パキスタンの基本情報

国名 パキスタン・イスラム共和国( Islamic Republic of Pakistan)
首都 イスラマバード
人口 1億9,540万人(15/16年度 パキスタン経済白書)
面積 79.6万km2
人種・民族 パンジャブ人、シンド人、パシュトゥーン人、バローチ人
言語 ウルドゥー語(国語),英語(公用語)
宗教 イスラム教

出典:外務省ホームページ(2017年1月現在)

ハイバル・パフトゥンハー(KP)州クラム県における子どもたちの教育環境改善支援事業
(2021年6月~2022年11月)

背景

旧FATA[1]の就学率は[2]、40.38%です。中でも、クラム県では、73%の女子生徒が中退しています。その原因として、外壁が低いもしくはない学校で過ごすことに対する、女子生徒や保護者の不安感(「パルダ[3]」を重視する文化に起因)、また学校にトイレが無いこと等が挙げられます。
この就学率の低さは、後述の様々な要因から生じていると考え、現在子どもたちの教育環境改善支援事業を行いました。

① 学校施設の未整備
クラム県は、テロや紛争、宗派間の争いなどの影響で、最も学校や衛生施設が破壊され、再建や修復の必要性が高く、パキスタンでは最も取り残された県といわれています。
クラム県の全708の学校(女子、男子、共学校含む)の内、55%の学校に衛生施設がなく、96%の学校に教室がありません。
教室がある学校の内、30%の学校は外塀がありません。
衛生施設のある45%の学校のインフラも質が悪く、粗末な下水処理や、飲み水の欠如やその水質の低さが、水衛生の問題を発生させています。

② 不衛生な環境
学校に手洗い場や石鹸がなかったり、トイレが劣悪な状態である場合、感染性の病気は急速に広まります。クラム県内の学校では、衛生教育が行われておらず、生徒たちは、衛生に関する意識に欠け、石鹸で手を洗う習慣がほぼありません。子どもたちの6割近くが、急性の水因性の下痢に悩まされています。

③ 心の不調
学校に行ける環境があったとしても、紛争やテロによって引き起こされた精神衛生上の問題[4]のために、学校での授業を十分に理解できず、興味を持ち続けることができないまま、通学に問題を抱えている子どもたちが20%近くいます。

事業の概要

クラム県の学校8校で、学校インフラを改善する事で、衛生環境も改善し、生徒(特に女子生徒)の就学の増加を目指します。また、同学校の生徒を対象に、衛生教育、心のケア及び学校・衛生施設の使用について意識教育の研修を行う事で、改善された衛生状態や施設の持続を図ります。

1)学習環境の改善(学校・衛生施設整備)[5]
●現存施設の修復と新規建設、学校備品(生徒や教師用の椅子及び机、学習教材等を収納するための棚など)を提供します。
●両親教師委員会[6](PTC)および教師に対する施設維持管理研修も行います。

2)衛生教育、心のケア及び施設使用に関する意識教育
●学校と生徒を対象とした衛生キットの供与を行います。
●PTCおよび教師に対する衛生教育、心のケアの支援研修を行います。
●生徒への衛生教育、心のケア及び施設使用に関する意識教育を実施します。

対象となる8つの学校の裨益人口:3,187人

内訳
男子学生80人、女子学生3,022人、教師29人、PTCメンバー56人

トラックの上の配布用家畜飼料
レンガを積んで壁を作っている様子

害虫被害を受けた家畜農家に、家畜用飼料配布時の様子
外で生徒への衛生教育を実施中

害虫被害を受けた家畜農家に、家畜用飼料配布時の様子
事業開始前、テントで授業を受ける生徒の様子

持続可能な状況をつくるために

学校施設の整備・建設後はクラム県教育局に正式に引き渡しを行います。そして教育局の監督の下、ジェンが一緒に伴走してきた両親教師委員会(PTC)が学校施設の維持管理を担います。生徒への衛生教育と心のケア及び適切な施設使用の意識教育も両親教師委員会(PTC)が引継ぎ、継続的に実施していきます。

