民たちとのグループセッション】

 

それでも解決しない場合は、私が直接その家を訪問しこのプロジェクトの目的について話し合い、彼らを説得すると同時に、そうしたやり方をチームメンバーに見てもらうようにしています。動員係の女性たちはこうした問題を一つずつ解決していくことで、コミュニケーション能力を少しずつ向上させています。
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【プロジェクトを人びとにどのように説明したらいいかについてのスタッフ間での話し合い】

 

 

私はこれまで5年間、JENをはじめいくつかの人道支援団体で支援活動に従事してきました。その経験を通して、困難な状況にいる難民とどのように向き合い、どう支援していくべきかを学びました。難民の人びとに役に立っていると感じるとき、自分のことを誇りに思い、さらにスキルを向上させたいという気持ちになります。私はさらにマネジメントスキルの向上を図りたいと思っています。

モーメン・オマリ
リサイクリング 事業担当

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試行錯誤のバザー開催

2016.12.01

11月中旬、JENが運営するザータリ難民キャンプのコミュニティセンターでバザーを開催しました。8月の支援速報でご紹介した、女性参加者を中心としたリサイクル・プロジェクトの3回目のバザー開催です。この催しは2016年5月以来となります。ここでは、絨毯、冬物服、子ども用のおもちゃ、家の装飾品など、古着を再利用し、半年かけて製作した手作りの商品を売って収入を得ることを主な目的としています。

当日は、リサイクル・プロジェクトの参加者が中心となり、JENスタッフのサポートを得ながらバザーの準備を行いました。バザー開催の約2週間前からのチラシの配布、口コミでの宣伝、関係支援団体へのメールでの情報共有などの効果もあり、最終的には90名以上のシリア難民を含む約100名が来場しました。

 

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【バザーの準備完了】

 

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【商品を吟味する来場者】

 

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【バザー商品の数々】

前回のバザー来場者は100名以上であったものの、来場のみで購入にまで至らない人が多かったため、今回はその反省を活かし、参加者たちの提案で、来場者層を考えた値段の設定、よりニーズに合わせた商品の製作や、より積極的にバザーの告知を行うなど、試行錯誤を繰り返しました。その努力の成果もあり、今回は前回の4倍近くの、100ヨルダン・ディナール(約15,500円)の収益となりました。

 

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【リサイクル絨毯を選ぶ支援団体スタッフ】

リサイクル・プロジェクトの大きな目標は、難民の女性たちに中古衣類を再利用したハンドメイドの手工芸品を作ってもらい、それを売ることで収入を得て、キャンプ生活の質向上につなげることです。難民キャンプでの生活は、収入を得る機会がとても限られています。このような状況の中、この活動を通じて小額ではあるものの、収入を得て1歩ずつ自立への道を歩み始めている難民女性たちをサポートすることは、JENスタッフにとっても大きな喜びとなっています。

次回のバザーは、今まで3回にわたり開催してきた4区から離れ、3区のJENコミュニティセンターにて開催しようと考えています。開催場所を変えることによって、今まで遠すぎて足を運ぶことのできなかった方にも来場してもらいたいからです。難民女性たちのさらなる創意工夫がみられることを楽しみに、JENは収入創出サポートを続けていきます。

 

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