南スーダン

南スーダン

JENは2007年1月から、南部スーダンで帰還民の再定住を支援する事業を開始しました。2011年7月に南スーダンは独立を果たしましたが、衛生環境の問題も含め様々な課題があり、JENは人びとが井戸やトイレの建設や、運営・管理の知識や技術を身に着けるワークショップ、そして子どもから子どもへ正しい衛生知識が広まるような衛生教育を実施しました。活動を通じて強いコミュニティができあがることで、支援の効果が持続するのです。

帰還民を取り巻く、厳しい衛生環境を

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スーダンでは、20年に亘った北部と南部の内戦が、2005年1月の和平協定により終結しました。南部では復興へ向けた支援が本格化し、国内370万人、国外35万人ともいわれる避難民の帰還プロセスが進められました。帰還民のうち、ウガンダからの90%とコンゴからの40%の帰還先は、中央エカトリア州です。ニーズ調査の結果、水・衛生施設の不足が深刻な問題だとわかりました。数少ない井戸は、動物の水飲み場として利用されることもあり、汚染が懸念されるほか、水汲みの順番をめぐる暴力事件なども起こっていました。また、トイレがなく周囲の衛生に問題を抱える学校も多く、子どもたちの下痢も多発。中央エカトリア州は、多くの帰還民の帰還先となっているほか、他州へ向かう人びとの交通の要所でした。従って、この地での水衛生環境の改善と衛生教育が急務となっていました。

学校・コミュニティでの水衛生改善

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中央エクアトリア州イェイリバー郡で支援活動を実施しました。

衛生施設があっても、人びとに衛生知識がなければ、病気を防ぐことはできません。

そこで、オトゴ地区の公立小学校12校と3つの教会に手洗い場を設置し、教員への衛生教育研修を実施し、彼らから児童へ衛生教育を行い、正しい衛生習慣の普及・定着を図りました。このことにより、児童が学校で学んだことを家庭に帰って実践することで、家族や周辺コミュニティへも正しい衛生知識が波及する効果がありました。また、安全な水へのアクセスを確保するために欠かせない井戸ですが、建設しても修理方法を知っている人がいないことで、壊れたまま放置されてしまうことがあります。

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そこで、コミュニティの人びとにより井戸が維持管理できるように、水施設管理委員会を設置しました。さらに、井戸修理工や地方行政へワークショップを行い、地域ネットワークの強化を図りました。

さらに、家庭での石鹸を使った手洗いを普及させるため、村で「ティナテ」(現地の言葉で「ありがとう」の意)という女性グループを結成し、地元で手に入るものを使った石鹸を生産しました。また、試験的に、ボランティアで構成される衛生教育指導員や衛生プロモーター、衛生クラブを設置し、村人が衛生知識を正しく理解し、衛生環境の改善を図る仕組みを構築しました。

武力衝突後、国内避難民への緊急支援

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2013年12月15日に起きた武力衝突により、戦闘を恐れて避難した人びとのために、イェイリバー郡イェイ市内のUNMISS(国際連合南スーダン派遣団)敷地内に1か月限定の避難民キャンプが設置されました。連日の猛暑の中、共同トイレが不足し、衛生環境の悪化が懸念されたため、キャンプ内の97世帯467(ピーク時には640名)の避難民を対象に2014年2月から、ポリ缶、蓋付バケツ、くわ、シャベル、一輪車など簡易トイレを設置するための物やトイレの後の手洗いに使う石鹸を1か月間配布しました。

様々な面からの支援を

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2013年12月15日に起きた武力衝突を受け、中央エクアトリア州のラニャ群ケニパヤム地区において、親戚や知り合いの家に身を寄せ非難を余儀なくされている避難民1557人(440世帯)の家族を対象に、緊急支援物資の配布を行いました。また、劣悪な生活環境の中で水因性疾患やマラリアなどの病気蔓延を防ぐため、蚊帳や衛生関連物資を配布し、配布時に簡単な衛生教育を実施しました。

衛生環境の改善

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人口56万人の中央エカトリア州には、青空学校も含め404の学校があると言われます。その中でトイレがあるのは51%、さらにJENが活動を行ったラニャ郡では15%、テレケカ郡では30%といった結果がありました。JENは調査の結果、当地の文化背景などを考慮しながらトイレの設置を行いました。JENは事業地の各学校を訪問し、水源地までの距離、水と衛生に起因する病気の発生件数、生徒数などを調査し、教育省と協議の上で、ニーズの高い学校に対して、井戸掘削を行いました。また、学校側の協力で井戸の周りにフェンスを作って動物の侵入を防いだり、設備の維持・管理方法を現地の人びととともに取り組みました。

子どもたちを元気に

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子どもたちだけでなく、先生にも衛生教育とその重要性を学んでもらうため、JENは学校を訪問して、衛生に関する知識と実践の調査を行い、現地の状況、習慣を踏まえて、衛生教育を行いました。子どもたちは、歌や人形劇、また参加型ロールプレイを使って楽しみながら学べる衛生教育セッションを行いました。

2009年からは、モロボ郡やカジョケジ郡の小学校へと事業地を広げ、2010年には南部スーダンに帰還した難民たちを学校の先生として養成するための教員養成施設の付属校となる小学校3校(生徒数1080人)をジュバ市内に建設しました。学校が完成間近となったとき、子どもたち自身が8種類の違う木の苗を選び、1校につき120本、自分たちの学校の敷地内に植えました。

コミュニティを支援する

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井戸やトイレを建設し、安全な水にアクセスできる環境を整備することで下痢などの健康被害を改善していますが、井戸管理委員会を設置し、地域住民が修理の専門的な知識や技術を身にることを目指しました。井戸管理委員会では、近隣住民から管理費を集めて運営することにより、住民は井戸を維持する責任と、修理することができるという自信を持つことができました。自主的に井戸を管理していくことで、コミュニティ全体における衛生意識の向上と効果の持続を目指しました。

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また、コミュニティは持続性の高いトイレを建設できる技術を学びました。トイレ建設ができるようになったコミュニティは、まずは学校のトイレを建設し、そして自宅や近隣住民のトイレ造りへと転換しました。

2011年には衛生知識にまつわるストーリーをラジオで放送し、教育を受ける機会のなかった大人や、読み書きができない人にも衛生メッセージが伝わるように、そして、学校から帰ってきた子どもが言えでも正しく実践できるようにしました。



南スーダンの基本情報

国名 南スーダン共和国(The Republic of South Sudan)
首都 ジュバ
人口 1,031万人(2011年)
面積 64万km2
人種・民族 ディンカ族,シルク族,ヌエル族を筆頭に数十の部族がいるとされる。
言語 英語(公用語),その他部族語多数
宗教 キリスト教,伝統宗教

出典:外務省ホームページ(2013年2月現在)