参照:
[1]旧連邦直轄部族地域(FATA)は、アフガニスタンに隣接する、部族による自治が行われていた反政府武装勢力の温床ともなっていた地域で、2018年5月末、KP州に統合後も治安情勢は不透明な状況にある。
[2]就学年齢にある公立学校の子どもの総数の内、実際に公立学校に在籍している生徒数
[3]パルダ(女性が男性の視線にさらされることから守る風習や制度:ヴェールなどもその風習の1つ)
[4]ストレス、恐怖及びトラウマ
[5]境界壁、正門、教室、トイレ、下水溝、電気工事、旗用柱、整地作業等
[6]通常教師2名、コミュニティーメンバー5名の7名で構成されている。日本で例えると地域コミュニティのリーダたちとPTA代表のような方々で構成されたチーム。

ハイバル・パフトゥンハー(KP)州の害虫被害の最も影響を受けた3県の農民に対する害虫駆除・監視・管理を中心とした生計基盤支援事業(2020年7月~2021年5月)

事前ニーズ調査時のバッタの様子
事前ニーズ調査時のバッタの様子

事前ニーズ調査時のバッタの様子
事前ニーズ調査時のバッタの様子

背景

2020年初め、パキスタンでも一部地域で深刻な害虫被害を受けました。特にKP州DI カーン県とシンド州のタールパーカー県(2020年年9月時点でバッタの大群が襲来し、大きな被害が出ている)は、駆除が急務であった。また気候風土の観点から再度の襲撃の可能性が高いと言われている。また、政府機関の駆除作戦の対象とならなかった牧草地でも、甚大な被害を被ったことが判明しました。この牧草地にある畜産農家は基本的に放牧をしており、家畜の食糧は放牧地の牧草に頼っている。そのため、牧草の不足により家畜がやせ、病気にもかかり易くなり、畜産農家の困窮度合いが増しています。

概要

KP州3県(ラッキーマーワット、タンク、D.I.カーン県)からバッタの移動の変更に伴い、DI カーン県のみを残し、シンド州タールパーカー県を加えた2県を対象とし、害虫被害の影響を受けた農民に、必要な資材の提供および害虫に対する早期警戒メカニズム1を創設し、地域による作物被害を抑制するようにします。同時に、害虫被害を受けた畜産農家への緊急支援により、失われた彼らの生計の立て直しの基盤形成を行っています。

事業内容

害虫駆除用の必要資材の配布及び合同害虫駆除の実施
●裨益者を特定の上、バッタ防除グループを形成し、対象農地の選定を行う。
●バッタ防除グループのメンバー及び政府機関職員に対する害虫駆除の研修を行い、薬剤の噴霧機材、防護用品(マスク、手袋、眼鏡、帽子)の配布の上、現場での害虫監視訓練を行う。
●バッタ防除グループおよび政府機関による平地及び丘陵地での合同害虫駆除を実施する。

害虫に対する早期警戒メカニズムの創設及び監視・制御の仕組み強化
●早期警戒メカニズム等に関する研修を行い、現場での害虫監視訓練を行う。
●事業後の持続性確保のため、当団体の県調整役による農業局のバッタ制御室での情報集積作業と作業継承を行う。
●全コンポーネントの内容を含むIEC(情報、教育、コミュニケーション)資料[1]も関係者及びLCGメンバーに供与の上、一部の活動時間内で啓発活動を実施する。

コンポーネント3:害虫被害を受けた畜産農家への緊急支援
●KP州DIカーン県の害虫被害にあった2つの町(Union Council、以下UC)およびシンド州タールパーカー県の4つのUCを対象とし、害虫被害を受け特に困窮し緊急支援を必要としている貧しい畜産農家を特定する。
●同時に、家畜局と連携して当コンポーネントを推進する家畜アシスタントを3人招聘する。家畜アシスタント3人(D.Iカーン県1人、タールパーカー県2人)は、テクニカルスタッフとして広範囲にわたり、対象4,100世帯が保有する小型家畜(20,500頭)および大型家畜(4,100頭)の予防接種を行う。合わせて、害虫被害によって体力が低下し病気にかかりやすくなった家畜に、寄生虫の駆虫処置も行う。
●畜産農家4,100世帯を対象に、1世帯につき以下の飼料を配布する。今回特に深刻な害虫被害を受けた畜産農家を対象に、家畜の健康管理啓発セッションを実施する。

早期警戒メカニズムの補足説明
FAOが主導する携帯を使用した監視のアプリに、写真や情報を送信し、FAOはこの情報を気象データ、生息地のデータ、そして衛星データと合わせて分析・評価の上、(最大6週間前までに)予測を提供し、暫定警告を発します。
http://www.fao.org/japan/portal-sites/desert-locust/desert-locust-qa/en/

