シリア難民支援速報

とあるNGOワーカーのごく平凡な一日

2018.02.15

朝6時、窓の外がうっすら明るくなっている。アラームが鳴るが、スヌーズを2回押す。

6時20分、観念して起床。手早く身支度。ヨーグルトの朝食。20分後にはアパートを出て徒歩5分のJENアンマン事務所の駐車場へ。

6時45分、4人の国際スタッフの乗せたバンが、途中でヨルダン人スタッフを2人拾って北へ向かう。まぶしい朝日を浴びながら1時間半の道のり。車の中ではうとうと。

7時50分、ザータリ難民キャンプに到着。ゲートでヨルダン警察にIDカードを見せ、キャンプに入る。ベースキャンプ(国連やNGOの事務所がある地区)のプレハブ型のオフィスに荷物を置き、キャンプ内の難民さん経営の小さなコーヒースタンドにコーヒーを買いに行く。コーヒースタンドの前にJENのスタッフも何人か集まっている。「サバーハル・ヘール」「Good Morning」…次々にやってくるスタッフに挨拶をしながら、コーヒーを飲みつつベースキャンプのオフィスでメールチェック。

9時。国際スタッフ、ヨルダン人スタッフの同僚と調査票作りの打ち合わせ。今までやってきた活動のインパクトを調べ、次の活動を計画するための調査。

10時。別のヨルダン人スタッフと一緒に、他団体のオフィスを訪問。パートナーシップで実施している活動が今月末完了するので、そのための事前打ち合わせ。

11時。JENオフィスで、ヨルダン人スタッフと引き続き、打ち合わせ。

12時半。JENコミュニティセンターの工事を見に行く。このコミュニティセンターはテントだったが、5年もたってボロボロになったので、サンドイッチパネルやトタン板を利用した簡易建築に建て替え。

【改築中のJENコミュニティセンター】
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その後、徒歩でベースキャンプのオフィスに戻る。1週間前まではとても寒かったのに、ここ数日は、急に春らしく暖かくなって、仮設住居前に敷物をしいてコーヒーを飲んだり、椅子に座って日光浴をしているお年寄りも多い。通りかかると「トゥファッダリー(どうぞ、寄って行って)」と、みんな声をかけてくれる。

シャンゼリゼ通りを通ってみる。5年前のキャンプ開設後、早々に商店が立ち並び、「シャンゼリゼ」と呼ばれたこの通りは、じつは最近はもう寂れかけている。キャンプが拡大するにつれて、キャンプの中心地も変わり、今や「マーケットストリート」と呼ばれる別の通りの方が、人通りも品ぞろえもずっと賑わっている。「行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず」ふと、そんな一節が頭に浮かぶ。

【シャンゼリゼ通りの今】
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14時。今日はアンマンオフィスで業務している同僚から電話。ミーティングのため16時頃までにアンマンに戻る予定だったが、少し早く戻ってきてほしいらしい。車の手配を変更し、14時少し過ぎにキャンプを出る。

16時頃。アンマンオフィス到着。打ち合わせ。

18時。打ち合わせを終える。早く終われたら、同僚とヨガ教室に行ってみようと話していたが、遅くなったのでまた今度。徒歩でアパートに戻る。同僚と3人で暮らしているがきょうはそれぞれで夕食。食後のお茶を飲みながら、少しおしゃべりしてから、20時頃に自室に。つい、ベッドにもぐりこむが、今日中に返信しなければならないメールが2通。「そうだ、スタッフブログの原稿も書かなくちゃ」。


ヨルダンへの赴任

2018.02.01

はじめまして。突然ですが、今週からヨルダン事業担当プログラムオフィサーとして着任した宮原萌です。私にとって、初めてとなる海外事務所での勤務です。今回の支援速報では、ヨルダンへ赴任するまでの一部始終についてお話したいと思います。

出発までの準備は、いろんなものがありました。海外への引っ越しとなりますので、送る荷物の準備やパスポートの準備は想像しやすいかと思います。その他にも、住民票の変更、様々な機関への住所変更の届け出、携帯電話の解約、運転免許証の期間前更新など、事務手続きは思った以上に多かったです。ありとあらゆる予防接種を受けることは、時間的にも体力的にも大変で、すべてを接種し終えるまでにゆうにひと月を要しました。

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予防接種はA型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風、腸チフス。ダンボールは4箱をEMSで送りました。

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ヨルダン赴任前の最終日に東京本部で。出発前に共同代表理事の木山さんから応援の言葉をいただきました。

準備に追われていたらあっという間に出発日になりました。空路の移動は遅れもなく万事スムーズで、無事、ヨルダンの首都アンマンへ到着。到着した金曜日はヨルダンではイスラム教の礼拝日で、日本の土曜日のように週末のスタートでもあります。車でアンマン市内を走っていたら、あるモスクの近くを通りかかりました。正面に近づいていくと、大量の車が道の真ん中に駐車されていて、通行を完全に妨害していました。「モスクに礼拝に来るのはもちろんいいのだけど、道を塞いで通行車が通れなくなるのは困る!」という運転手さんのコメントが印象的でした。

これから本格的に業務の引き継ぎが始まります。気を引き締めて、そしてなるべく早く環境に慣れて、シリア難民とヨルダンの方々のための活動に尽力したいと思います。

 


The Road ×クーリエ・ジャポン|Vol.14 2018年、シリア難民たちが見る夢は?

