事業期間:2001年12月~
活動地:
カブール市、パルワン県、ナンガルハル県
アフガニスタン・ナンガルハル県
アフガニスタンは、2021年8月のタリバンによる全土掌握以前から、さまざまな危機に直面してきました。40年以上続く紛争、厳しい干ばつ、鉄砲水や地震などの自然災害、新型コロナウイルスの感染拡大による社会経済的な影響で貧困は深刻化しています。人口の半分以上が深刻な食料不足に直面しています。アフガニスタンはいま人道危機の真っただ中であり、人びとはとくに脆弱な立場にあります。
このBread+プロジェクトの目的は、少年少女の就学率、出席率、子どもの健康と栄養状態を改善することです。
パン製造・配布にあたっては関係者に衛生教育も行います。学校給食というインセンティブを通じて、女子の教育を促進することに重点を置いています。
●地域のパン屋と提携し、栄養価の高いパンを学校に届ける。
●パンの製造・配布が衛生的に行われるよう、関係者に衛生教育を実施する。
●これにより、就学率・出席率・子どもたちの栄養状態の改善に貢献することを目指す。
このプロジェクトは、子どもたちの栄養状況の改善、パン製造時や配布時に行う衛生教育による参加者の衛生知識の向上や健康状態の改善、地域の女性へのパン製造の職の提供、学校への出席率や就学率向上を実現しています。
ジェンはアフガニスタンで4つの軸を中心に支援活動を行っています。
①生活基盤の改善(安全な水の確保と衛生環境の改善)
②生計向上につながる支援
③女子教育の促進
④緊急時の支援(食糧支援等)
①から④に関わる支援を通じて、ジェンはアフガニスタンの人びとの生きる力、を支えます。
アフガニスタンの首都カブールが、2021年8月15日にタリバンによって制圧されたことを受けて、米国はアフガニスタン中央銀行の資産を凍結しました。その結果、アフガニスタン国内では現金が不足し、元々脆弱だった経済活動が極めて難しくなってしまいました。
ジェンでは事業地であるアフガニスタン・ナンガルハル県で最も脆弱な状況に置かれた人びとに、食糧を中心とした支援を実施しています。
最も脆弱な状況に置かれた人びとに、ニーズに合わせた以下の内容の食糧をお届けします。1世帯の約二か月分の食糧です。
食糧・物資(1世帯の約二か月分の食糧) |
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小麦、食用油、米、砂糖、緑茶、豆類、塩、その他 |
新型コロナ感染拡大予防と衛生知識の向上のためのセッションも実施します。セッションで学んだ予防策の一つである、石鹸を使った適切な手洗いを実践してもらうため、1世帯につき石鹸4個も一緒に配布します。
皆さんにとって、大切な人はいますか?その大切な人との暮らしを守りたいと強く願っているのに、それができないとしたら、どれほど辛いでしょうか?
今、アフガニスタンでは、普通に働いてきた人びとが給与を受け取れず、日々の暮らしに必要な家財道具を販売してまで食べるものを購入しなければならない事態になっています。売れるものをすべて売りつくしても尚、生活が立て直せなくて困り果てて、自分の子どもを売ろうとする人が出てきていると聞きます。大切な人たちを守るために、その大切な人たちの一部と別れるという方法しか見つからない悲しみを思う時、胸が張り裂ける思いです。何とか暮らしを取り戻せるきっかけとなる様、極端に困窮している方々への、食料支援が必要です。どうか、お力添えをお願いいたします。
(理事・事務局長 木山啓子)
ナンガルハル県ではアフガニスタンの中で最も多くの学校が閉鎖もしくは破壊されました。
65.8%の就学年齢の女子が学校に行けていないのが現状です。この理由としては、女子には教育は不要という考えや、トイレや学校設備が不足している事も挙げられます。
また、設備の欠損により外から学校内部が見えるということが、パルダ(女性が男性の視線にさらされることから守る風習や制度:ヴェールなどもその風習の1つ)という文化を持つ女子生徒たち、保護者や教師たちに不安や不快な思いを抱えさせ、不登校の原因になります。
そこで学校設備や教師の質を向上して安心、安全に学習できる環境を作ります。
現在は、仮設のテントで授業を行っています。
この場所に学校を立て、トイレと給水所も建築予定です。
6つの学校で校舎、外壁、トイレや貯水槽の整備をします。いずれも女子が通える学校で、高めの壁や清潔なトイレなど、思春期でも安心して教育を受けられる環境を作ります。
生徒だけでなく、教師や学校管理委員会(校長、教師、保護者、長老、地域のリーダー、教育省担当者、高校の場合は生徒代表も含む)を対象に衛生教育を実施します。石鹸を使った手洗いの重要性、身の回りの衛生や新型コロナ対策について知識が実践されるように伝え、子どもたちが健康な状態で学校に通えることを応援します。石鹸、タオルや生理用ナプキンを含んだ衛生キットも配布されます。