トラックの上の配布用家畜飼料
トラックの上の配布用家畜飼料

害虫被害を受けた家畜農家に、家畜用飼料配布時の様子
害虫被害を受けた家畜農家に、家畜用飼料配布時の様子

※本事業は、ジャパン・プラットフォームからの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

KP州クラム県サルパク女子中学校の修学環境改善支援(2020年10月~2021年2月)

背景

JENはクラム管区において、水と衛生の環境を整える活動を行っています。それと同時に、JENがどのような活動を行うことが、この地域の再生につながるかということを地域の方々と一緒に検討し、調査しました。
クラム管区の識字率は全体で約33%と低く、女性は約13%という状況です。[1] 識字率がパキスタンの他の地区よりも低いのは、テロや紛争などにより建物が破壊され、女子生徒たちが勉強する環境がうまく整えられていないという現状があるからです。宗教的な慣習のために学校に通えない女の子たちも多数います。女性の識字率が高いこと、つまり教育を受けることと人々の生活状態の向上との関連性は、様々な研究によっても指摘されています。[2]

事業内容

グルザラ・サルパク女子中学校(パキスタンで10歳~12歳が通う)はパキスタンクラム管区地域周辺の15の村から生徒が集まっている唯一の女子中学校です。しかしこの女子中学校は、女の子が安心して通うには設備が不十分です。JENは先生方とミーティングを重ね、以下の4つの対策が女生徒たちに必要であるという結果になりました。これらには多額の費用がかかりますが、生徒の親の経済状況は悪く、政府の支援もなかなか届かず、今回の支援が重要となっています。このプロジェクトは主に設備を整え、周囲の環境を改善することで女子生徒が学び易い環境をつくるもので、識字率の向上や教育の質に良い影響を与えることを目指します。

損傷した排水管でひび割れた校庭
損傷した排水管でひび割れた校庭

外部から教師多雨の様子が見える
外部から教室内の様子が見える

実施報告

本事業では女子中学校の環境を改善(外壁2の増設・排水システムの修理)、遊具や書籍を供与することで、学生たち149人が安心・安全に学べる環境整備を行いました。この事業はクラウドファンディングを通してご寄付・応援してくださった支援者のみなさまのおかげです。ありがとうございます。

改修された外壁
改修された外壁

学校の外から学校の様子が見えなくなりました
学校の外から学校の様子が見えなくなりました

2020年10月から準備に入り、10月中に物資を集め、11月過ぎから建設が始まりました。
作業工程は、主に以下の通りです。

①最初に外壁の調査・分析、見積を準備

②業者との契約

③外壁の修復

④排水システムの修復

⑤ブランコなど遊具を設置

⑥校舎に図書館作った後に、書籍を設置

⑦学校へ管理の引き渡し

図書室に本が並べられました
図書室に本が並べられました

校庭に遊具も設置
校庭に遊具も設置

本格的な冬が来る前に壁の建設が完成できるよう安全に注意を払いながら進めました。
また、2月1日に開催された引き渡しのセレモニーには、生徒、先生や地域の長老が参加して行われました。
モニタリングの際[3]に、学校に通うのを止めてしまった友達も戻ってくるかもしれないと話す生徒や、将来スポーツ選手を夢見る他の生徒は、以前は休み時間に外に出て運動することが出来なかったけれど、毎日休み時間になるのを楽しみしていると話してくれました。

引渡時の様子
引渡時の様子

校庭に遊具も設置
長老が図書館の完成を見ている様子

参照:
[1]UNDP FATA Transition and Recovery Programme Result Report (2015-2016)
[2]World Bank Group,2018 Missed Opportunities : The High Cost of Not Educating Girls
[3] パキスタンにおいては、学校の外壁の高さは、就学率に関係する。パルダ(女性が男性の視線にさらされることから守る風習や制度:ヴェールなどもその風習の1つ)という文化を持つ女子生徒たちにとって、その壁の低さは、大きな問題となる。外から学校内部が見えるということが、女子生徒本人や思春期の娘を持つ親たちや先生に不安や不快な思いを抱えさせ、それが理由で登校できない生徒もいる。

パキスタン・ハイバル・パフトゥンハー州(KP州)上部及び中央クラム地区における帰還民に対する水衛生施設改修を中心とした生活基盤改善支援事業(2019年9月~2021年1月)