2018.01.31
 cj_logo_blue_100px[ 本連載は、クーリエ・ジャポンとの連動掲載です。 ]
ヨルダンのザータリ難民キャンプで創刊された、“難民の難民による難民のための”月刊誌「THE ROAD(ザ・ロード)」。同誌から選りすぐった傑作記事や動画を毎月お届けする。

2018年、シリア難民たちが見る夢は

シリア危機が勃発してまもなく7年。ザータリ難民キャンプに暮らすシリア難民たちは、2018年の年明けにどんな夢を描いたのだろうか?

2018年、シリア難民たちの夢と願い

Text by Qasem Al-Shahmeh and Hajar Al-Kafri

ザータリ難民キャンプで避難生活を送るシリア難民たちは、「今年こそ離散生活を終えて祖国に戻り、家族や大切な人々と普通の暮らしができますように」と、新年を迎えるたびに祈る。ときに痛切に、そしてときに希望を胸に抱きながら。

病気がよくなりますように、仕事が見つかりますように

ザータリ難民キャンプの第12区にある、ラダ・バジボジの家族を訪ねた。石や砂だらけの小さな庭が、トタン板に囲まれているプレハブの一室、それが彼らの家だ。

ラダは、そこで妻と3人の子供たちと一緒に暮らしている。快適な家に改築するような余裕はない。また、子供のひとりはダウン症だが、充分な診療を受けさせることもできない。

ラダの2018年の願いは、子供の病気がよくなること、そして、仕事が見つかり家族に必要なものを手に入れることができるようになることだ。

大学で得た学びを祖国に持ち帰りたい

カセムは熱意に溢れる若者で、優秀な成績で高校を卒業した。いまは、私費でザルカ私立大学に通っている。学費はとても高いが、奨学金を得ることはできなかった。希望していたジャーナリズムやメディア専攻は特に高額だったので、あきらめざるを得なかった。

だが、カセムにも運が向いてきた。英語学科に通いはじめた彼の勤勉な学習態度が大学から認められ、学費の減免を得られたのだ。

カセムの新年の願いは、大学で優秀な成績を修め、ジャーナリストとしての仕事を見つけること。そして、勉学と仕事の両方から得た多くの知識や経験を、母国に持ち帰ることだ。

歌手になる「17年越しの夢」を叶えたい

32歳のアブ・バハルは、15歳のころから歌うことが好きだった。兄弟たちも彼の歌が大好きで、よく歌をねだられたという。シリアに住んでいたころの先生も彼の声は美しいと、応援してくれていた。

現在、アブ・バハルは床屋で働いているが、祝い事の席で歌を頼まれることもある。彼は偉大な歌手になるという夢を、まだ捨てていない。

僕はいま幸せ、家族と友人がいないこと以外は

ザータリ難民キャンプからオランダに移住したアブドルラフマン・アルハリーリから、メッセージが届いた。

「夢を叶えるため、オランダで英語翻訳の勉強をしている。移住前は不安だったけれど、いまは幸せだ。夢や大きな目標を叶えたいなら、移住を勧める。僕はいまは幸せだ。願いは友人や家族に会うことだけ。ここでできる限りのことを成し遂げて、誇りを持ってシリアに帰国したい」

男子だって水は欲しい

ザータリ難民キャンプ内の学校では、男子生徒が授業を受ける時間帯に水不足が起きるという(午前は女子生徒、午後は男子生徒が授業を受けるシステム)。イードにはそれが不満だ。給水トラックが来るのは、午前の女子生徒の時間帯だけ。イードは、両方の時間帯に給水トラックが来ることを願っている。

長すぎる別離

45歳のウム・イブラヒムは、我々にこう語った。

「2018年は、すべてのアラブの国々に平和が訪れますように。そして、何年も前に見捨ててきてしまった我が家に帰れますように。別れはつらいものだし、その痛みを忘れることは決してない。いまでも、いつかまた、故郷シリアに住める日が来ることを願っている」

「いつか」はいつなのか

ムハンマド・ナセルの新年の願いは、シリア内戦が終結し、故郷の村にある自宅に戻って友だちや親戚と再会することだ。内戦はいまだに混沌としているが、苦しみを終わらせる平和的な解決方法がきっとあるはずだ。