アフガニスタンの58%の教員が必要最低限の資格をもっていません。授業を計画する方法や教え方などを含めた基礎教育法だけでなく、紛争を目の当たりにした子どもたちのこころのケアをできる様、心理カウンセリングの研修も教師の皆さんに受けていただきます。こうして、心理的ストレスが生活に与える影響や症状を理解し、心理的苦痛を緩和する策も実践できるようにします。
研修には、学校管理委員会が主体となって、衛生教育と心理カウンセリングの研修を新任教師へ伝授するための計画をたてることも含まれています。これにより、今後も心のケアの方法や衛生知識などを学校から生徒へ、そして地域へ広めていける仕組みとしています。
また、イスラム教の金曜礼拝の場で女子教育の大切さについて話していただき、現地の文化や習慣を尊重しながらも家族やコミュニティの中で女子教育への理解を深めていく事が期待できます。
新型コロナ感染症はアフガニスタンでも85,892件の陽性者と3,356人の死亡が確認されています(2021年6月11日時点)。最近まで戦闘が続いていたナンガルハル県パチルワアガム地区には避難民や帰還民の多く集まっていますが、安全な水へのアクセスが確保されておらず、石鹸を使った手洗いはほとんど行われていません。そこで新型コロナ予防対策のための衛生教育と衛生キットを提供し、石鹸を使った手洗いや公衆衛生に配慮した取り組みの習慣化を目指しています。
加えて、井戸と給水所を設置して安全な水へのアクセスを確保するだけでなく、今まで発生していた井戸での混雑状況を緩和する事で新型コロナ感染症の感染拡大を低減します。
JEN職員が現地の水汲みの様子を調査したときの写真
水を汲むために列になって並ぶ人びと
自ら新型コロナへの感染を予防出来るように、過密をさけるために少人数グループに分けて衛生教育を実施します。公衆衛生が生活に及ぼす影響や下痢対策についても学習するため、その他の感染症の予防にもつながります。配布する衛生キットには石鹸やタオルが含まれていて、手洗いの習慣をつけて新型コロナ予防だけでなく衛生的な暮らしをすることで生活の質を向上させることにつながります。
1基の深井戸と18の給水所を含めた太陽光発電式の配管システムを建設して、村の人々が安全な水へアクセスできるようにします。従来は、近所の不衛生な小川の水が病気のもとになったり、遠い所にある井戸へ毎日何度も往復せねばなりませんでした。今後の井戸の維持や管理のために、地域の方々で井戸管理委員会を設置して、研修を行います。
太陽光発電による電力で水を汲み上げる、石油を使わない、環境にも優しい方法を採用したため、地球温暖化への影響を最小限に抑える事ができます。
また、井戸管理委員会を地域の方の中で設立していただく事により、今後の維持管理に必要なスキルの取得だけでなく、部品購入や修理のための費用を地域の人びとから毎月少しずつ集めています。また、行政への支援要請が必要な場合に適切な窓口に相談できるよう、行政担当者との関係構築も事業の中で行います。
ナンガルハル県チャパルハル地区で水・衛生環境の改善支援を実施しています。
2019年にアフガニスタン政府が掌握した地域であり、帰還民支援や復興のニーズが最も高い所です。とくに、水・衛生環境の改善が喫緊の課題とされており、住民の45%が衛生的な水を十分に確保することができないといわれています。住民への聞き取り調査でも、近くの小川や浅井戸の必ずしも安全ではない水を飲料水にしていること、3km以上も離れたモスクの井戸まで毎日7回も通っている子どもたちがいることが明らかになりました。
そこで、JENは、チャパルハル地区のグルシャンアバド村を対象に、水・衛生環境の改善支援を9月に開始いたしました。
車が通る大きな道を渡って、水を汲みに行く子どもたち
小川の濁った水を汲む子ども
深さ110mの太陽光発電式深井戸を建設し、そこから高低差を利用して20箇所の給水所に連結します。各給水所は、15から20世帯が利用する計画で、いずれの世帯からも500m以内でアクセスできる場所にする予定です。この深井戸の建設により、360世帯(約2500人)の住民たちが、安全な飲料水にアクセスできるようになります。また、給水施設の維持管理を目的とした井戸管理委員会を地域住民20名で組織し、支援終了後も自分たちで給水施設を維持管理するための体制を構築します。
住民たちの水・衛生に関する知識は低く、住民の72%が手洗い用の石鹸を持っていないというデータもあります。新型コロナウィルス感染症拡大にともない、正しい衛生知識がますます重要となってきている今、水・衛生事業に従事した経験のある人材を衛生プロモーターとして地域の方の中から募り、住民への衛生教育の実施と、衛生キットの配布を行います。
現地に雇用を生み出しながら、井戸建設、持続可能な管理体制の構築、衛生教育を通して、住民たちが安全な飲料水に継続的にアクセスできるよう支援していく予定です。
2005年以降、アフガニスタンパルワン県内の低学年の子どもたちを対象に、おもちゃや文房具を詰めた‘ゆめポッケ’を毎年配布しています。
約40年におよぶ紛争が続いてきたアフガニスタンでは、親が失業中で子どもに満足に文房具を買って持たせることができない家庭が数多くあります。ゆめポッケによって、紛争や対立で傷ついた子どもたちに笑顔が広がることを願っています。