2019年9月時点で、クラム県には、安全な水が飲める十分な学校や医療施設もなく、衛生状態を保つ施設やごみ箱すらありませんでした。学童は、手洗いなど衛生教育に関する適切な知識を持たず、学校にトイレがないために学童が野外排便を行っていることを発見しました。また、学校にトイレがないことは、特に女子学生の就学率に影響が出ていました。
そこで、給水支援活動として、20の小学校と13ヵ所の診療所を対象(裨益者数: 48,786人)に、水源を保護し、飲料水の給水スキーム(供給ライン、集水・地表水タンクなど)の新設や水質検査を通して、安全な飲み水へのアクセスを確保しました。
また、衛生支援活動として、同20の小学校と13ヵ所の診療所を対象(裨益者数:48,786人)に衛生施設(トイレ設置や手洗い場など)の建設・修復を実施しました。同時に、最低限必要な衛生キット(歯ブラシ、歯磨き粉、爪切り、石鹸など:2400人子ども)を配布し、衛生啓発を通して衛生面の維持・向上を図りました。
さらに、事業で活性化された20の各両親教師委員会「Talimi Islahi Jirgah(TIJ)」と13ヵ所の診療所に対して、水衛生設備の簡単な修理道具としてOperation& Maintenance(O&M)キットを供与しました。政府の教育局、保健局、公衆衛生工学局の監督のもと、事業後も水衛生施設を維持することが可能になります。


衛生教育を学んだ後、先生と実践している様子


完成したトイレと手洗い場

※本事業は、国連人道問題調整事務所(OCHA)からの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

パキスタン・KP州クラム県上部クラム地域における食糧品と衛生用品配布を通した新型コロナの影響を受けた家族への緊急支援(2020年11月~2021年1月)

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食料品や衛生用品を受け取る事業参加者

2020年11月時点で、クラム県の貧しい人々は、新型コロナ禍で、日雇い労働を失っていました。代わりに収入源となる仕事はなく、彼らは、親戚や友人からの限られた支援以外に、政府や他の人道支援組織から大きな支援を受けていませんでした。
そこで、保健局から新型コロナの影響を受けた人々の情報を入手の上、より脆弱な368世帯を特定しました。緊急で368世帯(2,576人)対象に、食料品や新型コロナ感染防止用に衛生用品配布(石鹸、トイレや衣類用洗剤など)を配布しました。
事業参加者だけでなく、行政からの効果的なプロジェクトの実施に賞賛を得ております。配布後モニタリングでは、食糧配布が彼らの食費事情の強力な助けとなり、対象世帯の負担を軽減し、万が一新型コロナに感染した場合、家族をケアする際に向けての準備にもなったと事業参加者から希望のある回答を得ました。

パキスタン・カシミール地方ミルプール県における新型コロナ対策緊急支援事業(2020年4月~5月)

地震の影響を受けた最も脆弱なミルプール県の254世帯を対象に、食糧品と衛生用品(石鹸、トイレ掃除用漂白剤など)を提供し、新型コロナの深刻な状況から人々を守ることが出来ました。また、コロナ禍で、日々の賃金労働を失ったことに続き、ロックダウンによる食糧不足の危機に耐えられるよう、同254世帯に食糧を配給しました。
供与資材は業者が家まで運びますが、途中地域住民の人々がボランティアで、家までの案内や荷物を運ぶサポートをしてくださいました。ジェンスタッフは、その際に、新型コロナの対処方法を踏まえて、衛生啓発(石鹸で手を洗う)を実施しました。
なお、対象となった254世帯は、2019年9月に起きた地震で甚大な被害を受け、その中でも特に厳しい状況にある640世帯(2020年5月に終了したJPF地震越冬支援事業の対象世帯)中でも、さらに新型コロナ拡大に伴う都市封鎖(ロックダウン)により、わずかな収入の道さえも失った最も厳しい状況の世帯になります。

パキスタン・カシミール地方ミルプール県の地震被災者を対象とした防寒物資の提供および心理社会的サポート事業(2020年1月~2020年5月)