年が明けるたび、私たちはもう何日、避難生活を過ごしたかを数える。いつかきっと、故郷に帰る。しかし、その「いつか」は、いつなのだろう。

砂塵が吹き荒れる難民キャンプ、ザータリ

Directed by Faredah Nserat /executive director Bent Marble and Steve Clack / Supervised by Cyril Cappai and Hada Sarhan

砂漠のど真ん中にあるザータリ難民キャンプでは、砂嵐が頻繁に吹き荒れる。風で舞い上がった砂塵は視界を遮断し、鼻や喉を傷つけて、そこら中にあるものすべてを汚してしまう。キャンプで悪化する大気汚染問題を、THE ROADの動画チームが切り取った。


The Road ×クーリエ・ジャポンの記事はこちらからもご覧いただけます。
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 cj_logo_blue_100pxクーリエジャポンで連載中のコンテンツを、編集部のご厚意により、JENのウエブサイトでもご紹介させていただいてます。

ザータリキャンプで出会った家族

2018.01.18

先日、キャンプの中でも特に生活困窮層を対象とした支援の一環で、ザータリ難民キャンプ内で暮らすある家庭を訪問しました。老夫婦と4人の姉妹が暮らしていますが、父親は精神的・身体的に障がいやストレスを抱えており、働くことができません。また、娘さん4人は成人していますが、うち1人は両足が麻痺していて自由に歩けません。

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最初はみなさん緊張しているようであまり話をしてくれませんでしたが、ひょんなことから足の悪い娘さんが編み物を趣味にしていることが分かりました。とてもシャイな若い女性で、なかなか見せてくれないのですが「是非見せてほしい!」と何度もお願いしたら、ようやく恥ずかしそうに出して見せてくれました。そうしたらそれがとてもきれいなものだったのです!

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「とってもきれい!色使いも鮮やか。ハンドメイドとは思えない!」そうやって話をしていくうちに、少しずつ雰囲気も打ち解けて、他にも、彼女が描いた絵なども見せてくれました。まわりにいた姉妹や母親も笑顔になっていました。

この家族は、経済的に満足する生活は送っていません。キャンプは障がいをもった女性にとって決して暮らしやすい場所ではありません。そんななかでも、夢中になれるものがあって、それで自分も家族も笑顔になれるのは、とても大切なことだと思います。

JENは厳しい生活を送りながらも前向きに生きようとする人びとにこれからも支援を続けていきます。


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JENでは、皆様からのご寄付を受け付けています。ご協力をよろしくお願いします。

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手作りのマットレス・クッションカバー

2017.12.21

JENはザータリ難民キャンプで女性のコミュニティ共助グループ活動を支援しています。「私の家族と、より困難な状況にあるもう一つの家族の生活をほんの少しでもよくしよう」というコンセプトで、自立や共助を促進しながら、特に困難な状況にある家族を支援することが目的です。

参加者の女性たちは、9月からマットレスカバーとクッションカバー制作に取り組みました。11月に全部で477セット(マットレスカバー1+クッションカバー2=1セット)を作り終え、制作活動に参加することが難しいより困難な状況の家族を訪問し、プレゼントしました。JENは材料購入を支援し、活動のファシリテーションをするだけで、できるだけ参加者の自主的な取り組みに任せるようにしています。

制作に参加した女性たちと、受け取った家族からの声が届きました。

まずは、制作活動に参加した女性たちから。

3人の子どものお母さんウム・ナディムは、「ボランティア活動に参加するのがはじめてでしたが、ぜひ次の活動にも参加したいです」

フダは他のNGOで仕事をしていますが、休み時間を利用して制作に参加しました。「コミュニティの役に立てる時、自分が強くてクリエイティブな女性になれたと感じます」

ウム・シャケブは、自分の家にあるミシンを使って、夜にも制作をしました。「作るのは大変だったけれど、他の家族に渡した時の喜びで、苦労は全部忘れました」と話してくれました。

続いて、受け取った家族からはこんな声が届きました。

アイシャ(61歳)は、夫を亡くし、一人で暮らしている身体の不自由な女性です。近所の女性たちがマットレスカバーを持ってきてくれた時に、とても驚き涙を流して受け取りました。

ハナン(30歳)は、夫を亡くし、5人の子どもを抱えています。「子どもが多いので収入を得るために家を離れるのは難しく、このプレゼントで30JD(約5000円)が節約でき、とても助かります」

私たちは、小さなことでも身近な誰かをサポートすることで、生きる意義を知ることができると信じて活動しています。

JEN生計向上事業チーム
イプティハル・ハラーシェ

【ボロボロになったマットレスカバー。キャンプでは、このマットレスがベッドの代わりです】
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【布を切る様子。ワイワイガヤガヤにぎやかにおしゃべりをしながら】
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【ミシン縫いの様子。参加者が互いに教え合っています】
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【制作した女性たちが、足の悪いお年寄りにカバーをプレゼントし、カバーをかけるのを手伝っています】

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