カシミール地方ミルプール県において、深刻な地震被害を受けた640世帯(約4,480人)を対して、緊急支援物資として、防寒テントと関連する非食品(プラスチックマットレス、プラスチックシート、衛生キット)を配布しました。これにより、厳寒の冬を越すために適した条件を整えることができました。
同時に、地震で被災しゼロからの再建に不安を抱えている人々に、こころのケアに重点をおいた心理社会的関連のサポート(カウンセリング及び心理社会教育)を実施しました。
さらに理解を深めるために心理社会的サポートに関するIEC(情報、教育、コミュニケーション)資料を提供し、重度の心理的苦痛を持つ人々が個別カウンセリングを受け、必要に応じて政府の病院へ紹介された。上述の女性委員会が深刻な心理的苦痛を抱えるケースを発見した場合、本事業で(対象となる村々で、重度の心理社会的苦痛を抱えている被災者を専門家や関係者に繋ぐ男女いずれか1人)選定された「フォーカルパーソン(FP)」1と呼ぶコミュニティサポーターに通知し、FPが、保健局に通知する体制をつくる事ができました。


女性を対象として心理社会セッションの様子


配布したテントでモニタリングの質問を受ける人びと

1フォーカル・パーソンは、当団体がその役割と選定の条件をコミュニティに伝え、長老や会議を通して推薦を受け、最終的には本人に本事業へ関与する意志を確認して選定されている。フォーカル・パーソンの氏名と役割は、コミュニティ内でオープンに周知されている。

※本事業は、ジャパン・プラットフォームからの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

ハイバル・パフトゥンハー州(KP州)中央クラム地区における水衛生施設改修を中心とした生活基盤改善支援事業(2018年8月~2019年10月)

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ハイバル・パフトゥンハー州 (KP州)クラム地区における帰還民の方々への水衛生施設改修を中心とした生活基盤改善支援事業を行いました。
給水支援として、38か村の2500世帯を対象に10ケ所の村において、それぞれ水源を保護し、飲料水の供給スキーム(供給ライン、集水・地表水タンクなど)の新規建設や水質検査を通して、安全な水を確保しました。
また事業の継続性を確保するために、形成される10の水管理委員会が、施設のメンテナンス研修を受け、ツールキットを供与の上、自身による維持管理を行うようになりました。
衛生支援として、以下を実施しながら、コミュニティレベルで、個人や家庭内の衛生習慣の維持向上を進めました。

1) 同38か村の2500世帯を対象に、最低限必要な衛生キットを配布し、衛生啓発の実施

2) 同38か村中、22か村の地域を対象に、排水溝を建設

3) 同管区の6つの小学校に対して排水溝の建設

4) 同管区の9つの小学校での衛生施設(トイレ設置や手洗い場)の建設

5) 対象の学校の子どもたち(1,469人)への、適切な水・衛生習慣についての衛生教育

※本事業は、国連人道問題調整事務所(OCHA)からの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

生計の回復と自立支援(2016年3月~2018年2月)

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(写真)クリミア・コンゴ出血熱対策のため、犠牲祭の前に3万7千5百世帯の家畜を対象に殺虫剤噴霧
(2016年9月撮影)

帰還を果たした人びとの生活は、家畜と農業を兼業する世帯がある一方で、その暮らしは長期にわたるテロと掃討作戦で混沌としていました。彼らの多くが紛争で破壊された家を完全に修復することなく、日雇い労働に従事し借金を抱えながら財産である家畜や宝石を販売したり、隣人からヨーグルトや牛乳を分けてもらいながら、経済的に不安定な苦しい生活を強いられていました。
また、パキスタンには、人と家畜、あるいは家畜のみに発症する様々な感染症が発生しており、このことが、ふつうの暮らしを送るための生計の回復や生活再建の妨げになっていました。

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(写真)栄養不足のためやせ細った牛
(2017年1月撮影)

そこでジェンでは、帰還民の中でも特にぜい弱な人びとを対象に、生計を回復するための支援として牛の配布、予防接種や駆中薬、栄養補給食の提供などを行いました。さらに、家畜の管理方法を学ぶ研修を実施し、人びとの家畜に関する意識の向上を目指しました。また、JENの活動を通して設立された「生計回復委員会」では、どうすればより良い畜産になるか、について話し合いなども行いました。2018年2月に現ハイバル・パフトゥンハー州ハイバル県(旧連邦直轄部族地域ハイバル管区)の畜産支援を終了いたしました。

※本事業は、外務省「日本NGO連携無償資金協力」からの助成金やジェンへの寄付金により実施しています。

生計の回復に向けた家畜の飼育(2015年1月~2016年2月)

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北ワジリスタン管区から、バンヌー地方へ逃れてきた国内避難民の世帯500世帯を対象に、家畜の飼料と駆虫薬・予防接種を提供し、家畜の健康維持と病気予防のための支援をおこないました。その中の155世帯には、家畜を大切に飼育できるように家畜保護用の飼育小屋をつくるための資材も配布しました。また、家畜を管理する際の心構えなど意識の向上を図るために支援に参加した人びと中から畜産指導員を募り育成し、支援対象地域の長老、畜産指導員、畜産局の職員、民間の獣医で構成される家畜管理委員会を設立しました。事業が終了した時には、対象世帯の家畜が大切に飼育されるようになり、食糧の確保と生計の回復にも寄与することが出来ました。

アフガニスタン・パキスタン地震緊急支援(2015年11月~2016年1月)

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2015年10月26日、アフガニスタンを震源とするマグニチュード7.5の大規模な地震が発生し、隣国パキスタンにも被害をもたらしました。尽大な被害を受けたハイバル・パフトゥンハー州の中で、特にシャングラ県の被害が大きく、死亡者やけが人の発生に加え、12,775棟が一部または全棟倒壊の被害にあいました。緊急調査を行った結果、4地区770世帯対象に緊急支援を行いました。シャングラ県の被災地域では、冬になると夜間の気温がマイナス7度まで下がることもあり、厳しい冬を迎える住民への支援は急務でした。そこでJENは、調理用ポット、やかん、フライパン、スプーン、皿などのキッチン用具と、キルト布、コットンマットレス、枕、子ども服、女性用ショールなどの越冬物資を配布しました。

水衛生事業(2013年4月~2014年1月末)

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国内避難民が帰還するために必要なのは、健康的に生活できる環境です。JENは連邦直轄部族地域(FATA)クラム管区にて、145の帰還民世帯に屋根修理キット(レンガ、ドア、窓など)を配布しました。帰還民たちは配布物を素早く持ち帰り、冬が始まる前に修復を開始したようです。また、水衛生環境の整備のため、タンクの設置やパイプラインの修復を行い、さらに手洗い習慣と下痢予防のためのワークショップを実施しました。この結果、特に女性と子どもの衛生習慣の改善がみられました。

今では水管理委員会が設立され、帰還民が持続的に安全な水にアクセスできる仕組みを整えてくれています。

デラ・イスマイル・カーン県における国内避難民の生計復帰支援事業 (2012年1月~2013年1月)

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配布したヤギを受ける事業参加者

デラ・イスマイル・カーン県パハルプル郡バンド・クライ地区において、山羊および飼料などの飼育道具の配布と山羊管理研修(畜産指導員の育成・指導)により、国内避難民2,727世帯(約19,089人)が自立した生計を取り戻し始めました。

畜産指導員が国内避難民以外にも雄山羊を活用して交配サービスを提供したり、山羊管理知識の共有をしており、ホストコミュニティ全体の山羊飼育環境改善に貢献していることがわかりました。

生計の回復へ向けた山羊配布(2011年7月~2011年12月)

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2011年の下半期より、ハイバル・パフトゥンハー州デラ・イスマイル・カーン県で暮らす国内避難民の生計回復へ向けた支援の一環として、山羊の配布を開始しました。実施にあたり、国内避難民のなかから畜産指導員を選定し、県家畜局とも連携して研修を行い、他の避難民世帯に対して山羊の飼育・管理に関する知識を広めていく役割を担ってもらっています。

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配布後の経過を調べた調査では、山羊のミルクを自宅で消費したり、市場で売ったりして生活に役立てており、また最初の配布した500世帯のうち約25%の世帯で、メス山羊が二回目の出産をしている事がわかりました。家族の病気の治療費など緊急の支出があり、仔山羊をすぐに売った人もいますが、ほとんどの避難民の人びとは成長して価値が上がるのを期待し、まだ仔山羊を売らずに育てているそうです。

パキスタン水害被災者支援 (2010年8月から2011年7月)

2010年8月、記録的な豪雨による水害の被害を把握し、ハイバル・パフトゥンハー(KP)州コハート県水害の被害を受けた600世帯(5,151人)が緊急に必要な生活物資NFI(テント、プラスチック・シート、ベッド、プラスチック・マット、ウォーター・クーラー、ガス・シリンダー、衛生用品セット(バケツ付き)、キッチン・セット、マットレス)を配布し、被災者の当面の生活を支えました。また、同州チャルサダ県の住居を破壊された洪水被災者2,840世帯(20,788人)が、受け取った住居資材と工具セットで住居を修復し、修復された住居に移転できました。更に、同州チャルサダ県の農業が困難となった農家2,375世帯(約16,625人)が、専門家より得た知識を元に、農地を修復し、受け取った農業キット(種子、肥料、農具)を使って、農業を再開しました。


配布完了時の様子


農地の修復作業

緊急支援物資配布(2009年6月~9月)

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JENの支援地、パキスタン北西辺境州のマルダン県ナライ地区、スワビ県パンジュビル地区には政府とイスラム武装勢力の戦闘を逃れた国内避難民、それぞれ約700世帯、500世帯が避難していました。JENは、着のみ着のままで戦闘を逃れてきた1,200世帯(約9,000人)の避難民に、避難先での生活を送るためのシェルター用のテント、キッチン用品などを提供しました。テントの配布では設営方法やメンテナンス方法を指導して被災者自身のオーナーシップを醸成するとともに、倉庫用としてもコミュニティに配布することで長期にわたって使い続けることができます。

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さらに、現地のニーズ調査では夏の暑さ対策が求められていました。避難地では蚊が発生するため、避難民が安心して睡眠をとることができるように蚊帳や折りたたみベッドを配布すると同時に、狭い地域で密集して生活する避難民の間では衛生状態の悪化が深刻となっているため、衛生キットの配布も行いました。

パキスタン南西部地震緊急支援(2008年10月~2009年4月)

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2008年10月29日にパキスタン西部のバロチスタン州でマグニチュード6.4の地震が発生しました。被害は、死者160人以上、負傷者370人以上、避難民7,000人以上と言われています。被災地は標高約2,400メートルの山岳地帯で、夜間の温度は零下になります。そのような厳しい自然環境の下、多くの住民が屋外での生活を余儀なくされていました。調理道具などの生活物資ががれきに埋まっているため、日々の食事を現地NGOの炊き出しに頼らざるを得ない、過酷な状況に置かれていました。

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JENは地震の被災者に、緊急に必要な物資を提供し当面の生活を支援すると同時に、二次的被害(厳寒や衛生環境悪化による健康被害、生活不安による精神的被害、がれき撤去の遅れに伴う再建の遅延)の防止に取り組みました。最大被災地であるジアラット県・ピシン県にて、緊急物資(越冬用テント、生活用品・道具、がれき撤去・住宅再建用の道具)の配布を行いました。

カシミール州地震緊急復興支援 (2005年10月~2008年10月)
『支援が届きにくい地域の人たちに、緊急から復興まで特に教育を中心とした支援を行う』

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JENは、震災直後から、支援の少ないバーグ県で取り残されがちな山間部の被災者を対象とした支援を行いました。特に、パキスタン地震の報道と支援が減る中で、緊急から復興まで、現地のニーズに合わせた息の長い支援を地元の人びとと協力しながら続けました。

学校再建事業 (2008年6月〜)

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冬は氷点下まで気温が下がるカラムラ地区で、屋外で学習を続けていた子どもたちが安全で快適な環境で勉強をすることができるよう、JENはバーグ県ハベリ郡カラムラ地区にて耐震の軽量鉄筋構造校舎6校建設をしました。この地区は幹線道路から離れた山の中腹に位置しているため、資材を細かく分け、少しずつ建設地まで運び、組み立てるという地道な作業が必要でした。建設に際して、学校の先生、保護者、地域住民で構成された、スクールマネージメント委員会とJENが協働して進め、委員会が校舎の管理・運営を行うこととしました。

衛生教育事業 (2008年6月〜)

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JENはバーグ県ベディ地区にある20の公立学校において、先生たちや学校管理委員会のメンバーに対し、衛生教育ワークショップを行いました。先生たち自身の手で衛生教育が継続させることを目的とし、子どもたちが正しい衛生の知識を身につけられる授業手法を検討しました。 JENのスタッフのアドバイスやサポートを受けながら、先生たちは各学校で子どもたちへグループディスカッションや寸劇などを通して、衛生教育ワークショップを実施しました。

教育支援事業 (2007年7月〜2008年7月)

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JENが支援するバーグ県ハベリ郡は、地震により216校(90%)の学校が倒壊し、151校の再建が必要でしたが、現地では住宅再建が優先されているため、学校の再建は大幅に遅れていました。ハベリ郡では、JENが建てた2校を含む9校以外には学校は再建されていませんでした。このため子どもたちはテントや仮設教室、屋外での授業を余儀なくされており、JENはチャンジャル区にて1校の学校を建設しました。

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また、現地では防災教育がほとんど普及していないため、周辺5校を含む6校の教師を対象とした防災教育も行いました。これにより、住民が基本的な防災の知識を身につけ、地震に対する恐怖心や不安感を軽減することを目指しました。

水・衛生環境改善事業 (2006年9月〜2007年12月)

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現地の多くの学校ではトイレや手洗い場がありませんでした。そこで、被災地の学校に手洗い場を設置し、子どもたちが学校で安全な水が飲めるよう支援しました。また、学校にトイレを設置することで、女子生徒もトイレの心配をせず授業を受けられるようになりました。さらに、トイレ・手洗い場を設置するだけでなく、正しい衛生の知識を身につけ、トイレや手洗い場を正しく使い病気の予防につながるよう、衛生教育も実施しました。

教育環境改善支援事業2 (2006年12月〜2007年5月)

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震災から2年目の冬を迎えますが、現地では学校の再建が大幅に遅れているため、未だに学校用テントでの学習を行っていました。しかし、テントはもともと1年しか持たないため、老朽化が進んでいました。そこで、2年目の冬の間も子どもたちが学習を継続できるよう学校用テントの補修と机・いすの配布を行い、子どもたちが安全な室内環境で学習を継続できるよう支援しました。更に、教師へ防災教育研修を行い、子ども、教師が正しい防災教育を身につけられるよう支援しました。これにより、子どもたちは地震の正しい知識を身につけ、地震への恐怖心を軽減しました。

教育環境改善支援事業1 (2006年5月〜2006年12月)

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特に被災状態が激しく支援の行き届いていない険しい山岳地域の2校(1校は女子校)で耐震構造による学校再建を行いました。この2校は復興が大幅に遅れるバーグ県で、初めて再建された学校でした。また、地震の基礎知識のない住民へ地震教育を実施し、防災意識の向上を後押ししました。更に、衛生用品キットの配布と合わせ衛生教育ワークショップを行い、避難生活を送る子ども、住民の環境改善を支援しました。(キット内容)タオル、石鹸、シャンプー、生理用品

緊急教育支援事業 (2006年1月〜5月)

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ジャパン・プラットフォーム、UNICEF、寄付者の皆様のご支援により、バーグ県ハベリ郡で倒壊した学校250教室分のテント、39個の簡易トイレを設置しました。更に授業に必要な文房具(黒板、椅子、文具セット)、寒い冬を越すのに必要な防寒着を配布し、寒い屋外で勉強をしていた子ども達がテントで授業を受けられるよう支援しました。これにより21,221名の被災児童が寒さの厳しい冬の間も屋内環境で学習を継続できるようになりました。

緊急支援物資配布 (2005年10月〜2006年2月)

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バーグでは、建物の9割は半壊または一部崩壊し、人びとは余震を恐れ屋外で過ごしていました。JENは10月から12月末の間、冬を迎える被災地での緊急生活ニーズに応え、聞き取り調査を行ったのち、ほぼすべての人が望んだ住居用テントをはじめ、毛布、キッチンセット、衛生用品セットなどの生活必需品や防寒着を配布しました。住居用テントは2,000張を配布し、生活必需品は同じセットのものを配布するのではなく、必要な人だけに必要なものを渡すよう調整したため、予定していた約3倍の5,716世帯に支援することができました。

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被災者の声にしたがって支援内容を決定したため、配布した物資は大いに活用されています。例えば、トイレで使う小さなバケツ、大家族であることに配慮しキッチンセットは6〜8人用のものを選ぶなど、特に女性に大変喜ばれ、毎日家庭で活躍しています。

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JENが配布した内の12,518点の防寒着類は株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)から、毛布5,000枚は、アフリカに毛布を届ける運動推進委員会の皆様からご支援いただきました。また、輸送にあたって、パキスタン航空、商船三井ロジスティック株式会社、日本郵船株式会社にご協力いただきました。